夢で叶える
彼女は成人してから引っ越すまで
そこによくお参りしていたそうだ。
信心深いとかそういうわけではないのだが
物心ついたときから親につれられて
行っていた場所なので、
熱心にお願い事をするというよりは
ただ挨拶をするような感覚で
足を運んでいたそうだ。
立派な御神木もなく、ただ赤い鳥居があるだけのこじんまりとしたお社で
何を祀っているかも分からない。
ただ、誰かが掃除をしているようで
年期が入っている割には綺麗で
不思議と落ち着く場所だった。
風子さんがまだ地元にいた時、
不思議な体験をした。
彼女が小学校3年生の時、
休日に水族館に行くはずが
親の都合で行けなくなった。
風子さんはお社に行き、自分がどれだけ
水族館に行きたかったか愚痴った。
その日の夜、
彼女は見知らぬ優しい手に引かれながら
水族館で遊ぶ夢を見た。
水槽は宙に浮かび、中を泳ぐ魚も
見たことないものばかりだったが
Fさんはとても感激して、
目覚めたときには幸福感に満たされていたという。
それから彼女は、
苺狩りに行きたい、
世界旅行をしたい、
そういう気持ちが浮かべば
そのお社に行ってお願い事をした。
そうすると必ず願いが叶うような夢を
見られた。
彼女が最後にお願い事をしたのは
彼女が19歳の時。
周りに恋人が出来るのに焦って
ためしに、
白馬の王子さまにむかえに来てほしいと
願った。
その日の夜。
広大な敷地の神社の中にいたFさんが
何者かに呼ばれて振り返ると
そこには純白の馬を引き連れた
冠直衣を身に纏う青年が立っていた。
風子さんは笑いながら言う。
きっと神様は白馬の王子さまが
分からなかったのだろうと。
もう大人になるのだから
自分の願いは自分で叶えなければと
心を入れ換えた瞬間でもあったそうだ。
彼女は三十代になった今でも週末になると
お社を訪れてはお参りをしたり
掃除をしたりしているそうだ。
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