【実話】カーナビから聞こえる声


先日、出勤しようとした私を珍しく母が呼び止めました。


なんでも、妹がライブに行く為に駅を使うから一緒に送っていくとのこと。


助手席には妹、運転席には母、私は後部座席に座りました。


妹は乗るやいなや、慣れた手つきでカーナビを操作し、Bluetoothに接続して

スマホにあるミュージックアプリを使い、音楽を流し始めます。


現代っ子は凄いなと見ていると、母はどこか訝しげな顔でハンドルを握っていました。


「○○(妹の名前)、それってどうやって繋げてるの?」

「え?Bluetoothのこと?普通にここ押して、こうして…。」

「ふーん、そうなんだ。」

少しの沈黙の後、母は言いました。


「あのさ、○○。」

「何?」

「Bluetoothって、ちゃんと切ってる?」

「え?」


妹と私はその質問を不思議に思いました。

こちらが切るも何も、離れると勝手に切れるものでした。


「いや、私が車から出たら勝手に接続が切れると思うよ。」

「ほんとに?」

「ええ、そう思うけど。」


母は首を傾げました。


「いやあ、ちゃんと切れてないと思うよ。」

「なんでそう疑うの?」


拗ねる妹に、母はこう言いました。


「運転すると、カーナビから女の笑い声がするの。

だから、ちゃんと切れてないと思う。気をつけてね。」


車が駅に着き話はそこで終わりました。

最後まで妹は納得していない様子でした。


それもそのはず、仮に繋がっていたとしても、彼女が聞く曲に人の笑い声が入っているものはありませんから…。

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