第37話 ステータスを知らない?

昼前に家に戻ると、適当な大きさに切った肉に下味を付けて乾燥させてから昼食を取った

ネモたちが来るまで空いた時間にレオールは素材の整理を始めた

「お姉ちゃん、これ綺麗にするのどうやるの?」

いつも私がしていた作業を覚えていたらしい

「これはお水で洗えば汚れがきれいに落ちるよ。これをレオールにあげるわ」

取り出したのは木桶のようなものだ

「僕の?」

「そう。もうレオールのだよ」

「ありがとう!」

自分の物が増えるのが嬉しいのだろう


早速水魔法で水を溜めたレオールは素材を洗い始めた

「洗い終えたら風魔法で乾かすといいよ」

「分かった」

素材類は特に洗浄しなきゃいけないわけじゃない

でも次に町に行くのがいつになるかわからないので洗浄しておくに越したことは無い

尤も、私のアイテムボックスならその心配もないんだけど、あまり余計な情報を与えたくないから一般の冒険者が取る方法を真似ることにした

といっても、普通は獲物をしとめて水辺で解体してそのまま洗浄するらしいんだけどね


「綺麗にしたレオールの素材はこっちに集めておこうね」

私が溜めているのとは別の籠を渡す

「お姉ちゃんのと一緒にしないの?」

「それはレオールのものだからね。それを売ったお金もレオールのモノよ」

「僕の…うん。ありがとう!」

破顔したレオールの耳と尻尾が現れる


「あ…」

興奮すると人化を保てないレオールは照れたような顔をする

それがまたとってもかわいい

「ふふ…おいで」

手を広げると飛びついてくる

私はその尻尾のモフモフを心行くまで堪能させてもらった

「お姉ちゃん尻尾好き?」

「大好きよ。レオールのモフモフは気持ちいいもの」

尻尾が大きく揺れた

その時アネラの声が響いた


『お客様が来たみたいよ?』

「お客様!」

レオールは慌てて人化し直して家を飛び出した

私もその後に続いて外に出る


「いらっしゃい」

「お言葉に甘えて来ちゃったわ」

「土産はこれだ」

シーラの言葉にネモは大きな魚の肉を掲げた

「すごい大きな魚肉ね?」

「レッドトラウトだ。昨日のステーキと同じ部分だな」

レッドトラウトは鱒の魔物で皮だけが赤い白身魚だ


「お肉はレオールが狩ってくれたから早速庭で始めましょうか」

「レオールが狩ったの?」

「魔法が使えるのか?」

「レオールも祝福や加護があるからね。祝福があるなら魔法が使えるでしょう?」

「俺が?魔法使えるの?」

こっちも知らなかったらしい


「ミリア、どういうことだい?」

「祝福は魔法のスキルや特性を与えてくれるのよ。レオールも知らなかったみたいだけど」

「そうなの?じゃぁ加護は?」

「加護は特性…生活に活かせる力の熟練度を少し向上してくれるわ」

「加護ってのはじゃぁ…」

「特性の熟練度が高くなってるはずね」

「それは調べられるのか?」

「調べるって言うよりステータスで確認したら?」

「ステータス?」

おや、これも知らない?

この世界の情報網はどうなってるんだろうか?

今度聞いてみようかな


「ステータスって念じてみて」

「え?」

「ぅわ!」

「な…」

言った直後驚きの声が口々に漏れて固まった

横にいたレオール迄固まったのにはびっくりだ

レオールも見たことなかったってことかしら?


「…これが私たちの力ってこと?」

「お母さん!私の特性に染色って入ってるよ!他にも色々書いてあるけど、染色だけマスターってついてる」

加護でマスターレベルってことは重ね掛けってことかしら?

「俺はスキルに氷魔法って書いてある」

「俺は漁業の特性があったのか…メイアと違って上級者と書いてあるが…」

メイアとパリスに続いてネモも言う


「特性は熟練度が無能からマスター迄5段階に分かれるの、祝福を貰った場合はマスターレベルなんだって。生まれ持った特性は初級レベル、加護が付くとそのレベルが上がるの」

「こんなこと初めて知ったわ」

「全くだ。国にいた時も聞いたこともなかった」

「それはそれでびっくりだけどね。でもそれなら祝福があっても魔法が使えなかったのもわかる気はするわね」

「使えること自体知らなかったもんな。知った今でも使い方が分かんないけど」

パリスがそう言って笑う


「じゃぁ今度教えてあげようか?氷魔法使えるなら捕った魚の鮮度が保てると思うよ」

「なに?」

ネモが食いついた

「他にはこんな使い方も」

コップに入れた果実水に小さめの氷を流し込んでいく

「冷たーい」

「冷え冷えだな」

「日差しの強い日には重宝するわよ」

「俺覚えたい!」

「お姉ちゃん、僕も使える?」

「残念だけど、レオールは氷魔法のスキルがないから無理ね」

「えー」

明らかにしょげた

「こればっかりはどうしようもないのよね」

頭をなでながら慰める

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