第31話 お手伝い

あぁモフモフだ

覚せい途中の意識の中で腕の中のモフモフに癒される

「お姉ちゃんおはよ」

その声に一気に意識が浮上した

「おはようレオール」

抱き付いてくるレオールをしっかり抱きしめる


昨日の晩、人の姿に戻っていたレオールは寝る時になって半獣の姿になっていいか聞いてきた

詳しく聞いたら人化してるよりも半獣の方が楽だけど、半獣の姿になると嫌われると思って我慢していたらしい

亜人の存在は知れ渡っていてもグズリス以外の国で好意的に受け入れられることは少ないという

そう言えば国によっては討伐対象になることもあるって何かで読んだかも

町の図書館で読んだ中にそんな記述があったことを思い出し、とりあえず家の中では好きな姿でいればいいということにした

この国の人がどんな反応をするかわからないから一応制限付き


「ゆっくり眠れた?」

「ん」

いつも早起きだったのは無理してたからなのかもしれないなとちょっと悲しくなった

耳と尻尾があるだけでそれ以外は人とかわらないんだけどね


「朝ごはん作るからアネラのお世話お願いね」

「はーい」

レオールは起き上がるとそのまま飛び出して行った

少しするとアネラとはしゃぐ声が聞こえて来て思わず笑ってしまった


朝ごはんの準備をしてデッキに運ぶ

「アネラおはよう」

『おはよーミリア。とってもいいお天気だよ?』

「そうね。海に行くには丁度いいかも」

『私は潮風が好きじゃないから泉に行っててもいいかな?』

「もちろんよ。楽しんで来て」

アネラは時々仲間に会いに泉に行っている

大抵私が町に行くときでお留守番するなら丁度いいからって感じかな

ホームシックとかそんなんじゃないけど普段から念話で話をしてるせいか、会って話したくなるらしい

あと泉の水を飲みたいっていうのも大きな理由かな


ちょっと前にデッキはアネラも入れるようにしてから天気のいい日の食事はデッキで取るようになった

レオールがアネラと一緒に食べたいって言いだしたからなんだけどね

「アネラ果物持って行くなら好きなだけ持って行ってね」

『嬉しい。ありがと』

アネラの前足には自動サイズ調節機能付きのブレスレットを付けてある

ただのアクセサリーじゃなく空間拡張型のマジックアイテムだ

レオールにはリュック型を渡していて出かける時は自分で背負っていく

『みんなここの果物大好きなの』

「そう?嬉しいなぁ」

泉にも植える話をしたことはあるけど、日当りや湿気の関係であまりおいしく育たないらしい

メルテルがかなり前に何度か試して、結局諦めたと残念そうに言っていた


「ごちそうさま。片付けて来る!」

レオールは食べ終えると私の食器もまとめて持って行った

『後片付けもすっかりレオールの役目になったね』

「そうね。できる事が増えるのが嬉しいみたい」

アネラの世話をするようになった日、もっとお手伝いしたいというレオールに食器洗いを教えた

『次は何を教えるの?』

「考え中。お手伝いより魔法を教えてあげるのもいいかと思って」

『使った事無いんだっけ?』

「使えること自体知らなかったみたいだからね」

逃げる生活なら教えてもらう余裕すらなかったのかもしれない


「魔力量も多いし適正もあるみたいだから使えた方がいいでしょう?」

『そりゃぁ使えるに越したことは無いと思うよ。この先常にミリアと一緒に行動するってわけにもいかないだろうし、フェンリルの血を引いてるならまた狙われるかもしれないし…』

「自衛も出来た方がいいしね」

『その方がミリアも安心できるよね』

「そだね。まぁ何もないのが一番いいんだけど」

本当に、これから先レオールが悲しむことがなければいい


「お姉ちゃん終わった」

「ありがとうレオール」

飛びついてきたレオールを抱きしめた

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