第3話
化野は京都の嵯峨の奥にある小倉山の麓にある。かつては風葬の地,近世は鳥辺山とともに火葬場として知られた。「西の化野」、「東の鳥辺野」、「北の蓮台野」を京の三大葬地という。 化野の名は「無常の野」の意で、人の世のはかなさの象徴としても用いられた。その霊を弔う寺として、化野念仏寺があり、境内には約8,000の無縁仏を祀る石仏がある。
転じて、火葬場、墓場の意味とも解釈される。
彼は自分が生まれ育った故郷の小さな町に舞い戻り、刑事になりすます。
実は竜馬には町の住民たちに怨みがあった。さかのぼること30年以上前、竜馬の父親はこの町で町医者を開業し、妻と幼い竜馬と平穏に暮らしていた。しかし、妻が回復不能の心臓の病を患い、次第に容体は悪化、父はそんな妻を助けようと次第に狂気に陥っていった。父は生きた人間の心臓を使って心臓移植の実験を行っていたのだ。
父のせいで竜馬は中学時代、
『
父の声を竜馬は思い出した。
「おっ、おっ、おまえのせいで僕は……」
父親を殺したい衝動に駆られた。
竜馬は雷電病院の前までやって来た。ボロボロになった犬小屋の中では、腐乱したビリーが竜馬を待っていた。かわいいポメラニアンだったのだが、きっと、父が餌を与えなかったせいで餓死したに違いない。
35歳になった竜馬が仕事を探すのは至難の業だった。竜馬は開放病棟に入院していた。コラージュ療法や音楽療法を受けた。
インターホンを押したが留守のようだった。
青年、ピロリはある日、国道をオートバイで走行中に事故にあい、重傷を負う。彼は偶然通りかかったパウエルというイケメンに助けられる。彼は俳優だったが、突然失踪して京都で愛人の
パウエルは売り上げを巡って麗と対立するようになった。
「何でこんなに売れないんだ?」
『食べられる大人のソーセージ』も、『食べられる美しすぎるアワビ』もあまり売れていない。
「カップルがオモチャなんて買わないのよ。頭の中、脳味噌じゃなくカニ味噌が入ってんじゃない?」
麗の辛辣なセリフに殺意を覚えた。
ケンカをピロリはハラハラしながら見ていた。
ピロリはシャトルバスの運転手として雇われていたが、密を避ける風習から客足は遠のいていた。
「ケンカは辞めて仕事しましょうよ」
「ピロリ、口答えしないで!」
麗は鋭い口調で叫んだ。
「だいたい、あんたの親って病原菌を名前につけるなんて変わってるわね?」
ヘリコバクター・ピロリとは、ヒトなどの胃に生息するらせん型のグラム陰性微好気性細菌である。単にピロリ菌と呼ばれることもある。ヘリコバクテル・ピロリと表記されることもある。1983年にオーストラリアのロビン・ウォレンとバリー・マーシャルにより発見された。胃の内部は、胃液に含まれる塩酸によって、pH1の強酸性であるため、従来は細菌が生息できない環境だと考えられていた。しかし、ヘリコバクター・ピロリはウレアーゼと呼ばれる酵素を産生しており、この酵素で胃粘液中の尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解し、生じたアンモニアで、局所的に胃酸を中和することによって、胃へ定着(感染)している。この菌の発見により、動物の胃に適応して生息する細菌が存在することが明らかにされた。
「ピロリ菌って胃ガンの原因になるのよ」
「麗って学者みたいだね?」と、パウエル。
「昔、ナースしてたのよ。雷電ってクソみたいな院長だった。ろくに給料も払われない。駐車場代はかかるし、休みはあんまりないし……」
ピロリは無給医って言葉を思い出した。ニュースでやってた。もしかしたら無休医だったかも知れない。
ピロリはある凄惨な事件を思い出していた。
ピロリを含む5人で
和義は
九鬼 嘉隆は、日本の戦国時代から安土桃山時代にかけての武将、大名。九鬼水軍を率いた水軍武将であり、九鬼氏の第11代当主。
志摩の国衆の一員として身を起こし、織田信長や豊臣秀吉のお抱え水軍として活躍し、志摩国を支配して3万5000石の禄を得た。こうした経歴とその勢威から、江戸時代には軍記物などで海賊大名の異称をとった。後に関ヶ原の戦いで西軍に与し、戦後家康に許されたが、答志島で自害した。
2010年はいろんなことがあった。度重なるアクシデントの末に小惑星探査機『はやぶさ』が世界で初めて地球重力圏外天体に着陸してのサンプルリターンに成功、無事地球への帰還を果たした。このニュースは日本のみならず世界中のメディアでもとりあげられ、大きな反響を呼んだ。
リーマンショックによる景気悪化から久しかったが、また景気が持ち直すだろうと楽観的に捉えていた風潮が少なからずあった。
4月12日の深夜、ピロリたちは九鬼邸に侵入した。仲間の1人、スピロヘータがどんな鍵でも開ける魔法の鍵、『ソロモン』を使い玄関のドアを開けて寝室にいた彩子を、サルモネラって巨漢がナイフで腹を刺して始末した。
ピロリは屋敷の前で見張る役だった。
主人の和義はやせっぽちのマイコプラズマ、チビのバクテリアが相手した。
マイコプラズマが寝ていた和義に馬乗りになり、バクテリアが両足にロープを縛りつけた。
『騒いだら奥さんみたくなるよ』
寝室のドアのところで立ちはだかってる、スピロヘータが冷笑を浮かべた。
彩子は白目を剥き、口から泡を吹き出していた。
『ありったけの金をよこせ』
マイコプラズマが欲望に満ちた目で和義を睨みつけた。
『クズどもにやる金はない』
もしかしたら、金の在り処を喋ってしまったら用済みとなり始末されることを恐れていたのかも知れない。
『貴様ァッ!』
バクテリアが怒号を上げた。
『声が大きいぞ』
スピロヘータがバクテリアを窘める。
和義は何かに気づいたようだ。
『その声は、ら……』
逆上したマイコプラズマは和義の首を両手で締め上げて殺害した。
『バカ、殺したら金の在り処が分からなくなるだろう?』
ボスのスピロヘータが性格の悪そうな声で言った。
『コイツ、僕のこと気づきやがった……』
『だからって殺すことはないでしょ?』
スピロヘータの視線がサイドテーブルの写真立てに向けられた。夕暮れの鴨川をバックに和義と彩子、そして幼い女がピースしてる。
『この家にはもう1人、住人がいる』
5人は手分けして娘を探した。マイコプラズマはキッチン。まさかとは思うが冷蔵庫を開けた。烏龍茶の大きめのペットボトルを見つけた。喉が乾いていたのでラッパ飲みして、元に戻した。台所下の小さな扉を開けたが、鍋や包丁くらいしかなかった。床下の収納ボックスも調べたが、ホコリだらけになった臼や杵が保管されてあった。
バクテリアは脱衣所と浴室を調べた。洗濯機の中、最近じゃ珍しい2槽式洗濯機だ。誰もいない。蓋を外して浴槽の中も調べたが無駄骨だった。
ピロリはトイレを調べた。ゴキブリが這っていたのでビックリした。ここにも娘はいない。
スピロヘータはリビングを調べた。リビングにはVIERAやノートパソコンがあった。テーブルの下を調べたが娘はいない。テーブルの上に和義のガラケーが置かれてある。何かの役に立つかも知れないから持っていくことにした。
サルモネラは階段を伝って2階を目指した。巨大なのでミシミシと床が軋む。子供部屋のドアを音を立てないように開けた。『フレッシュプリキュア』のキュアピーチの人形が机に飾られてある。小さ目のベッドはまだ温かかった。クローゼットに気づいたサルモネラは、彩子を刺したときに使ったナイフを力強く握りしめた。ガチャリ……クローゼットを開けたがベビー服や、幼稚園に持っていく小さなバックがあるだけだった。
『いったい、どこに消えたの?』
扉を閉め、もしやと思いベッドの下を調べたが無駄骨だった。
階段を降りてリビングで4人と合流した。
『いたか?』と、バクテリアがサルモネラの顔を見上げ、言った。
サルモネラは首を横に振った。
『俺たちが2人を襲ってるときに逃げたんだ』と、バクテリア。
『サツが来る前に逃げるわよ』
スピロヘータを先頭に九鬼邸から出て、ワゴン車に乗り込み深夜の街を駆け抜けた。
パウエルと麗の争いは激化して、パウエルは麗を殴ったり蹴るようになった。麗はお腹にパウエルの子供を身ごもっていた。生まれてくる我が子の為に麗はピロリにパウエルを殺すように頼み込んできた。
ピロリは麗から10万円を受け取った。
転職活動中は簡易宿泊所で生活していた。財布を盗まれそうになったり、全裸で男が暴れたり、いびきや足音で眠れなかったり酷い生活だった。
嵐山にある温泉でリラックスした。
ピロリはパウエルを地獄に突き落とすことを決意した。
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