第13話 商業ギルド
「次は商業ギルドだな」
「メル行ける?」
「はい。マリオ、お店の方はお願いね」
「分かった」
大きく頷くマリオと別れて商業ギルドへ向かった
「さてメル、先に確認しておきたい」
カシオンの言葉にメルは頷いた
「ミリアは少々訳ありの令嬢でな、この国の事情には疎い部分がある」
そういう設定なのね
「勿論詮索するつもりは有りません。私たちはミリアの知識を買いたいだけですから」
「それなら私たちの言いたいこともわかっていただけるかしら?ミリアは天然で垂れ流しちゃってるし」
「こちらで代理登録する契約を交わしていただけますか?」
メルの言葉にジュノーもカシオンも表情を緩めた
「そうさせてもらおう」
「ありがとうございます!」
メルが嬉しそうに頭を下げた
今一よくわからないんだけど…
「これからミリアには商業ギルドに登録してもらうわ。保証人はメルにお願いできるかしら?」
「喜んで」
「ありがとう。ミリアの登録が済んだら、ミリアのアイデアを登録するのよ」
「私のアイデア?」
何のことだろう?
「初心者用のパックで売るシステムと調味料のお試しパック、敷布用途拡大、他にもたくさんあったわよね」
「ええ、数えきれないくらい」
「…それって別にアイデアでも何でもないんじゃ…」
「ここで存在しない物だからアイデアとして扱われるのよ」
え~それって卑怯なんじゃない?地球では当たり前にあったし…
「で、その登録した物に関しては売り上げの1割がミリアに支払われるの」
「逆に言えばその1割を支払うことでメルたちはその登録したアイデアを自由に使うことが出来るってわけだ」
「…登録なんてしなくてもってわけにはいかないってこと?」
「そうね。それはお勧めできないわね」
ジュノーはキッパリ言った
「…わかった。任せる」
個人的にはそんな必要ないと思うけど、この世界ならではの何かがあるなら従った方がこの先も平穏に暮らせるはず
少なくともジュノーたちが私に不利益になる動きはしないだろうと思えるくらいには信用してるから
結局私は渡された10枚近くの契約書に目を通してサインすることになった
ギルドカード作成の書類に今回登録する案件の契約書、今後アイデアの登録代行をメルに依頼する契約書だった
アイデアは独占期間が10年、使用できるのは先着3名で、その売り上げの1割を支払う“アイデア登録タイプ”と、料理や作品の作り方、いわゆるレシピを誰でも手に入る価格で売り出して、その1割をギルドに支払う“レシピ登録タイプ”がある
何にしても思わぬところで権利収入を得る手段が出来たらしい
「ミリア、このカードは身分証にもなるから大切にね」
渡されたのは銀色のプラスチックのような素材のカード
+-+-+-+-+-
ミリア
種族:ヒューマン
所属:ドルー商会
所持金:-----
+-+-+-+-+-
所属は保証人になる商会又は個人が出資してる商会の名前が表示される
いずれにしてもその商会が所属してると認めないと職業ギルドに登録することは出来ない
同じギルドでも冒険者ギルドは登録時に適性試験を受けて合格すればだれでも登録できることを考えれば商業ギルドのギルドカードの方が信用度合いが高くなる
と言う代物らしい
「この所持金って?」
「カードに入金しておくことが出来るのよ。入出金したいときは商会かギルドにあるあの魔道具を使うの」
「ギルドは商業ギルドだけ?」
「冒険者ギルドでも大丈夫よ。どちらのカードも元は同じカードだから」
銀行と同じような感じかな?他所の銀行でも手数料取られたけど使えたし
「やってみる?」
「ええ」
ジュノーと共にギルド内に設置されている魔道具に向かう
「そこにカードを置いて」
カードよりも少し大きめの窪みにカードを置いた
「入金の場合は入金する紙幣をその穴に入れて緑のボタンに魔力を流すの」
「ん~とりあえず100万ダラー入金」
穴の中にマジックバッグから取り出した紙幣を入れて魔力を流す
するとカードの所持金欄に1,000,000DLと表示された
「おぉ…」
ちょっと感動
「取り出すときは同じようにカードを置いて青いボタンに魔力を流しながら金額を念じて」
言われるまま青いボタンに魔力を流して10万ダラーと念じる
すると穴から紙幣の乗ったトレイが出てきてカードの所持金が900,000DLに変わった
ATMの暗証番号がボタンに魔力を流す作業に、金額設定が念じるだけで済む形になった感じかな?
「基本的に町の中では屋台も含めてカードで支払いができるわ。カードの所持金部分に触れて『秘匿』と念じれば金額は伏せられるの」
「本当だ。これならほとんどのお金こっちに入れといた方が楽そう」
私は手元に10万ダラーだけ残して残りは全てカードに入金した
勿論秘匿は忘れない
「現金が必要になるのはどんなケース?」
「そうね、馬車通りで乗せてもらう交渉をした時や個人で売買する時くらいかしら」
なるほど。その程度なら10万ダラーもあれば余裕かな
「商会に関して分からないことがあればいつでも聞いてちょうだいね」
「ありがとうメル。また寄せてもらうね」
商品の買い付けは月に2回、さらに支店から届けられるものもあるから入れ替わりはそれなりにあるという
これは通うの決定だよね
そんな情報を仕入れてからメルと別れて再び認識阻害を作動させた
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