第10話

 7月1日

 東海道・山陽新幹線でN700S系が運行を開始。


 改正容器包装リサイクル法(容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律)の施行により、プラスチック製買物袋を扱うスーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの小売店で、レジ袋(プラスチック製買物袋)の有料化が義務化。


 何でも有料になって嫌だな〜と、麻美はジェット船の中で新聞を読みながら思った。

「島についたら何する?」と、牙城。 

「決めてなーい」と、麻美。  

 麻美はスマホにイヤホンジャックを差して、スピッツの『ロビンソン』を聴いていた。窓の外の青い海と曲の感じが合ってる。

 牙城はSwitchで『世界のアソビ大全51』で遊んでる。2005年に発売されたニンテンドーDS用ソフト『だれでもアソビ大全』同様、ボードゲーム、トランプゲーム、オリジナルのバラエティゲームなどを51種類収録しているテーブルゲーム集。

 ローカル通信やオンラインプレイにも対応。無料配信されているポケットエディションでも製品版とのローカル通信プレイ対戦が可能。

 牙城は『たこやき』ってゲームで遊んでいた。

 カードをひっくり返していくゲームであることから、トランプのカードをたこ焼きに見立てている日本発祥の比較的新しいトランプゲームである。


 駆け引きの要素はなく、ゲームの勝敗は運要素がほとんどを占めているギャンブリングゲームである。運要素で占められていることから手加減をする余地がなく実力差が出ず、子供でも覚えやすい単純なルール。


 トランプ1組からジョーカーを除いた52枚だが、ジョーカーを加えることもある。


 親は子に1人10枚ずつカードを配る。配られたカードは、裏向きで、1列に5枚ずつ、2列に並べる。残りは山札とする。


 自分の番になったら山札からカードを1枚引き、そのカードがエースまたは数札であれば右の図の対応する場所に表向きに置き、さらにその位置にあったカードをめくる。めくったカードが絵札または一度めくったカードであった場合、自分の番は終了する。こうして、A,2,3,4,5,6,7,8,9,10の10枚のカードを表向きにしたプレイヤーが勝ちである。


 神津島こうづしまは伊豆諸島に位置し、神津島をはじめ、漁業関係者や釣り人、ダイビングを趣味とする人々によく知られた銭洲などの島嶼からなる。


 所属する郡はなく「東京都神津島村」が正式な表記である。所管する都の行政出先機関は大島支庁で、神津島出張所が設置されている。公認キャラクターはかんむりん。


 東京都心の南西178 kmの太平洋上に浮かぶ神津島を中心に、銭洲、恩馳島、祇苗島などの島々より成る。


 神津島の住民のほとんどは、神津島港(前浜)周辺に集中していて、多幸湾の方は数えるほどしか民家・建物がない。最近は多幸湾のほうにも民家が進出し始めている。

 

 漁業・観光業が島の大きな産業である。釣り客も多いが、天上山トレッキング目当ての客も多い。また環境省調査によると、東日本でもっとも光害の影響が小さい地域とされており、天体観望も重要な観光資源である。2020年12月1日島全体が国際ダークスカイ協会により星空保護区に認定された。国内では西表石垣国立公園に次いで二例目である。


 島焼酎の醸造もさかんで、神津島の「盛若」は他島の酒店や東海汽船の客船内レストランでも提供されるなど人気が高い。


 かつては新島と同様コーガ石が切り出されていたが、現在は行われていない。

 

 麻美は牙城のことをどことなく堂本剛に似てると思った。彼は今、人生の岐路に立たされていた。彼の派遣先でテロが起きた。犯人は牙城と同じ、『エボリューション』の社員だったのだ。派遣先側は『エボリューション』にアレルギーを感じ、牙城は派遣切りされてしまった。

「あれ、九鬼さんじゃない?」

 トイレから石塚英彦に似た男が出てきた。

 麻美はイヤホンを耳から出して言った。

「湯川先生」

「旅行か?」

「はい」

「何か君って強そうな感じするな」

「何故?」

「鬼が9匹もいりゃあ、ゾンビもドラキュラも敵わない」

「ハハハ……」

「九鬼さんって上白石萌歌に似てるよな?」

 湯川はソファに腰掛けた。  

「萌歌と萌音の区別が……」

 麻美は双子タレントの区別がなかなかつかない。茉奈佳奈もこまどり姉妹もどっちがどっちか分からない。

「萌歌ってのは3年A組に出てた子だよ」

「あ〜永野芽郁とか菅田将暉が出てた奴?」

「そうだよ。菅田の狂った先生は面白かったな」

 ジェット船が神津島に着いた。牙城は島の形がひょうたんに似てると思った。

「もしかしたら、ひょっこりひょうたん島ってここがモチーフなのかな?」と、独り言を言った。

 麻美はスマホの時間を見た。11:58。

「あ〜腹減った〜」

 お腹を牙城は擦ってる。

「それじゃ腹が痛いみたい」と、麻美。

「それじゃーな」

 湯川とは桟橋のところで別れた。

  

 湯川は恋人の坂東パリスのいる定食屋に向かった。パリスは大学の教え子だ。

 湯川は玉蟲左太夫たまむしさだゆうに憧れていた。文政6年(1823年)に仙台藩士の玉蟲伸茂の末子として誕生。幼名は勇八。弘化3年(1846年)に江戸の湯島聖堂で学び、その塾長となる。


 安政4年(1857年)には箱館奉行・堀利煕と共に蝦夷地を調査し『入北記』を著す。万延元年(1860年)には『入北記』の詳細な記述や観察眼を認められ、万延元年遣米使節の記録係として渡米、ポーハタン号での生活やアメリカの風俗など詳細な記録を『航米日録』として残している。帰国後大番士となり、のちに養賢堂指南統取となった。


 慶応4年(1868年)戊辰戦争が勃発すると奥羽越列藩同盟の成立に尽力し軍務局副頭取となり、明治2年(1869年)敗戦後捕縛され獄中で切腹した。享年47。

 子孫に玉虫文一がいる。

 

 定食屋の前にパリスが立っていたが、肩から血を流していた。

「どうした!?」

「猪に襲われた」

「えっ、猪ッ!?」

 そこに揚羽蝶の柄のカーディガンを着た女が現れた。彼女は女医の青木路美だ。路美の手当てもあり、パリスは大事に至らないで済んだ。


 麻美と牙城は軽食屋でパスタを食べた。🍝 

 麻美はミートスパゲティ、牙城はカルボナーラだ。

 ホテルにチェックインして、部屋に荷物を置いて2人は島を散策した。

 多幸湾は、海水浴だけでなく、サーフィンやボードセーリング、ダイビングにも人気の場所で、トイレ、シャワーの設備が備わっている。

 多幸湾海水浴場に隣接して都立多幸湾公園があり、都立多幸湾公園ファミリーキャンプ場、多目的広場、花木園、ツツジ公園が整備されている。


 多幸湾の南側が三浦漁港で、西風の吹く冬季には、東京からの東海汽船「さるびあ丸」、ジェット船、下田からの神新汽船「フェリーあぜりあ」は、多幸湾三浦漁港に入港することも多い。。


 この多幸湾から東の突端、砂糠崎さぬかざきへ続く地層からは、黒曜石が発掘され、本州各地の遺跡で見つかっていることから、旧石器時代から危険な海を乗り越えて各地に運ばれたことがわかっている(神津島の黒曜石は神津島前浜の南西沖の恩馳島・南島産が最も質がよく、そこが中心に採取されていた)。

 東伊豆の見高段間遺跡(静岡県賀茂郡河津町)から、19kgもの神津島産の黒曜石が発見されていることから、縄文時代の中期に、見高段間遺跡にいったん黒曜石が運ばれ、そこからさらに全国へと輸送されたと推測され、各地で加工されたのだと推測できる。

 神津島が水配りのために伊豆諸島の神々が天上山に集まったとされるのも、こうした黒曜石の交流が背景にあるのかもしれない。

 三宅島の噴火以前は、砂糠崎の付け根まで車道のような道があり、地形図にも徒歩道の表記があるが、噴火の際の地震で、多幸湾の断崖が崩落し、道も通行できなくなり、現在も落石が続いている。

これは、昭和40年代の後半、第2次農業構造改善事業で一帯を桑畑にし、養蚕事業を行なったためのアクセス道路で、昭和50年代に放棄され、昭和58年の三宅島の噴火による地震、平成12年の伊豆諸島北部群発地震で、荒廃している。


 午後7時、大雨で身動きが取れない寂れた神津島(多幸湾側)にあるホテルの食堂に男女が集まっていた。私立探偵の増上寺と、湯川教授と、その恋人で重傷を負った坂東パリスに、無口な牙城。牙城の恋人の麻美。善光寺と、その恋人の生沼香美。刑事である月島と、月島に力を貸している但馬。ホテルの支配人、色部清隆いろべきよたか

 色部の提案でビンゴゲームが開催された。

 優勝者には10万が当たる。

 無職者の牙城は躍起になっていた。


 偶然居合わせただけの彼らは、いつの間に路美の姿がないことに気付き騒然とする。

 命の恩人である彼女の身を案じた湯川は、色部に路美の部屋を尋ねた。

「2階のゼウスの間です」

 ギリシア神話の最高神。 オリンポスの神々の支配者で、クロノスとレアとの間に生まれた末っ子(ホメロスでは長子)。 クロノスは、わが子に王位を奪われるという予言を恐れ、生まれてきたわが子のポセイドン、ハデス、ヘスティア、デメテル、ヘラを次々に飲み込んだ。

 部屋に入った湯川は唖然呆然した。

 路美はボーガンで胸を射抜かれ、ベッドで仰向けで死んでいた。


 午後8時、但馬が月島と協力し殺人犯を捜していると、今度は生沼香美が斧で頭を潰され殺されていた。路美はハートのKING、香美はクラブのKINGのカードがそれぞれ所持していた。

 香美の死体が見つかったのは中庭にある物置だ。

「生沼さんの部屋って路美さんの隣だったよな?」と、但馬。

「うん、確かマルスの部屋だ」と、月島。

 マールスは、ローマ神話における戦と農耕の神。日本語では「マルス」や「マーズ」と呼ばれる。

 ギリシア神話のアレースと同一視され、軍神としてグラディーウゥス(グラディウス、Gradīvus、「進軍する者」の意)という異称でも呼ばれる。しかし、疫病神のように思われて全く良い神話のないアレースに対し、マールスは勇敢な戦士、青年の理想像として慕われ、主神並みに篤く崇拝された重要な神である。聖獣は狼、聖鳥はキツツキである。

 月島は気になって仕方なかった。何故、色部はアレスじゃなくマルスにしたのか?

「生沼さんなら簡単に路美さんを殺せたんじゃないか?」

 但馬は瞳を輝かせた。

「いや、それよりも善光寺の方が自由自在に動けた」

 月島に否定され但馬は強い殺意を抱いた。和島の野郎!最近じゃメディアに出まくりだ。誰のお陰で今の地位があると思う!

「それより、但馬さん。御堂は見つかったか?」

 御堂功みどういさおは5年前の7月7日に祇園交番で起きた警官射殺事件の指名手配犯だ。殺された交番長の、竜崎りゅうざきは仕事のイロハを月島に教えてくれた大先輩だ。

「そう簡単にはいかねーよ!!」

 

 姉小路政権になってから特権階級の犯罪が許されるようになった。

 式忠次しきちゅうじは東京都知事だ。彼は殺人神経衰弱に参加していた。式は1番最初にホテルに到着し、待ち伏せしていたのだ。

 雨漏りしているという蚩尤しゆうの間で息を潜めていた。

 蚩尤は、中国神話に登場する神である。 『路史』では姓は姜で炎帝神農氏の子孫であるとされる。 獣身で銅の頭に鉄の額を持つという。 また四目六臂で人の身体に牛の頭と鳥の蹄を持つとか、頭に角があるなどといわれる。

 式は森の中を走っていた。蝉や蛙の声がする。

 路美と香美は合致していたので、式は宝箱の鍵をゲットした。🔑鍵はどこからともなくドローンで運ばれてきた。

 宝箱は洞窟の中にあった。バズーカが入っていた。ボーガンは自前だ。

 

 増上寺は何でこの島にバクテリアがいるのか不思議でならなかった。マイコプラズマ(雷電竜馬)とスピロヘータ(遠藤玲美)は既に殺されている。

 増上寺は武器を探すために島を散策することにした。

 午後9時、レインコートを着てホテルを出た。雨は小康状態にあった。

 南部と北部の間の西側の前浜沿いに主な集落がある。島の他の地域には字滝川、字高処山のように字があるが、この地域には字も町名も指定されていない。

 御蔵島や青ヶ島など伊豆諸島には断崖絶壁に囲まれた島が多い中、神津島は比較的平坦で砂浜海岸が多い。また近海を黒潮が流れており、観光事業は発足していないが、マッコウクジラなどの鯨類もいる。

 増上寺は前浜沿いの集落にやって来た。

 

 武家屋敷みたいな屋敷に入った。増上寺は不思議な鍵『ソロモン』を手にしていた。どんなドアでもチョチョイのチョイ!

 屋敷の和室で但馬は血塗れになって、畳で仰向けで死んでいた。

 鍵は間違いなく閉まっていた。

「密室殺人……」

 増上寺は屋敷の中を歩き回った。縁側の窓が開けっ放しになり、床が雨のせいでびしょ濡れだ。

「犯人はここから逃げた」


 厚生労働大臣の西脇兵悟にしわきひょうごはスペードの8を眺めていた。武家屋敷で日本刀で殺した高橋克実に似た男が手にしていた。西脇はダガーナイフを手にしていたが、屋敷内で見つけた日本刀で男の背中を刺した。

 優勝者は月に行けることが出来る。🌕

 

「オーナーのアンタならスペアキーも持ってるだろうし、青木さんや生沼さんを殺すことも思いのままだ」

 午後11時、ロビーに色部を呼び出した湯川は単刀直入に言った。

 状況から殺人犯だと決め付けられた色部は車で逃走を図り、誤って湯川を轢き殺してしまう。湯川はガードを握っていなかった。

 牙城は色部を物置に監禁し、南京錠を外側から掛けた。


 但馬、香美、路美の3人はそれぞれ汚れた過去があった。路美は薬物に手を出し、香美は万引をしている。但馬については説明するまでもない。

「路美の旦那はヤクザだった」と、月島。

「ペンギンハウスで銃を持ってたのはその為か……」

 武器探しから戻ってきた増上寺はロビーで月島と喋った。

「おまえ、あのホテルにいたのか?」

 絶対に自分がピロリだと知られてはいけない!

 増上寺は思い切って切り札を使った。

「月島、言わないといけないことがある。但馬が殺された」

 テレビ番組の話や時事問題だと、話をそらしたと思われかねない。

「マジかよ~!?」


 生存者

 九鬼麻美・牙城大地・月島・増上寺・善光寺・坂東パリス・色部清隆


 7月2日

 午前2時、新たな事件が起きた。増上寺は『ソロモン』を使っていろいろな部屋を物色した。

 1階のポセイドンの間に入った。

 ポセイドンは、ギリシア神話の海と地震を司る神である。オリュンポス十二神の一柱で、最高神ゼウスに次ぐ圧倒的な強さを誇る。海洋の全てを支配し、全大陸すらポセイドーンの力によって支えられている。地震をもコントロール出来るとされる。また、地下水の支配者でもあり、泉の守護神ともされる。

 ダガーナイフで背中を刺されて死んでしまっていたパリスの側にダイヤの6のカードがあり、同室で銃で頭を撃たれた善光寺のズボンからはダイヤの7のカードが発見される。

 善光寺は自らこめかみをぶち抜いて死んだようだ。

 ポセイドンの部屋に泊まっていたのは善光寺だ。

 一刻の猶予もないと焦った増上寺はホテルから逃げようとする。

 

 牙城と麻美は漁船に向かった。海が湿気てるとか気にしてる場合じゃなかった。が、漁船は爆発炎上してしまった。集落の人たちの協力もあり鎮火するが、船の残骸周辺には死体らしき物はなく、ホテルに戻ると本性を表した牙城が「足引っ張ってんなよ、ピロリ!」と増上寺を拳銃で撃ち殺し、麻美を追いたてていた。

 ロビーの床には増上寺の死体が転がっている。

「おまえもあんとき殺しておくべきだったな……」

 牙城の正体はバクテリアだ。

 バクテリア”は“細菌”の英語であるbacteriaから来ている。 これは複数形で、bacteriumが単数形です。 つまり同じものなのだ。 似た例としては、ブドウ糖とグルコース、ホルマリンとホルムアルデヒド、エタノールとエチルアルコール、最近はあまり使われなくなってきたが、ビールスとウイルスなどがある。


 増上寺(ピロリ)はQUEENの12を手にしていた。

 牙城も殺人神経衰弱に参加していた。

 牙城は西脇の甥っ子で、ゲームの招待状を受け取っていた。

 麻美は復讐することも忘れて泣き叫んでいた。

 月島が駆けつけるが、牙城は逃げ去った後だった。


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