第30話 亜人とヒューマン

「モフモフはともかく、ここに人が集まる可能性はありそうね」

「え?」

「ミリアは知らず知らずに高い人柄の人間を引き付けるからな」

「ん?」

「とりあえず、西の森に棲んでる2つの家族はいい関係を結んでおくといいわ。私の祝福持ってる子がいるのよ。どちらも長子だけどね。下の子たちはソニーかバッカスの加護があるわ」

メルテルがニコニコ笑いながら言う

これはアドバイスと言うより命令に近い気がする


「そ、そう…」

そんな身近に祝福や加護持ちがいるのね

ソニーの加護ってことは木工や細工あたりかな?森の中で大工は必要なさそうだし…

それに祝福を得てるってことは下位神の加護が1段階上がってるってことでもあるんだよね?

そういう同時に○○って辺りにちょっとお得感を感じるのは貧乏性のサガだろうか…


「海沿いに住んでる漁師一家もお勧めだぞ。そこの息子は俺の祝福がある。娘の方はフローナの染色の加護があるはずだ」

続いたのはドイセンだ

海沿いに住んでる人いたっけ?

家らしきものは無かった気がするけど…

「家というよりあいつらは洞窟を家にしてるからな」

「なるほど。だから気付かなかったのかな?」


「お姉ちゃん、海行きたい!」

レオールの目がキラキラ輝いて期待に満ちていた

「じゃぁ明日行ってみようか?」

「うん!」

尻尾の揺れが大きくなった

海を楽しみながらその一家を探してみるのもいいかもしれない

この世界での生活を楽しむならやっぱりこの世界の人と仲良くなりたい


「レオールには私の祝福も付けてあげるわね」

「え?キュリー?」

そんな簡単に与える物なの?

「祝福や加護は私たちが気になった子にそれなりにあげてるわよ。それにレオールは雷の適性が高そうだもの」

雷は火と風の魔法を使えて初めて取得できるはず

取得できても雷は魔法自体の適性が一定以上ないと使えないらしい

レオールには高い魔法の適正があったということね

「適性のない子に祝福を与えても魔法を使いこなせないことの方が多いの。」

「そう言う意味では魔力の少ない子には私たちの祝福は不向きね」

まぁそうか。メリットは下位特性の熟練度が1段階上がるだけだものね

だけって言ってもそれ自体が本来は凄いことなんだろうけど

「キラキラ?」

その声にレオールを見ると光に包まれていた

祝福や加護を受けた時の現象だ

祝福の場合は虹色の、加護をえた時は白色の光に包まれる


「ミリア、レオールのステータスを見てみるといい。お前の事だしまだ見てないんだろ?」

「え?うん。あんまり人には使わない方がいいのかなって思って。契約の時は見るようにしてるけど」

「その心がけはいいことだけどね。レオールの場合は知っておいた方がいいかもしれないわ」

「…わかった。じゃぁレオール、あなたを鑑定するわね?」

「いいよ」

レオールが頷いたのを確認してから確認した


+-+-+-+-+-

レオール

性別:男  年齢:15(6)  種族:亜人・狼族(フェンリル) 人柄:A

HP:10000/10000  MP:3000/3000

《スキル》

風魔法、火魔法、雷魔法、水魔法

《特性》

木工/初心者、細工/初心者、農業/初心者、漁業/初心者、畜産/初心者

鍛冶/初心者、調理/中級者、味覚/中級者、読書/初心者、計算/中級者、

読み書き/中級者

《サブスキル》

肉体強化、物理攻撃耐性、精神耐性、気配察知、跳躍

《ユニークスキル》

NONE

《称号》

フェンリルの血を継ぐ者、準神獣、カンバルの祝福、キュリーの祝福

+-+-+-+-+-


…はい?

「驚いたか?」

「…驚いたどころじゃないよ?レオールの年!私5歳くらいの子供と思ってたのに15歳って…それにカッコ内の数字は何?」

「ふふ…ヒューマンの6歳児程度ではあるのよ。亜人とヒューマンでは年の取り方が違うからね」

年の取り方?

「亜人は生後半年迄は1月に1歳年を取るの。その後10年までは半年に1歳、10年以降は1年に1歳」

そう言えば犬や猫もそんな感じだった?


「亜人の年齢は肉体がベースだからな。精神年齢は5年くらいはヒューマンよりちょっと上程度だ。5年以降は半年で2歳分ほど成長して10年程で年齢と精神年齢が同等になる。ステータスのカッコ内の数字は精神年齢だな」

つまり…?

「ミリアが22歳になった頃には逆転されて、レオールが25歳、ミリアが23歳になった後は同じように年を取っていくってことよ」

ジュノーが紙を1枚渡してくれる

それは亜人の肉体年齢と精神年齢、ヒューマンの年齢、さらに私の年齢を並べて表示した、年齢換算表のようなものだった

まさか今これを作った?

「ご親切にどうも」


「ミリアがレオールと接する時は精神年齢を参考にしてね」

「じゃぁ今は6歳くらいと思ってればいいってこと?」

「そういう事」

これは正直助かる

知らないままだったら接し方を間違えるところだったわ

「まぁ人化した時の見た目は精神年齢に近いからそこまで心配することは無いと思うわよ」

「成長ペースが早いだけだしな。レオールは過酷な生活を送ってたせいか通常より精神年齢は高そうだがな」

精神年齢が1年で4歳分成長するのは“だけ”ではないと思う


「で、他には気になるところはないのか?」

「なくはないよ?HPとMPの上限とか称号とか…」

HPは私の倍、MPは私より少ないとは言え勇者の3倍

「レオールは神獣の一種なわけ?」

「純粋な神獣ではないな。血を継いでるから神獣の末席にいると言った方がいいか。成長と共にHPもMPも上限は変わるだろうな」

「…そう」


「お姉ちゃんと一緒にいれない?」

不安そうに見上げるレオールを抱きしめる

「そんなわけないでしょ。嫌って言っても放さない」

ぎゅーっと抱きしめると嬉しそうに笑う

今は可愛い弟だけどそのうち私の方が下になるのね…

物凄く変な感じ

でも今はこの可愛さを堪能しよう

「大好きよレオール」

「僕もお姉ちゃん大好き。アネラも」

『嬉しいわ。私も2人が大好きよ』

アネラもすり寄って来る

「本当に仲がいいわね」

時々からかわれながらも私たちは皆で楽しい一日を過ごした

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