第24話 アネラの力

『ミリア早く』

アネラがデッキの前で訴えて来る

「ちょっと待って」

私はバタバタしながら準備する

今日はアネラと草原の南側を散歩する約束をしていた

お昼御飯用のお弁当とアネラ用の果物を忘れずに詰めて外に出る

この世界に来て1か月経った今、神々の訪問も落ち着いてるから今日の同行者はアネラだけだ


「お待たせアネラ」

その首元に抱き付きまずはモフモフを堪能する

うん、相変わらずのモフモフクオリティ

アネラは自分だけでも走り回れるけど何故か一緒に行きたがるんだよね

並んで歩きながら草原に生えている薬草に目を配る


『コンコン草だ』

アネラが見つけたのはひし形の小さな葉っぱをたくさんつけた薬草

コンコン草は咳を止めるのに効く薬の材料だ

「流石アネラ。良く見つけたね?」

『取れ頃の薬草は訴えかけてくるの』

なんですと?

『ここにいるよーって光ってくれるんだよ?』

何かとんでもない情報が飛んで来た

流石神獣と言うべきだろうか?

ちなみにこういった理解の追い付かない情報を得た時は『異世界仕様だから』と片付けることにしている

でないともう何が何だか分からなくなっちゃうからね


「ねぇアネラ」

『なに?』

「今光ってるのはどれくらい?」

『いっぱい』

「…そぅ」

まぁこの辺で人を見かけることは無いから摘み時は勝手に過ぎていくわよね…

「じゃぁその中でお茶として飲めたり料理に仕えるのはある?」

『少しだけあるよ。摘む?』

「できれば」

『任せて』

「え?」

今任せてって言った?


そんな疑問を持った私の目の前でソヨソヨと風が吹いた

そしていろんな場所から草、もとい薬草が私の方に飛んでくる

何これ、手品みたい

『それで全部だよ』

私の目の前で浮いた状態で止まっている薬草

ざっと鑑定したら用途はお茶や料理の文字がもれなく表示されていた

私がアイテムボックスから籠を取り出すと浮いていた薬草はその中に入ってしまった


「アネラすごい!」

『ほんとう?』

「こんなことまでできると思わなかったよ?」

『もっと色々出来るけど…それは機会があったらね?』

もっと…

一体この子はどれだけのポテンシャルを秘めているんだろうか?

それとも神獣は元々そういうものなのだろうか?

混乱しそうになったので取りあえず異世界仕様だからと片付ける

「楽しみにしてるね」

多分それだけで十分だ

そんな感じで薬草を採取しつつ散歩を続けた


『湖!』

アネラがそれを見つけるなり走り出す

「え?ちょっと待って」

慌てて追いかけるけどペガサスに追いつけるはずもなくその距離は一瞬で離れて行った

「湖は見えてるから大丈夫かな」

それだけが救いだ

それにしても綺麗な景色だなと思う

草原の奥に広がる湖は遠目にも水の色が水色に見える

小さい子どもがお絵描きして水を青や水色で塗りつぶすのは間違いじゃないんだと証明するかのような色


『ミリア遅いよ』

「私が遅いんじゃなくてアネラが早いの。ペガサスとヒューマンで同じスピード出せたらそれこそおかしいでしょ」

『そう言えばそうね』

忘れてたわとでもいう軽い感じでアネラは納得した

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