第21話 勇者の本性(side:フルジリア)

「あ、ねぇ、運転手がいるってことはバスが対象だったってことだよね?あとの3人は?」

「後の3人…?」

「そう。バスにはあと3人乗ってたの」

「そう言えばそうよね。大学生2人と…」

「結城!何を言っても何をやってもひょうひょうとしてる憎たらしい女!」

「…どういうことだ?」

ジャッキーが側にいた神官に確認する


神官は慌てて祈りをささげる

そして…

「確かにあと3人いたようです。しかし失敗したと…」

「失敗?」

「それうけるんだけど」

その言葉にざわついた


「続きを」

「はい!男性2人はそのまま元の世界で命はとりとめたようです。しかしもう1人の女性は…」

「死んだの?」

「マジで?結城死んだんだ?」

「いい気味じゃない?」

3人の女性の笑いながら吐き出される言葉に広間が静まり返った


「で、勇者召喚された私たちはこれからどうなるの?」

「そ、その事だが…まずは名前を聞かせてもらってもいいだろうか?」

「自己紹介ってこと?別にいいけど…私はアキナ ワダ17歳、ワダが家名でアキナが名前よ」

「サキ オクタニ、同じく17歳」

「エミ リュウドウ17歳」

「…ナオト ツムラ 25歳だ」

「アキナ殿、サキ殿、エミ殿にナオト殿か。そなたらの称号は勇者で間違いないだろうか?」

ジャッキーの言葉に4人は頷いた


「では最初に申した通り、我が国を救っていただきたい」

「…ねぇ、それで私達に何のメリットがあるの?」

サキが尋ねる

「メリット…?」

「当然でしょ?まさかタダで国を助けて貰えるなんて思ってないわよね?」

「勇者が見返りを求めるなど聞いたことが無いぞ?ふざけてるのか?」

「信じられん」

「こんな強欲な勇者を信用してもいいのか?問題が起きない内に処分した方が…」

「この召喚は失敗じゃないのか?」

周りの者からそんな言葉が飛びかう


「…ねぇ、勇者って見返りなしなわけ?」

アキナが戸惑い気味に2人に尋ねる

「この感じはそうなんじゃ…」

「下手に求めたらこっちの身が危ないかも」

「エミが言うならそうよね…」

エミは極道の組長の娘だ

普通の人よりも危険に関する感は鋭い

「いくら力が強くても国を敵に回すのはまずいよね」

サキの言葉に2人は頷いた


「そんなに騒がないでよ。私達が望むのは衣食住の確保よ。何も知らない世界に連れてこられたんだからそれくらい当然の権利でしょう?」

その言葉に明らかに安堵の空気が流れた

「それは心配しなくていい。この王宮に部屋を用意させよう。そなた達には従者とメイドを1人ずつ付けることも約束しよう。必要なものはそれに伝えれば用意させる」

「ならいいわ。魔獣?の討伐は引き受ける。運転手さんもそれでいいよね?」

「…ああ」

ナオトは頷いた


「感謝する。明日以降スキルの使い方やこの世界の知識を教える指導者を手配しよう。問題なく使える様になったら討伐に向かってもらいたい」

「分かった」

「今日はゆっくり過ごしてくれ」

ジャッキーはそう言って広間を出て行った

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