菊の妖精


9月9日に思い出すのは、ひいおばあちゃんのこと。


今日は亡くなったひいおばあちゃんの誕生日なのだ。


私は残念ながら会えなかったんだけれど、

優しい人柄がみんなに愛されていた人で、

何より美しい人だったそうだ。


おじいちゃんにどんな人だったか聞くと、

「おばあちゃんはな、菊の妖精さんだったんだよ。」としか言わない。


いつも冗談しか言わないからそれも嘘だと思って流していたんだけれど、今日、お母さんから妙な話を聞かされた。



お母さんが、今の私と同じ高校生だった頃。

ひいおばあちゃんが亡くなった。


お通夜と本葬をして、火葬をしたのだが、

その時親族一同唖然とした。


骨がかけらもなく、代わりに真っ黒くなった幾本もの菊の花が散乱していたのだという。


「人と違うところはあるなと思ったの。

 どんなに枯れかけたお花もおばあちゃんが、触れるだけで復活するし、たまに木とおしゃべりしたりしてたから。

まあ、あんなに強い火の中で、黒くなったにせよ、花が原型を留めることなんてありえないじゃない?

何かを見間違えただけだと思うわ。」


とお母さんが笑う。



この話を聞いて、私は一つ気になっていることがある。


先週、学校の料理実習で、私は指を火傷してしまったんだけれど、

その時、クラスの子達がひそひそ言った。



「なんか、葉っぱが焦げるにおいがしない?」



火傷したところは真っ黒く変色している。



まさか、ね。


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