キスをした夢

夢の中でキスしたことあります?

やだあ!そんな話じゃないです。


私、夢を見やすいんですよ。

しかもそれをはっきり覚えてる。

元々、スピリチュアルとかオカルトとか好きで、夢占いにはまりました。


面白いんですよ!

現実で起きたら嬉しいことも

夢の中で見たら実は悪い意味があったり。

それらを記録するようにもなりました。夢日記ってやつです。


夢日記をつけるようになると

明晰夢みたいなのをよく見るようになりました。


明晰夢っていうのは、夢を見ている自覚がありながら見る夢のことです。


ああ、キスの夢の話でしたね。


去年の夏だったな。

夢が始まった瞬間から、口の中をまさぐられる感覚があって、水音が聞こえていました。


自分の意識はしっかりあって、珍しく艶っぽい夢を見てるなってどこか他人事のように思ってました。


私の夢って一人称視点なんですけど、自分の姿はおろか私にキスしているであろう誰かの姿が見えなくて、

周りは闇の黒一色で、不気味には感じたんですけど、まあ夢だからってどこか肝が座っていましたね。


早く目が覚めないかなとか

考えてたら、段々と口の中にある何かの感触が固く節のあるものに変わったんです。


うわっ、気持ち悪い!

吐きそうってところで目が覚めて、

私は飛び起きて嘔吐しました。


口からがぼっと塊が出た瞬間、

周りに人がいることに気がついたんです。


私を囲むように座り込んでいたのは大学のサークルの先輩達で、みんな真っ青な顔でした。

中には泣いている人もいて、その時やっと

私は見知らぬ廃墟の和室で倒れていることを知ったのです。


「あれ?ここどこですか?先輩どうしたんですか?」


その声を無視して1人の男の先輩が震える手で私の口から出た塊を広げ目を見開き「さっさとここ出るぞ!」とみんなを引っ張っていきました。


ワゴン車に乗り込むとアクセルがかかる音ともに急発進して、私は窓から、遠ざかっていくさっきまでいた民家を眺めていました。

そこでようやく、自分達が肝試しに来ていたことを思い出したんです。


山道をぬけて

街のあかりが見えてきた時

やっと先輩たちから、

廃墟探索中に私が突然倒れて痙攣したことを知らされました。


呼吸ができておらず、喉の奥に何か詰まっているのが見えたので、背中を叩いたりしてくれたと。


それでも出ないのでやむを得ず指を突っ込んで吐き出させたと。


「迷惑かけてすみませんでした。」

「いや、悪くないんだから謝らないで。」

「あの、先輩。」

私はみんなを引っ張った先輩に聞きました。


「驚かれてたけど、私、何を吐き出したんですか?」


この質問に先輩は暫く黙っていましたが、他の先輩に促されてようやく口を開きました。


「お札。何枚ものお札だった。」


私はこの日以来、オカルトとは距離をとっています。

あ、でも、夢日記はつけてるんですよ。



キスの夢は…今も、時々…。


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