第34話 交渉

「お姉ちゃん!捕れた!」

レオールが満面の笑みを浮かべて駈け込んで来た

「ほら!」

レオールの指し出してきた籠の上では魚がピチピチ動いていた

「すごいじゃないレオール」

「パリスとメイアが一杯教えてくれた」

「良かったわね。ちゃんとお礼は言った?」

「あ!!」

レオールは踵を返して2人の元に走って行った

その様子に私たちは3人揃って笑いだす


「すっかり仲良くなったみたいだな」

「ミリア、もうすぐ昼時だし一緒に食べてお行きよ」

「今日はいい魚が手に入ったからな。期待してくれていいぞ」

「じゃぁお言葉に甘えようかな」

こっちの人の料理をまだ見たことがないから興味もある

一緒に準備をして色々と教えてもらった


白身の魚の厚切りステーキがメインの食事は驚くほど美味しかった

「魚も上手いけどたまには肉も食べたいや」

パリスが言う

「仕方ないだろう?町で売ってる肉は日持ちしないんだから」

「ん?どういうこと?」

「町で売ってる肉は町に住む者が優先で買えるんだ。よそ者が買えるのは夕方以降で残り物だな」

そうだったの?

そう言えばカード見せるまでよそ者は…って言ってたような気がする


「そういうことだったのね。じゃぁ今度肉と魚を交換してくれない?」

「交換?」

「そう。私時々狩りしてるから」

「狩り?ミリアが?」

これはどういう意味の驚きかしら?

「裏の森で結構狩れるのよね。レオールがかなり食べるから狩りをした方が経済的だしね。いらない素材はギルドで売れるし」

「あぁ、狼の亜人は人の数倍食べるんだったか」

「レオール亜人なの?」

「そうみたいだよ。メイアのお仲間さんだね」

シーラがそう言うとメイアが破顔した


「あとこんなのもあるよ。今日の魚のお礼にどうぞ」

言いながら取り出したのはジャーキーだ

「これは?」

「残った肉を下味付けてじっくり焼いたもの。携帯食によく使われてるジャーキーよ」

「こうしておけば日持ちもするし細かく切ればスープの出汁にも使えて便利なの」

「僕も持ってる!」

レオールがリュックからジャーキーを取り出した


「お腹がすいたときに食べれるように持たせてるの。最近これ作るのにはまって大量に有るから、よかったら使って」

「これ僕が作った」

レオールが指さしたのは鶏のジャーキーだ

「レオールも作れるの?」

「すごい!」

「父さん俺も作ってみたい」

「私も!」

「気持ちは分からんでもないが俺は作り方を知らないぞ」

ネモは苦笑しながら言う


「それなら僕と一緒に作ろ?いいでしょお姉ちゃん」

「そうね。実は魚も試してみたかったんだよね」

シーラとネモに向かってそう言ってみる

「じゃぁ私たちは魚を用意するわ。教えてもらえる?」

「もちろんよ」

「お姉ちゃん今から?」

「今からはちょっと難しいかな。明日ならどう?」

「午後からなら問題ないな」

「なら明日の午後、家に来てくれる?こっちも準備しておくから」

「レオールの家!」

「楽しみ!」

パリスとメイアは大興奮だ

約束を取り付けた私たちは海を後にした

もちろんレオールが捕った魚はお持ち帰りだ

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