第11話 町へ

パルシノンに来て1週間が過ぎた

この世界では1週間は6日、それが5週で1か月、12か月で1年になる

ただ数字はそのままだけど1の週、2の週…、1の月、2の月…って読み方に変わるくらいの違いはある

時間は地球と全く同じなので違和感は少ない

1週間が7日から6日に減ったことを除いてはだけど


「ミリアおはよ~」

「起きてるか?」

やってきたのはジュノーとカシオン

「起きてる。準備も出来てるよ」

というより楽しみであんまり眠れなかった


今日は2人に町に連れて行ってもらうことになってる

服やこっちの雑貨や食料を見たいと言ったらそう提案してくれた

2人の姿はいつもと少し違って見える

「…認識疎外?」

「良く分かったわね。私たちは一応顔が知られてるからね」

そう言いながら髪と目の色を変えた

全くの別人に見える


「ミリアも認識疎外のピアス、つけておいた方がいいかもしれないわね」

そう言えばそういうアイテムをくれるって言ってたっけ

アイテムボックスから取り出すとピアスを付け替えた

このピアスには私を認識してもすぐに忘れてしまうという効果があるらしい


「ヒューマンのふりして動くなんていつ振りかしら」

ジュノーがとても楽しそうだ

「俺も馬車に乗るのは久しぶりだ」

「馬車で行くの?」

「飛んでいくわけにいかないからな。ミリアのテレポートは行ったことのある場所にしか飛べないし」

「そう言えばそうだったね」

一応パーシェに時空魔法を教わる中で、この世界の全ての国の中心部に連れて行ってもらってはいる

色んな国を見て回りたければそこから探索すればいいという

だから国の中心に飛べてもこの国の最寄りの町に飛ぶことは出来ない


「目立たず生活するなら普通の移動手段も知っとくべきだしな」

「そうだよね。凄く楽しみ」

3人で家を出て草原を進む

10分程歩くと道らしきものが見えて来た

「あれが馬車の通る道よ。商人や辻馬車が行き来してるの」

「辻馬車の乗り場や通る時間は特に決まってない。通りがかった馬車と交渉するんだ」

多くの人は馬車に遭遇したら乗せてもらうけど、そうでない場合は歩くのが当たり前らしい

例にもれず私達も馬車通りをしばらく歩いていた


後方から馬車の走る音が聞こえたのは馬車通りを15分程進んだ時だった

「乗るかい?」

「ああ、助かる。いくらだ?」

止まってくれたのは商人の馬車だった

「単なる帰り道だ。いらねぇよ」

気のいい人らしく豪快に笑ってそう言った

荷台に回ると女性と子供が1人ずつ乗っていた

「嫁さんとうちの坊主だ。あいてる場所に乗ってくれ」

「ありがとうございます」

とりあえずお礼を言って先に乗ったジュノーに手を引いてもらって乗り込んだ

カシオンは何の苦も無く飛び乗ってたけど…


「狭くてごめんなさいね。隣町に買い付けに行った帰りなのよ」

奥さんが苦笑しながらそう言った

「乗せてもらえるだけでありがたいです」

本当、それよね

ジュノーの言葉に同意するように頷いた


「町まではあと5分くらいだよ」

「そうなの?」

「うん。あの木が目印なんだ」

子供が通りの脇に立つ1本の大きな木を指さした

「あの木から馬車で5分、歩いたら15分くらいかしらね」

奥さんが補足する

ということは家から歩いて40分くらいかかるってことか

歩けない距離ではないかな


「何の買付か聞いても?」

町に入る手前で思い切って聞いてみた

「うちは雑貨や魔道具を扱ってる商会なの」

「雑貨と魔道具!見てみたいと思ってたの!」

「あら、それならこのまま商会にいかが?」

「いいんですか?」

「もちろんよ。是非商品を見ていってちょうだい」

「父さんの自慢の品揃えだよ!」

母子そろって商売人だ


「いいかな?」

同行してくれている2人に確認すると頷いて返された

「あなた、このまま店を見ていってくれるそうよ」

「そうかい。そりゃ有り難い」

ご主人は破顔した

とても気さくな家族のようだ

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