第19話 アネラの家

『ミリアお帰り』

アネラが駆け寄ってくる

「ただいまアネラ」

私も遠慮なくアネラを抱きしめる

「そのモフモフが気に入ったみたいね?」

メルテルがクスクスと笑いながら言う

モフってるのに気づかれていたらしい


「そうだ、アネラは外でいいって言ってたけど野ざらしは嫌だよね?」

『?』

アネラは首を傾げた

「アネラのおうちを作ろう。どんなのがいいかな?」

私はデッキのテーブルに紙を置く


ペガサスは馬だよね?

だったら厩舎みたいなのでいいのかな?

何となくイメージで屋根と壁を書いていく

明るい方がいいし空気の入れ替えも出来た方がいいからここから上は窓にして…

「アネラが自由に出入りできた方がいいよね」

正面には大きめの扉を設置する

「アネラの意思で魔力を流すことって可能?」

『できるよ?』

ということは扉付近に魔力を読み取る板でいいかな?

それならアネラが前足置けばドアの開閉も出来るし…

寝る場所と水を飲む場所は欲しいよね

色々考えながら紙に書き込んでいく


「至れり尽くせりだな?」

のぞき込んだバッカスが言う

「そう?」

「どうせその水飲みは魔道具なんだろ?」

「当然。いつでも美味しい水が飲めるようにしないとね」

素材は大理石にしてみよう


「寝床はわら?それとも布団みたいなのがいい?こんなのもあるけど…」

敷布を取り出して広げてみる

『これがいい』

敷布の上に寝転がったアネラは気に入ったようだ

「じゃぁこの辺りに敷布を敷いて…こんな感じ?」


「厩舎というより家だな」

「いいの。アネラは家族だもん」

「ペットの間違いじゃない?」

「私にとってはペットも家族だから」

「それ以前に従魔はペットなのか?」

「「!」」

バッカスの言葉に私とメルテルは顔を見合わせた

「アネラは従魔でペットで家族!誰が何と言おうと私の大切な存在なの!」

思わず言い切っていた


『ありがと。ミリア大好き』

「ふふ…そうね。呼び名なんて関係ないわよね」

メルテルの言葉に私たちは笑い出した

そう、呼び名なんてどうでもいいことよね

大切なのはどう思うかってことだもの


「と、言うことでアネラのお家を作ります」

私は今書いたものを頭の中で鮮明にイメージした

『創造』

念じるとイメージしたそのままの建物が現れた


『すごーい』

家よりは小さいけどペガサス1頭には贅沢な広さかもしれない

「アネラ、ここに魔力を流して」

『わかった』

扉の前に設置した板状の魔道具にアネラが前足を置くと扉が開く

「アネラに敵意が無い人の魔力で開けられるよ。同じ魔道具がこっち側にもあるからね」

内側のドア付近に設置した魔道具の場所を教える

「アネラの好きなときに出入りできるようにしたのね?それに明るくて厩舎って感じがしないわ」

「そうだな。厩舎は放り込まれてるって感じがするがここなら住んでるって感じだ」

そう思ってくれたなら嬉しい


「庭に果実の木を植えようと思ってるの。そしたらアネラが好きなときに果物を食べられるでしょう?」

「そういうことなら私からプレゼントするわ。厩舎の裏側なら丁度いいかしら」

メルテルがそう言った直後、窓の向こう側に色んな果実の木が出現した

それも日差しが強い日には遮ってくれそうな絶妙な位置にだ


『食べてもいい?』

「勿論いいわよ」

許可が出るなりアネラは果物を取って戻ってきた

『水も果物も好きなときに口にできるなんて素敵』

嬉しそうな声にこっち迄嬉しくなる

「これならミリアが留守にしてる時も安心ね」

水も食べ物もある

外敵や雨風から守ってくれる家もある

ちなみに窓は全て割れにくく飛び散らない、車のフロントガラスのような素材になってたりする

魔法でも物理でも簡単に割れない安心仕様で自分の身の安全も確保した

この日からアネラと過ごす日々を手に入れた

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