第28話 レオールの身に起こったこと
外からはしゃぐ声が聞こえてくる
この声はアネラとレオール?
そう思いながら意識が浮上する
まだ時間は朝の6時
レオールはかなりの早起きだ
簡単に身支度をしてデッキに出るとアネラとレオールが駆け寄ってきた
「おはよう」
「お姉ちゃんおはよ」
『おはようミリア』
「レオールは今日も早起きね?」
『いつも私の相手をしてくれるの。嬉しいわ』
アネラはそう言いながらレオールにすり寄った
レオールがここに来て既に1週間経っている
毎朝していたアネラのブラッシングを自分がやりたいと言い出したのは3日前
アネラも嫌がらなかったから任せる様になった途端じゃれ合う様になった
家から目の届く範囲でだけど草原で走り回るのは当たり前の光景になってる
「アネラ、あそこの実取って」
『いいわよ~』
レオールの指さしたのは木のかなり上の方になる実だ
アネラは飛びあがりその実を取って来る
ペガサスのスキルをこんなことに使うなんて贅沢ね
楽しそうだからいいけど
「本当に微笑ましいわね」
突然背後から声がして、驚いたレオールがしがみついて来る
「キュリー驚かさないで?レオールが怖がってる」
「ごめんなさいね。あなたがレオールね?私はキュリー、風を司る神よ」
「…神…さま?」
レオールは私を見上げて尋ねて来る
「驚いたよね?私は沢山の神様の愛し子なの。だからこうして色んな神様が突然現れることもあるのよね」
そう言った先に他の6人の神が姿を現した
「ひっ…」
「大丈夫よ。皆レオールを傷つけたりしないから」
「ほんと?」
「本当。ほら、皆にご挨拶してごらん?」
「ん。えと、レオールです」
そう言って頭をペコリと下げる
「まぁ!なんて可愛いんでしょう」
メルテルはメロメロだ
「ん?カンバルの祝福があるのか?」
「ああ、3年前に授けたやつだな。坊主が狙われて坊主の父親が死んだ時だ」
「え?」
「ここの南西にグズリスって国がある」
「確か亜人の国?」
「そうだ。坊主はそこの狼族の集落にいた。でも3年前熊族が裏切ったんだよ。フェンリルの血を引く坊主を連れてくれば国に住ませてやるって餌を撒かれてな」
カンバルは淡々と続ける
「狼族は絆が強い。集落の総意で必死で守ろうとしたが、坊主の父親は仲間を犠牲にするのを嫌って嫁と坊主を連れて集落を出た。フェンリルの血を引く狼族はもうその坊主だけだ。流石にくたばってもらったら困るってのもあって祝福を与えた」
「なるほど。祝福があればその子が心から助けを求めれば助けることも出来るからな」
そんな仕組みになってるのか
「え?でもレオールは死にかけてたんだけど…助けは求めなかったの?」
「…」
レオールは私の足にしがみついたままうつむいた
「坊主が求めたのは母親の命を助けることだけで自分の事は何も求めなかった」
「でもカンバルは気づいてたんだよね?」
「気づいていても何も出来ないのよ」
「え?」
「私たちがこちらから自由に関われるのは愛し子だけなの」
「つまり…助けたくてもレオールが助けを求めない限り助けられない?」
「そういうことだ。だからミリアには感謝してる」
「カンバル…」
「坊主」
「?」
「お前の両親を助けてやれなくてすまんな。でも分かってくれ。俺らが誰もかれにも手を出せば、この世界は俺らの遊戯板になり果てる。そうしないための制約ゆえだ」
その言葉にレオールは真っすぐカンバルを見た
「ミリアの側なら安全だ。これからいっぱい甘えて幸せにしてもらえ」
レオールは無言のまま頷いた
「あれ?直接関わることは出来ないのに今はレオールにも見えるんだよね?」
「それはミリアといるからよ。ミリアの認めた相手にはこうして姿を見せることも話すことも出来るの」
「ミリアがいない場所では無理だけどな」
「特例があるとしたらミリアに同行して町に行った時みたいに、パーシェの力で1日だけ人化して存在するくらいかな」
「ただしそっちは1回使ったら50年は使えない」
便利なのか不便なのかよくわからない力ね
「神の力なんてそんなものよ。どれだけ救いたいと思っても滅んでいく世界もあるしね」
あぁ、だから一歩下がって見るしかないのか
自分事として考えていたらあまりにも辛すぎる
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