第6話 召喚の理由

「ねぇ、そもそもなぜ勇者召喚を?」

「この世界には動物と魔物、魔獣が存在する。動物はほぼ害がないが魔物は動物に魔力が宿ったもので、自分のテリトリーに入ってきた者を襲う」

「魔物を捕食して、魔力が跳ね上がったのが魔獣で魔獣は自ら町を襲う。今この世界では魔獣が急増している。特にフルジリア付近は酷い」

「つまりその魔獣退治のための勇者召喚ってこと?」

「そうだ。騎士や冒険者と呼ばれる魔物退治や迷宮攻略を生業とする者でも、一定レベル、一定の量までなら対処できるが、その強さもレベルも超えてしまった」

「現在勇者4人はこの世界の一番大きな国フルジリアの王宮に滞在している。召喚したのがあの国だからだ」

「王宮では特別待遇。魔獣を倒した勇者は傲慢さに拍車がかかるだろう」

その先は火を見るより明らかってことか

学校をわが物顔で操ろうとしていた3人のことを思えば最悪の事態もあり得る


「ミリア、彼女たちのことはスムースからある程度聞いたけど、元の世界でどうしてあそこ迄傲慢な生き方が出来たの?」

「アキナは国会議員の1人娘、サキは警視総監の娘の3人兄弟の後の唯一の娘、エミは極道の娘だからよ。この世界で例えるなら国会議員は王族の下の議員、警視総監は騎士のトップ、極道は…賊のトップってとこかしら」


この世界では冒険者含め一般人は平民に分類される

冒険者は冒険者ギルドという国にとらわれない組織に所属し、ギルド経由で様々な依頼を遂行して生活している

一般人は通常の町人のことで、商いをしたり農業をしたり、勤めに出たりして生計を立てる

その一般人や領地を管理するのが下級貴族で、下級貴族を管理するのが上級貴族、その上に王族がいて、上級貴族の中から選ばれた者が王族と共に国の行く末を決める議員となっている

そのどれにも分類されないのが賊と呼ばれる荒くれ者で、元騎士だったり、元冒険者がその役割を全うできずに落ちぶれた成れの果てだ


「親の権力を笠に着て自分たちのやりたい放題した結果があれ。逆らえば暴力で押さえつけるし、それを罪に問われることもない」

私がそう言うと神々は黙り込む

とんでもない者を召喚した現実を改めて思い知ったという感じ?


「どうせ、この世界に転移させても元の世界に戻すことは出来ないんでしょう?」

「その通りね」

「だったら当分は召喚してよそ者に丸投げしようとした自分たちが悪かったと思って面倒見てもらえばいいんじゃない?呼ばれた方は訳が分からないまま元の世界の人生捨てるしかないんだから」

それは率直な意見だ

私の召喚が成功してたとしたら、いきなり知らない世界で魔獣を倒せと言われるんだからたまったものじゃない

私にはいないけどこれまで召喚された人の中には愛する人と引き裂かれた人もいたはずだしね

そんなの召喚された側も元の世界に残された側も辛い思いをしてるはず

自分たちが助かるために他所の世界の人間を犠牲にしてるということを理解するべきだとも思う

「ミリアの言うことは尤もだな」


「ねぇ、そもそも見習いってどういう立場なの?」

「我々の管理する世界にある国の1つを管理させている」

「じゃぁスムースはフルジリアを管理してたってこと?」

「その通りだ。見習いは自分の管理する国を栄えさせるのが仕事で、神託として見習の意思や助言をその国の神官に伝えることが出来る」

「その中でスムースは勇者召喚をすればいいと言ったってこと?」

「ああ。国で勇者召喚の儀を行えば見習いがそれを実行する。見習いにはその力は有るし、その召喚で問題が解決した国も多い」

「そのせいで召喚が増えてるのは事実ね」

「一旦制限を設けよう。1度召喚すれば500年は召喚を禁止する。さすれば容易に召喚等出来んだろう」

パーシェの決断は早い

さらに決まったことは一斉に発信されるらしい

その500年をどう管理するのか尋ねたらパーシェの創造の力でその管理ツールが即座に作られたらしい

全ての世界の各国と直通の管理ツール経由で召喚の許可を求めパーシェが許可をしたらその後500年は許可自体を受け付けない仕組みだ

さらに許可なく召喚しようとすると、その見習いが神の力を失い破滅の世界に飛ばされるというオプション付き

結構えげつない


なにはともあれこうして私のパルシノンでの生活が幕を開けた

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