第35話 ハイスペック

「さぁレオール、明日の為に燻製チップを沢山用意するわよ」

森の入り口でそう声をかける

「分かった!」

森の中の香りのいい木がある場所はすでに覚えているレオールは走り出す

入り口付近にもたくさんあるので少々離れていても問題ない

2人で大量の枝を拾って帰りデッキでナイフを使って細かく削っていく

この作業が結構大変だったりするんだけど


「そう言えば魔法で何とかなるかな?」

「え?」

レオールがキョトンとした顔をする

風魔法のトルネードを使えば切り刻めそうな気はするんだよね

ただ範囲をかなり絞らないと大惨事になる

とりあえず枝を10cmくらいの長さに切りそろえて手に取った

手のひらの上空の小さな空間で竜巻が起こるイメージを持って魔法を発動させる

「わっ…!」

目をパチパチさせながらレオールが砕かれていく枝を見ていた


「いい感じね」

「お姉ちゃん凄い!僕もしたい」

「レオールも?そういえばレオールも風魔法使えるわね」

「魔法使いたい」

その言葉に今朝のアネラとの会話を思い出す


「そうね。チップ作りは夜にして魔法の練習してみる?」

「うん!」

レオールが使える属性は4つ

魔力も高いからコントロールさえできれば何とかなるはず

覚えも早いし根気もあるしね

そう思い魔法の練習を開始した

結果、簡単に使えてしまったんだけどね

神様たちが私を呆れた顔して見てた気持ちを私も味わうことになるとは思わなかった


「随分簡単に使いこなしたな」

「カンバル、相変わらず突然現れるわね」

「ははは。予告できん以上仕方ないだろ?」

「まぁそうだけど」

“今から行く”と予告されてもそれはそれでびっくりだわ


「やはり適正はあったな」

「そうね。何か簡単に追い抜かれそうな予感しかないわ」

「元々亜人はヒューマンより適性があるからな。そこにフェンリルの血が入ってるんだ。ある意味当然だ」

「神獣の血ね」

「そうだ。ま、気づいたら守る立場から守られる立場に変わってるかもな」

「それはちょっと悲しいんだけど」

「仕方なかろう?なんにしろ数年で年も追い越される。16~17歳になれば体も一気に成長するしその分攻撃力も高くなる。亜人と関わる以上その辺は諦めろ」

カンバルはケラケラ笑いながら言う


「あ、カンバルだ」

「よう。魔法は楽しいか?」

「うん!楽しい!」

「それは良かった。まずは自分を守ること、その上でミリアを守れるようになれ」

「分かった!」

「ちょっとカンバル?」

「人は1人では生きていけん。誰かに頼るのも大事だぞ」

それは分かってるけど…


「レオール、魔物を狩る時は出来るだけ首を切り落とせ」

「どうして?」

「それが一番素材を傷つけずに済む。それにそのまま血抜きさえしておけば肉も美味い」

「美味しい肉食べたいからそうする!」

うん、わからないでもないけどそこだけに注視しないでほしい


「それでいい。あとは魔力を自由にコントロールできるように頑張れ。大きな魔力をぶつけるだけなら誰でもできるが亜人の場合は魔力自体が大きいせいで過剰になりがちだからな」

「それっていい方法ある?」

「そうだな…小さい範囲で使えるようにするのが一番手っ取り早い。日常生活に組み込めるような使い方が理想か。ミリアなら色々考えられるだろう?」

「簡単に言わないでくれる?」

「問題ない。ミリアのイメージ力はパーシェですら一目置いてるくらいだ」

それは知らなかった


「レオールのポテンシャルは我らにも計り知れん。ミリアと共にいることでどこまで行くのか楽しみにしてるんだ」

「…責任重大?」

「そこまで深く考える必要は無い。これまで通り自由に過ごすだけでいいさ」

「ならいっか。生活の中で使えるように考えてみる」

それは自分にも役立ちそうだしね

「とりあえず今日はそろそろ帰って夕飯の支度をしないとね。そのあとはチップ作りよ。レオールもトルネード使えたし、MPもあるからできるかも?」

「がんばる!」

「そうね。一緒にがんばろう。カンバルはご飯食べていくの?」

「当然だろう?」

その当然とは誰が決めた事なのか

「了解」

半ば呆れ交じりで頷いた


レオールのイメージ力も中々の物で最初は草原で始めたチップ作りも30分程で家の中でできるほどになっていた

恐るべきポテンシャルだ

簡単に抜かれないように私も頑張らないと…と心に決めたのは言うまでもない

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