第26話 弟?

「アネラ、お散歩中断になっちゃってごめんね」

『大丈夫。お散歩はいつでも行けるもの。私は庭でくつろいでるからレオールについててあげて?』

「わかった。大好きよアネラ」

一旦アネラを抱きしめてから家の中に入った

「さて、部屋を用意するのは早いかなぁ?」

5歳くらいってどうなんだろ?

早い子は自分の部屋があった気はするけどレオールは傷心だし…

目が覚めた時に知らないところで一人って言うのはやっぱ嫌だよね

ってことでとりあえずソファーに寝かせることにした


その側で私はアネラの集めてくれた薬草を改めて確認することにした

「それにしても結構な量と種類よね」

鑑定しながら仕分けることすでに1時間

テーブルの上にずらりと並ぶ薬草はある意味圧巻だ

アイテムボックスに入れれば勝手に仕分けしてくれるんだけど、それだと特徴が覚えられないからパッと見分けられるもの以外はこうやってアナログ仕分け

意外と楽しいんだよね


「…て…」

「ん?」

零される声にレオールを見る

「母さ……だ………っ…やめろー!!」

がばっと起き上がったレオールはハッとしたように辺りを見回した

「ぁ…」

「おいで」

途惑うレオールの手を引き寄せ抱きしめる

「怖い夢を見た?」

腕の中で頷くレオールの背中をゆっくり撫でる

「大丈夫。ここにレオールを苦しめる人はいないわ」

「お姉ちゃ…」

おぅ…今、お姉ちゃんって呼ばれた?

私にこんなかわいい弟が出来たってこと?

最高じゃない

我ながら単純だとは思うけど元の世界でも家族を亡くしていた私としては嬉しい


「そろそろご飯のしたくをしないとね?レオールの好きなものは何?」

「…鶏?」

「よし、じゃぁ鶏肉使って夕食を作ろうか」

レオールを抱き上げてキッチンに移動する

「レオールはここね」

カウンター部分にある椅子に座らせる

「これは果実水よ」

「あり…がと」

レオールは恥ずかしそうにそう言って飲み始めた

沢山泣いたから喉も渇いてたんだろうね

「鶏で子供の好物と言えばやっぱり唐揚げかな?」

アイテムボックスからフォレストバードの肉を取り出して一口大に切っていく

下味に付け込んでいる間にサラダとスープの準備

「お肉だけじゃないの?」

不思議そうに見るレオール


「レオールはいつもどんな風に食べてたの?」

「えとね、父さんが肉を解体して、母さんが串に刺したのを焼いてた」

豪快な串焼きっぽい?

「お野菜やスープは?」

「?」

首を傾げたレオールを見る限りそう言う習慣が無かったのかもしれない

「初めて食べる物かもしれないね」

食べれるかはともかく私は欲しいので作るのはやめない

残ってもインベントリに入れておけばいつでも食べられるからね

レオールがキラキラした目で見守る中食事の支度が整った


「よし、レオールこれを向こうのテーブルに運んでくれる?」

「うん!」

唐揚げを盛りつけたお皿を渡すとゆっくり歩いていく

私もサラダとスープ、パンを運んで準備は完了だ

「じゃぁ食べようか。いただきます」

「?」

不思議そうに見ていたレオールはすぐに唐揚げを口に運んだ

一口かじった後は怒涛の勢いでお腹の中に納めていく

「お姉ちゃんおいしい」

「そ?よかった。いっぱい食べて」

そう言いながら私はスープを飲む

それを見てレオールは真似る様にスプーンにすくって飲みだした

「これなぁに?」

「これはスープだよ。味や中に入れる物は決まってないから色んなスープが作れるわよ」

「スープ、スープ…」

覚えようと何度も繰り返しながら平らげると次はサラダに目をやった


「それはサラダ。今日のサラダはマカロニサラダ」

「マカロニサラダ」

「そう。マカロニサラダ。これがマカロニでこの緑色のはキュウリ」

「このお肉は?」

「これは豚を塩漬けした物よ」

「豚、オーク?」

「オークでもできるかもしれないね。今度試してみようか」

「うん」

頷き笑みを浮かべるレオールのこれまでの世界はかなり狭かったのかもしれない

こんなに小さいのに追われる生活だもんね…

今日アネラと散歩に出かけなかったらと思うとぞっとする

助けられてよかった

心からそう思う

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