七・特異点

彼らは自分たちに課せたものを無視して、反撃をしてきた。

その原動力は身内を殺された怒り、ということだが。それだと今まで何万という存在が同じ感情を受けいているはずだ。


そこで、私とシアムは情報にダイブすることにした。

私が潜るほうになって、シアムがそれを受け取るほうだ。


情報流しに関連付けを行い、今から潜る情報のネットワークを意識する。


彼らの情報、彼らが戻る塔の情報へとダイブする。

ここからだと距離があるので、アトランティスの情報粒子も使わせてもらうか。


潜っていくと見えてきたのは複数のネットワークグリッド。

彼らの種族以外にも多数の種族がグリッドを作っていて、その間をまたネットワークが繋いている。


地面に生活し、砂漠で暮らす彼らのネットワークへと潜り込んていくと、情報の書き換えは行われてないことが確認された。

今までと同じパターンで彼らは生み出されているのが見えてくる。

神話という縛りで無意識にバーサクに抵抗できないように教育もされているようだ。


彼らの種族ネットワークには何も破綻はない。塔のなかで保存され、こちらで再現され、その繰り返しで惑星上の順応を見ていくことの繰り返しだった。



おかしいな。それでは彼らの怒りに任せが行動力の源がわからない。


そこで、ふと気になった人魚のネットワークグリッドへと繋がってみる。

そこも、変化はなかった。

今まで通りの情報。


他の四つ足の種族、羽を持つ種族などいくつも見ていったが、それらには変化は見られなかった。

しかし、他の種族でも多少の変化が起こっているらしい。


現状の情報をシアムが添付してくれた。


流されることなく、反抗的に自分の世界を守り他の世界を崩壊させることを厭わない若者達が生み出されてきているらしい。


彼らは自分が肉体を持ち、この大陸で生活するなかで構築してきた世界をとても重要視しており。同一種族のグリッドネットワークとのつながりをあまり重要に考えてないように見えてくる。


つまり、ネットワークの総意から独立して行動している存在になる。


とはいえネットワークから切れているわけでもない。


おかしい。

同一のグリッドから生み出されているはずなのに。


視点を遠くに置き、グリッドのグループごとに見える状態に固定する。


すると、今まで気づかなかったことが見えてきた。

他のグループグリッドにネットワークが繋がってきていたのだ。


本来は羽を持つものは羽を持つもので独立していたのが。四つ足のものと羽を持つもの、そしてあの二人のような存在達ともネットワークの細いものが生まれてきているのだった。


これは、もしかしてメガラニカに集めてきたせいか。確か他の情報を見てもこういう形でネットワークが形成されているのは見たことがない。


肉体を持ち、一箇所に集められた種はそれぞれで特殊な変化を持ちながら。

そして、同じ場所にいるということでお互いの無意識グリッドのほうにネットワークが生み出されはじめていた。

そのネットワークは細くたよりないものであったが、そのつながる先を見て納得した。


それは、今回連れてきた二人に繋がっていくのだった。


種族グリッドを超えた情報ネットワークが構築され始めている。

これは、メガラニカで過ごしている間に生み出されていってたのか。


その細いネットワークは個別の意思をもっていないと独立して存在できなくなるので、今彼らは恐怖による感情、恐れによる感情を持って自分の生存権を獲得し。

自分が独立して存在していることを確認しようとしているのだった。


この彼らのような存在はいつ頃から生じてきていたのか。


こういう部分に気づかないとは。

なんとも怠けていたものだと感じてしまう。数周期も同じことをやっていると自分たちもマンネリになってしまうものだ。


確認すると、彼らのような存在の兆しは十数期前に存在していた。


それは彼らが生まれてくるタイミングにリンクしている。

塔から情報がミックスされ、新たな個体意識が作られる際に、この期間に生まれた存在たちに特有のパターンが持たせられている。


彼らは、この種族間を超えた情報ネットワークを作るために、その役割を持って生まれてきたというわけか。


塔だけの情報ではない、この世界に、この星に抽出され、世代を繰り返すことで自己保存の力と、恐れと恐怖を操る存在が生み出されてきたのか。



これは、他のグリッドも確認しないといけないな。



私はそのまま、他のグリッドにある情報を探り、シアムに伝えていくと、シアムは時間を作って他の種族のところを見てくるということを伝えてきた。


では、自分はこのまま種族グリッドをつなぐネットワークとなっている存在を探し特定していくか。


と思っていると、部屋の扉が開くのを感じた。

急に意識を戻すと、潜水病のように意識がバランスを崩してしまう。本来の自分である情報のソースそのものの姿であればそんなことはないのに。こういうときに肉体を抽出していることを後悔することもある。

肉体がないほうが何かと便利がいいのだが。

ただ、それをやると今回のような探索も彼らとの出会いもできないものだが。


シアムは私が引き出してきた他の種族が作っている集落の中にある、私が見つけたネットワーク達を見てくることにしたらしく、すぐに出かけてくると情報粒子で伝えてきた。

私には二人とゆっくり話をして。その内容を記録しておくようにという指示を与えて。


やれやれ、肉体を持つ人との関わりは得意ではないのだが。


と思って情報粒子経由でシアムに伝えると、手を振りながら部屋の外に出て行くところだった。


しょうがない。


そう思い、透明なガラスでできたダイバー装置から体を起こし彼らのところへと進む。

そして、食事に誘いそこで話を聞くことにした。


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