第33話 ハーフもいる

「あんた、ちょっといいかい」

「ん?どうした」

答えと共に奥から男性が出て来た

「最近できた立派な家のお嬢さんだって」

「ミリアです。初めまして」

「あぁ、あの家の。俺はネモだ。さっき来た坊主もミリアのとこのか?」

「ええ。あの子はレオール」

「そうか。あんた達さえよければパリスたちと遊ばせてやってくれ。2人共他とは遊んだことがないもんでな」

ネモは少し申し訳なさそうに言う

「それはどうしてか聞いても?」

訪ねるとネモとシーラは顔を見合わせた


「…こんな場所に住んでるなんておかしな家族だと思うだろう?」

「ん~別におかしいとは思わないよ。変わってるとは思うけど…」

「はは、違いねぇ。実は俺は亜人なんだ。この国はグズリスの隣ってことで亜人に対して友好的な国ではあるんだがな…」

「町に住もうと思えば種族鑑定をされるのよ。その上で亜人の場合はここに刻印を押されるの」

シーラは手の甲を指しながら続けた


「その刻印は何かあった際に亜人の力を抑え込むための物らしいんだけどね」

「町の出入りは問題なかったよね?」

「ああ、出入りするのは問題ない。町の中に住もうとした時だけだな」

「この海岸や森、ミリアが住んでるような町の塀の外に住む分には何の許可もいらない。町の、塀の中に住めば魔物に襲われた時や食糧難の時期にも生活の保障をしてもらえるんだよ」

「その為に住民登録が義務で、登録費用もそれなりの額を払わなきゃならない。亜人の場合は登録費用が割引になる代わりに魔物が来た際に駆り出される」

「亜人の力を頼るってこと?」

「そうだな。俺だけならそれも構わん。だがメイアも俺の血を濃く引いてるんでな」

「子どもでも亜人は亜人ってことみたいなのよね。だから亜人がいる家族はこんな海辺や森の中に住む人が多いわ」

シーラは少し諦めたように言う


「俺はアザラシの亜人で海が近い方がいいし、沖の方で取れた魚はそれなりにいい値で買い取ってもらえる。その金で町で買い物もできるし特に困ることは無い」

「変に管理されるくらいならこの生活の方が気楽でいいのよね。多分森に住んでる亜人も同じ考えでしょうね」

メルテルが言ってた家族の事かな?

「そうだったのね。私この国に来たばかりだからそういうことをあまり知らなくて。良かったらこれから色々教えてくっると嬉しいんだけど」

「「…」」

何故か二人が黙り込んでしまった


「えっと…?」

「ミリアは怖くないのかい?」

「怖い?」

シーラの質問に質問で返してしまった

「この国の大半の人が友好的とはいっても亜人と深くかかわるのは怖れられる」

「あぁ、そういう意味では全然。あの子、レオールも亜人だから」

「「!?」」

「あの子は狼の亜人で私がこの国に来てから保護した孤児なのよ。半獣化した時の尻尾と耳はモフモフで気持ちいいのよね」


「…ミリアあんた変わってるって言われないか?」

「どうかしら。そもそもこっちでの知り合いは町の行きつけの店主くらいだし…」

「ふふ…何か気負ってた私らが馬鹿みたいだね」

「そうだな。ミリアのようなヒューマンに会ったことがなかったが…」

気の抜けたような二人を見て苦笑する


「そう言えばメイアが亜人ってことは年は逆転してたりするの?」

「肉体年齢と精神年齢があるのは陸に住む生物の亜人だけだ。海の生物はヒューマンとさほど変わらない。ちょっと成長が早い程度だ」

新情報が入ってきた

亜人だからとひとくくりにしてはいけないらしい


「他の子と違う点としたら…パリスに祝福があって、メイアには加護があるってことくらいかしらねぇ」

「そうなのね。亜人に関してはほとんど知らないから、レオールの事も含めて教えてくれる?あの子辛い目にあってきたからちゃんと守ってあげたいの」

「そういうことならいくらでも協力するさ」

ネモが胸を叩いてそう言った

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