第32話 海へ

「じゃぁ海に出かけましょうか?」

「うん!」

レオールは頷くとすぐさまリュックを背負った

『じゃぁ私は泉に向かうわね』

「アネラ、後で遊ぼうね」

レオールはアネラに抱き付いてからそう言って見送った


「私達も行こうか」

「行く」

手を繋いで家を出ると海に向かう

海までは歩いて5分程

それでもレオールが海辺までくるのは初めてだ


「大きい!」

手を離したレオールが水のすぐそばまで走っていく

寄せては引く波を不思議そうに見ながら歩くのを少し離れた場所で見守っていた


「お姉ちゃん誰かいる」

「誰か?」

「気配が4つ」

そう言えばレオールも気配察知持ってたっけ

私よりも察知力が高いのは亜人だからかな?

私の危機察知が反応してないってことは大丈夫だと思うんだけど

どうしようかと考えていると2人の子供が横切って行った


「あ、ひょっとして…」

「海辺に住んでる漁師一家の人?」

「ん。多分ね。丁度いいからご挨拶しに行こうか」

「うん。行く」

そう言いながらも手を握って来る辺りちょっと不安なのかな?

私たちの前方を横切って行った子供たちは海に入って籠のようなもので何かをすくう仕草をしていた


「何してるの?」

「何だろうね。私にもわからないわ」

考えてもわからないだろうということで聞いてみることにした


「こんにちは」

2人に向かって声をかける

突然声を掛けられたせいか振り向いて確認したもののすぐに2人で顔を見合わせている

「…こんにちは?」

それでも恐る恐る返してくれた

「それは何をしているのか教えてもらってもいい?」

「魚を…」

「魚を取ってる」

女の子が言いよどんだのを見て男の子が返してくれた


「魚、僕も取りたい!」

レオールが期待を込めた眼差しでこっちを見て来る

どうしたものかと悩んでいると豪快な笑い声が響いた

「こっちにおいで。道具を貸してあげるから」

女性の大きな声にレオールが私の方をじっと見る

頷いて返すと手を放して声の方に走って行った


少しすると籠のようなものを持ったレオールと女性が現れた

「すみません。突然」

「いいのいいの。パリス!メイア!この子に魚の取り方教えておあげ」

「「はーい」」

「こっち来いよ」

「おいでー」

2人に手招きされたレオールは恐る恐る海の中に足を踏み入れた

「冷たい…」

「大丈夫。すぐ慣れるよ」

「俺はパリス。妹はメイアだ。お前は?」

「レオール」

「レオール、この籠を水の中に入れて砂ごとすくうんだ」

パリスはそう言いながら実際にやって見せてくれる

「砂は細かいから籠から流れて行って魚がいる時は籠の中に魚が残るんだよ」

2人に教えてもらいながらレオールは水浸しになりながら籠を何度も水の中に入れる

出すたびに悲しそうな顔をして、また繰り返す


「随分根気のある子だね」

「そうですか?」

「大抵の子供は10回くらいで嫌になって辞めるんだよ」

そう言いながら笑う

「あぁ、私はシーラ。この洞窟に住んで漁をして生活してるの」

「私はミリア。1月ちょっと前にそこの草原に住み始めたの」

「あぁ、あの立派な家かい?確かペガサスもいる」

「そう。そこです。あのペガサスは従魔なの」

「神獣が従魔?それはまた珍しいね?」

「ありがたいことに契約してくれたの」

従魔になるのは相手次第

こっちから望んでなってくれるとは限らないことは周知の事実だ

「ならあんたの人柄はよっぽどいいんだろうね。日差しも強くなってきたから中で休んでいきなよ。旦那も紹介するわ」

シーラはそう言って洞窟の中に案内してくれた

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