第23話 計画(side:ナオト)

「こちらがナオト様のお部屋でございます」

「すごい部屋だな…」

通された部屋を見て俺はあっけにとられた


「…魔獣とやらの被害はかなり出てるということか?」

「「!」」

俺の言葉にフォードとクリスは息を飲む

「どこの誰かもわからない物をこんな部屋でもてなす理由などそれくらいしかないだろう?」

「…失礼ですがナオト様は…」

フォードが何者なのかと問おうとした


「あの3人よりこういう状況に適応しやすいだけだ。そこであんたらに頼みがある」

「何でございましょう?」

「俺はあの3人とは行動しない」

「理由をお伺いしても?」

「広間での発言を聞いた限り関わりたくない」

フォードとクリスは顔を見合わせる

「あんたらに説明があったかは分からんが今回の召喚対象は7人だった。でも成功したのは俺達4人のみ。2人は元の世界で生きてはいるらしいが1人は亡くなった」

「そんな…」

クリスが明らかに動揺した

自分たちの国が召喚したことでの犠牲者と聞いて平気でいれる方がおかしいのだ

そう言う意味ではこの2人はまだまともだといえる


「あの3人はその話を聞いて笑った。俺はそんな得体のしれない奴と行動を共にする気はない」

「そのような事情であれば私の方から報告させていただきます」

「頼む。あと…本が欲しいんだが」

「本、でございますか?」

「この国のこと、世界のこと、魔獣のこと、薬草に関する記載があると助かる。出来ればこの世界の地図も」

「承知いたしました。すぐにご用意いたします」

フォードはそう言って出て行った


「何かお飲みになりますか?」

「ああ、頼む」

俺は頷いてソファーに身を預けた

クリスが紅茶を出し、戻ってきたフォードから本を受け取ると一人にして欲しいと頼む

これで部屋の中には自分だけになった


俺は再びステータスを表示した

「“世界を渡る者”ねぇ…」

3人とは確実に違うステータス

HPとMPの上限が1,000ではなく1,500、スキルは4属性だけでなく回復魔法がある

読書・計算・解体の3つの特性に、跳躍のサブスキルと鑑定のユニークスキル

極めつけが『世界を渡る者』の称号

世界を渡る者の称号は2度以上異世界召喚された者に付与される称号だ

その事は以前耳にしたことがある


「世界や管理者によってギフトが違うことは聞いていたが…」

3人が持っていなかった物は前回の召喚時に送られたギフトだ

「今回は帰れそうにないな…それならせめてこの国は出たい」

そのためにどうすればいいかと考える

「広間にいたのはおそらく貴族、3人に見返りと言われた瞬間嫌悪を露わにした所を見れば碌な奴らじゃない」

前の世界と大違いだと思いながらため息を吐く


「とにかく3人と明確な住み分けが必要だな」

呟きながら広げたのはこの世界の地図だ

その中からフルジリアを探す

「ここか」

そこにポケットに入っていた財布から取り出した1円玉を置く

この世界は菱形状に広がっていて大小沢山の国が連なっているらしい

どこの国にも属してない場所は森か山、鉱山のようだ

フルジリアは南端に近い場所にあり、南側は海に面し東西は小さい、沢山の国々に接している

「問題は北側か」

真北に鉱山があり北西は闇の森、北東は森林地帯で小さな国がいくつか点在し、その向こう側でたくさんの国が連なっていた


そこまで確認して開いたのは魔物や魔獣に関する本だ

「特性から考えれば闇の森が一番ヤバそうだな。手前の岩山のせいで闇の森から来た魔獣は真っ先にフルジリアを襲うはず。北東は小さくても国が点在してるからあいつらでも大丈夫だろうし…」

俺は夜中まで手元の地図と本を元に自らの進むべき道を考えた

そして翌日3人とは別に用意された指導者の教えを受けて計画をさらに詰めていく

「理解してくれる者と出会えればいいんだがな…」

そのつぶやきは誰に聞かれることもなく消えていった

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