戦中八話 さいごの夏の少年、少女たち・・・とオッサン 最終話

(これまでのあらすじ)

 事実上最後となるエドナ杯。

 それは史上最高の手合い評論家と史上最高の手合い分析家の想定外だった。

 並んで観戦していたライゼル・ヴァンフォート伯爵とビルビット・ミラー少佐はちびっこ騎士エレナ・スレイマン、オラトリエスの真の王たる『剣皇カール』と女神ウェルリッヒの化身たるミュイエ・ルジェンテ妃の長子でオラトリエス王太子リシャール・ルジェンテの参戦に加え、傭兵騎士団エルミタージュの脱走兵ヴァスイム・セベップが決勝トーナメントで激突する流れとなったことに動揺していた。

 そして、ディーンの妹で“魔女”と通称される隠密機動セリーナ・ラシールがヴァスイム・セベップの真意を図りかねる中、《軍神》ロムドス・エリオネアの甥で養子のコナン・エリオネア少佐は女皇騎士団が追い求めた《アイラスの悲劇》の真相を語る。

 騎士として平凡な力しか持たないエリオネア家と、剣聖一族ラファール家の確執と嫉妬。

 現場不在の叔父ロムドスにかわり、傭兵騎士団エルミタージュを手引きしていたのは、誰もが善良で平凡と見做すロムドスの元副官コナン・エリオネアだった。

 そのコナン・エリオネアは「フィン・フォーマルハウト」の名を持つ覚醒騎士として決勝トーナメントに勝ち残り、ビルビット・ミラーことベルベット・ラルシュに《真・鏡像残影》による認知改竄でヴァスイムとの対戦を希求する。

 《砦の男》ライゼル・ヴァンフォートが予感する奇跡。

 そして、ベルベット・ラルシュこと剣聖エドナが自身の名を冠する大会への介入に躊躇しながらも「人の可能性」として了承したヴァスイムvsコナンの一戦。

 その前の試しとしてかつてヴァスイムが殺めたアストリア大公国ホーフェン騎士団長マグノリア・ハーライトの遺児で剣皇騎士ケイロニウスとの一戦。

 遺恨を超えて覚醒した両者の激闘に会場は沸き立つが、《飛燕》と《裏飛燕》のぶつかり合いによりケイロニウスは反則負けを自己申告する。

 覚醒騎士化したヴァスイムは破天の巫女セリーナの導きにより、セカイの真理について知覚していく。

 《砦の男》ライザーとの邂逅で天技の《朧月》を持つ剣皇騎士で《電光石火》の剣聖として光の王子リシャールと共に戦うことを命じられたケイロニウス・ハーライト。

 対してもう一人の《エウロペア聖騎士》としてティリンス、セリーナやケイロニウス、リシャールと東方戦争を戦うことを命じられ、《陽炎》に目覚めたヴァスイム・セベップ。

 ライザーに語られたルーシア成立史の真実と今其処にある危機。

 次なる戦いはフィン・フォーマルハウトとエレナ・スレイマンだった。


 1188年 7月某日


 エレナ・スレイマンとフィン・フォーマルハウトの一戦をヴァスイム・セベップとケイロニウス・ハーライトは選手用観覧席で見物しようとしていた。

 決勝トーナメント進出者には選手特権と褒賞として決勝戦までの特別観戦チケットが授与される。

 エドナ杯が未熟な騎士たちの成長と可能性を促すための催しだというのは、敗退者にも見学の機会が与えられるという意味だった。

「さてどう見る。ヴァスイム」

 《電光石火》の剣聖で剣皇騎士ケイロニウス・ハーライトはたった一日にして別人のように精悍で鋭い眼光を放つようになっていた。

 二人の一戦を当然見物していた他の騎士たちが遠巻きにしているのは敗退したケイロニウスでさえ、とても自分たちが敵う相手だとは思えない畏怖と尊敬の念からだった。

 かわりにケイロニウスとヴァスイムは握手攻めに遭っていた。

 そのことにもヴァスイムは驚いた。

 握手を求める者の中にはヴァスイムが勝ち上がった先で当たる可能性のある者もいたし、反則攻撃の自己申告で敗退したケイロニウスにも皮肉ではなく、賞賛の言葉が並べられる。

 現に二人並んでいる様を見れば、両者にとってそれほど簡単な戦いではなかったのだとさえ容易に理解している様子だった。

 中にはケイロニウスの清廉潔白さと潔さは前々回大会の準優勝者ビルビット・ミラーを彷彿とさせたと賛辞する者もいた。

 勝敗の行方よりも戦いの中身に力点が置かれ、ある者にとってははっきりとした目標だとなる。

 ヴァスイムはだからこそエウロペアの騎士たちは侮れないのだとも感じた。

 決めた優劣意識の中で相手を侮ることはしない。

 次の機会はそれぞれ騎士団の中に地位を得た上での集団戦闘で実現するかも知れないし、各国に指南役を派遣するミロア剣皇騎士団ならケイロニウス・ハーライト大尉は次の機会には「ハーライト先生」として遭うことになると理解されている。

 巷間では事実上のファイナルマッチだったとさえ語られ、既に主審への自己申告でミロアの騎士であると称したケイロニウスの参戦には別の目的があったとさえ囁かれていた。

「エレナ姫に分はない。単に《陽炎》が使える彼女に勝機があるなら俺にもあるということになる。そうであってくれた方が気が楽だがそうではあるまいさ」

 《砦の男》ライザーの指南を受け、二人は《鏡のセカイ》で何度も仮想戦闘を重ねた。

 そして今から戦いに挑むエレナ、フィンともそれぞれに言葉を交わしていた。

「とても素晴らしい戦いでした。及ばずながら私も」とエレーニャ・スライムは毅然として語った。

 申告している選手プロフィールなど出鱈目だが、ゼダ皇族の血筋を受け継ぐ未来ある騎士として「エレナちゃん」「エレナ姫」という10歳の少女としての彼女の真の姿を見てこの子もいずれ化けると二人は感じ取った。

 その才はどのようなものかをフィンに試される。

「資格があったどころではなかったようですね。《砦の男》をも動かしてみせ、それぞれに《電光石火》の剣聖名とエウロペア聖騎士の称号を得ている。ダウングレードしていた実戦機による人機一体の戦いは既にエドナ杯の伝説の一部として語られています。騎士教育者としては感動の至りです」と肥満体のフィン・フォーマルハウトは屈託なく笑んで語った。 

 フィンの何気ない言葉に、そこまで気付いていたのかとヴァスイムとケイロニウスは冷たい汗を流していた。

 一方でリシャール・ルジェンテは遠目から思わせぶりな視線を投げかけただけで、二人とは握手することも言葉を交わすこともなかった。

 自分の護衛として参戦している旧知のケイロニウスへの配慮でもあり、ヴァスイムには沈黙こそ雄弁だと語ったも同じだった。

 天に護られた光の王子リシャールは王者たる品格と資質を感じさせていた。

 二人がこの先命を賭けても守り抜く価値のある青年だ。

「リシャールには分かっている。自国のルートブリッツの援護も望めない光の王子にとり、俺達こそが頼みなのだと」

 ケイロニウスはリシャールを図りかねていたのだと今更に痛感した。

 龍虫戦争で動けない《鉄舟》に替わり、アストリアの盾が光の王子をトリスタで鍛えていたのではなかった。

 ヴァスイムたち傭兵騎士団エルミタージュに蹂躙され、青色吐息の祖国フェリオを変えてみせるのは光の王子とアストリアの盾、同様に同胞を変えよと命令された聖騎士ヴァスイムなのだ。

 さもなくば広大なフェリオが「国殺し」される。

「ああ、だから凡庸な少年騎士たちとは一線を画した態度で臨んでみせた。賛辞の言葉など不要だし、改めて語りかける言葉もない。剣聖と聖騎士の性質の違いをも踏まえた上で、数少ない味方となる俺達を使いこなすことがあの方に求められることなのだろうな」

 ヴァスイムも理解していた。

 リシャールが剣皇カールの息子で終わるつもりであれば、その命を次世代に継承するだけでいい。

 だが、今は友邦であり、伯父エドラスの治めるフェリオの民衆をも動かす。

 そのためには光の王子が光の王子たることを示さなければならない。

 総参謀タタール・リッテや《軍神》ロムドス・エリオネアの蹂躙をこれ以上許すことは、フェリオの終焉とあるいはゼダの終焉をも意味しているのだ。

「その意味でエドナの試し、女神の試し、《砦の男》の試しとなったこの大会には剣皇ディーン、紋章騎士ルイス、剣聖アリオン、メディーナを輩出した前回大会と同じかそれ以上の深い意味と意義をもったものになろうとしている」

「さ、エレナ姫の覚悟の程が試される」

 名機カナリィとダウングレードしたベルグダーインの一戦が今始まろうとしていた。


 先手をとったのはエレナの駆るカナリィだった。

 いきなりの《陽炎》で距離を詰めて迫る。

「姫様、甘いですぞ」

 フィンのベルグダーインが《陽炎》の再出現地点を読み切り、構えた盾での突進でカナリィの体勢を崩しにかかる。 


 観覧席のケイロニウスとヴァスイムは戦慄した。

 剣聖ケイロニウスが《鏡のセカイ》で何度試しても《陽炎》の再出現地点は算出出来なかった。

「使える使えないじゃないっ!読み切られたら技の特性が殺される」

「技殺しの上でシールドオブイージスまで備えていたなら、どんな高度な技も無効化するぞ」

 慄然としたケイロニウスが思わず口走る。

「“騎士殺しの悪魔”。あれは剣皇たちとエドナへの嫉妬と蔑称なんかじゃないっ!アイツこそが本来の“騎士殺しの悪魔”だ」

 フィン・フォーマルハウトには扱える天技がなにもなかったかわりに、既に観測されている天技の全てを無効化する。

 それが幻の天技だろうが過去に封印された絶技だろうが関係ない。

 護りに特化したフィンの戦いとは全ての騎士天技を「殺す」という凄まじいものだった。


(ならば「お父様」の無手格闘術を試す)

 盾のラッシュ攻撃を喰らってカナリィの体勢が崩れた体を装い、エレナは構えていた長剣をわざと落とした。

 それ自体が別世界にある近接格闘術の一つであり、携えた武器を取り落とした風を装って攻撃の間合いの変化を相手に誤認させる。

 其処から繰り出す徒手空拳からの《虎砲》。

 皇弟トリエルばりの変則戦法だった。

「それも。メイル殿下の必殺の一撃でしょうが、この私にはナノ・マシンの特性変化と間合いの変化が読めます」 

 無手の《虎砲》の一撃さえ盾で軽く弾く。

 もともとルイスが使っていたときも軽真戦兵カナリィの機体の軽さはベルカと名乗っていた剣皇ディーンに軽くあしらわれていた。

(やられたっ!ルイスお姉様がカナリィで苦戦したときの再現だ。速いが軽いと読まれているならベルグ相手では分が悪すぎる)

 読まれていようがお構いなしだと《陽炎》で跳躍し、再出現地点を上空に設定する。

 それは正にマリアン・ラムジーのシャドーダーイン《紅丸》による立体戦術だった。

 上空での再出現から《飛燕》に繋げてベルグの盾をなぎ払う。

 だが、一連の連続攻撃の持つ意味をフィン・フォーマルハウトは完全に理解していた。

「怖い怖いっ。今度は隠密機動の使う立体戦術と来ましたか。己が何者であるのかを理解していなければそうは戦えませんな、姫様。ですが、リンツ・タイアロットやシャドーダーインならいざ知らず、所詮は戦技訓練用機のカナリィです。跳躍力もたかが知れていますし、アンカーワイヤーもない」

 だがそうではなかった。

 カナリィのマイスターではないがメンテナンサーとしての耀紫苑がカナリィのフルメンテナンス調整時に機体の腰部にギミックとしてアンカーワイヤーを仕込んでいた。

 右手無手の《飛燕》による払いも囮攻撃で着地と同時にアンカーワイヤーを射出して盾を狙い、すぐに全体重を乗せてワイヤーに向けて左手から《虎砲》を繰り出す。

 軽いとはいえ真戦兵一体の全重量を乗せた《虎砲》がアンカーワイヤーに向けて放たれたのだ。

 フィンが操縦するベルグの構えた盾がアンカーワイヤーに絡め取られて宙に舞った。


「見事だっ!」

 ヴァスイム・セベップは思わず席を立ち上がっていた。

「なんという華麗にして計算し尽くされた連続攻撃なんだっ!」

 ケイロニウスの賞賛の言葉は万雷の拍手と歓声とに呑まれた。

 競技会場全体がエレーニャ・スライムの見たこともない戦術と奥義の連発に鳴動していた。


「やるねぇ、エレナちゃん」

 アルセニアもヴァスイム同様に席を立ち上がって拍手した。

「テリー先輩とマリアン女史の戦術戦法を完全に消化し、自身の技とした見事な連続攻撃でコナンから盾を奪った」 

 ビルビット・ミラー少佐も息を呑み一連の高度な技の連発に酔った。

 しかし、史上最高の手合い評論家ライゼル・ヴァンフォートだけは軽く目を閉じて頭を振った。

「それがお子様騎士の集中力の限度だ。残念だが終わったな。盾を奪った。だがそれが実戦においてなんになる?ベルグの本体は健在だし、盾は拾えば良いだけの話だ。なるほど想像力や才能の生かし方には目を見張る。だが、体力と集中力は天技の連発という無茶に嘘をつき通せない。それがお前たちのようには実戦を識らないということだ」

「伯爵?」

 アルセニアとエドナはライゼル伯の思いがけない辛辣な評価に面食らっていた。

「皇の血は侮れない。エレナはそれを示した。だがそれは敵を警戒させ緊張を高めるだけの話であり、実戦の場では単純に力を使い果たして無防備な狩られるだけの人形と化しただけのこと。残念だよ、エドナ。トリエルとマリアンの血の集大成はそれを完全に発揮出来るだけの時間に恵まれなかった。長期戦を可能にする体力や集中力は厳しい鍛錬を続けた者や死線を潜って生き残った者にだけ与えられる努力修練に裏付けられた才能だということ。どんな輝かしい原石もそれだけでは容易く打ち砕かれる。それが非情な現実であり、命を奪う《ナイトイーター》との死線を潜っていないエレナに望むべくもなかった。背伸びして使った両親の得意とする戦術と戦法。最早立ち上がることさえ難しい。この勝負はこれで終わる。だが、死線を掻い潜り生き延びてきたヴァスイムにヒントだけは与えたし、後の伴侶たる光の王子に騎士戦闘のなんたるかは教えた。どんな才能にも裏打ちされるだけの時間と鍛錬が必要であり、それはミトラやディーンにも見てきた。一瞬の凌駕はなにも生まない。凌駕されて尚、何度も立ち上がり這い上がった磨き抜かれた才能の宝石にこそ勝利の美酒は与えられる。じりじりとした消耗戦や命取りあう殲滅戦を戦い抜いた者の強靱さには才能だけでは到底勝てない。目映い才能が端っからなかったフィン・フォーマルハウトの“全てを打ち砕く力”とは年齢と共に重ねて来た研鑽と、それでもなにも見つけられなかった絶望に宿る。そういう技と才に見放された男がたった一つの勝機を見出すために絶技である《アイギスの聖なる盾》と的確な予測を軸にした完全防御戦法に辿り着いた。騎士戦闘の負の面であるじりじりとした消耗戦とギリギリの回避と防御。エドナ、お前も冷静になれば分かる。お前達の鍛え上げた《鉄壁の剣聖》はコナンの同類じゃないのか?そして体力切れで容易く打ち砕かれる原石にこの俺が《鉄壁》の評価を下すとでも?まぁいいのさ。エレナはあの年で自分の限界を識ったのだし、後は単に己の身と才能と未来を“殺させない”ことに。とても退屈でとても惨めな他の者たちと同様の鍛錬にその身を預けて、苦い敗北の味を知り、それでも生き残るのに必要な体力と集中力の持続性をその身に宿すことになる。自分の息子にも自分の甥っ子にも厳しかったアリョーネお嬢は可愛い姪っ子のエレナにそれを伝えたかったのだ。ディーンとは、ルイスとは、エドナとは、カールとはそうした存在なのだとね」

「伯爵・・・」

 残酷な指摘と評価をしたライゼル自身がそうした辛い現実を一番良く知っていた。

 《神童》と称された自身や、《天才》と称されたその妻。

 《才媛》と称されたマギーや、《怪物》と称されたディーン、アリョーネとオードリーが何度も老獪な怪物たちの強かで強靱な強さを前に敗北してきた。

 敗北の度に自身の替わりに大切な仲間や肉親たちを奪われてきた。

 奢れる程の強さがあったならと何度となく嘆き、そして最後に立っていた者こそが真の強者であり、真の勝者なのだと結論し、いずれそうした存在になるのだと悔し涙と屈辱にまみれてきた。

 泥をすすり、汚辱にまみれて尚、心折れることなく毅然と前を向き続けてきた。

 如何なる現実を前にしても心折れないことが、誰を前にしても必要なとき必ず勝つという必勝の心がけだった。

 様々な者たちの思惑や期待を背にし、様々なしがらみと因習、宿命に耐え、耐え続けてきた己に誰にも否定出来ない確かな誇りと自信を宿す。

「いまだ偽りの名しか名乗れない私もまだまだ未熟者なのですね」

 ビルビットはせめてベルベット・ラルシュとして生きたいと心の底から願っていた。

 エドナの名は重い。

 それこそが名の呪いとも言うべきほどにだ。

 同胞たちから裏切り者の龍皇子だと蔑まれ、虚無感と絶望に打ちひしがれてきた。

 なによりベルベットはエドナの真実と記憶から切り離されてきた。

 ライゼルの指摘通りにエレナのカナリィに再び立ち上がる力は残されてはいなかった。

 《陽炎》連発の負担は子供には大きすぎ、カナリィは糸の切れたマリオネットのように前のめりに倒れ込み、再び動く気配はない。

「エレナちゃん・・・」

 絶句したアルセニアは目に見えるすべてを導く《砦の男》にも冷淡に見放されたエレナを想って泣いた。

「別に見放したわけでもないさ。慰めの言葉と努力の方向性はお前が教官として伝えてやったらいいんだ。行ってやってくれ“アルセニア”」

「はい」

 アルセニアは席を立ち、騎士待機所に向かう。

 アルセニアが去るのを見計いライゼル伯爵はビルビットに身を寄せた。

「それより深刻なことになったようだぞ。時間切れのようだ」

「えっ?」

 貴賓席側を注意深く見ていたライゼルは他の観客たちの異変を察知していた。

「ハニバルとイセリアの様子が明らかに変わった。おそらくは思念信号波をキャッチしたんだ。客席からセリーナの姿も消えた。つまり、ヴァスイムの存在が敵に察知され、エルミタージュの別部隊が確認のためにマルガに来たのだろう。ケイロニウスとの戦いがゼダ国内で新聞報道された。ともなれば、所属セルの安否確認と作戦計画確認のための別部隊が乗り込んで来る。おそらくそうなった」

「そういうことですか」

 ビルビットも慌ただしい気配を感じてはいた。

「それで伯爵、どのように対応されるのが良いと?」

 ライゼル・ヴァンフォートは落ち着き払った態度でそれに答えた。

「すでにセリーナには危機的事態対応の手順は伝えている。ヴァスイムを連れて逃がす。その上で、セリーナにはヴァスイム・セベップとその所属セルはリシャール暗殺作戦のためにエドナ杯にヴァスイムを潜り込ませ、セリーナに発覚してヴァスイムを含めた全員が消されたというのを事実だと思わせる。そして、ヴァスイムの経歴と容姿人となり、エルミタージュでの思念信号個体認識信号波はケイロニウスが掌握している。変装術でヴァスイム本人を演じていずれは奴等から情報を引き出したり攪乱させるのにもってこいだ。ヴァスイム本人は所属セルとの連絡は途絶えたが、セリーナの追跡はかわし、リシャール暗殺の単身潜入任務を継続していたと主張させる。真相はヴァスイム本人とケイロニウス、やがてケイロニウスから詳細を知るリシャールが把握し知って利用しさえすればいい。コナン・エリオネアにはお前から伝えろ。もともとの雇い主側にいたヤツが裏付ければエルミタージュブレインズもヴァスイムを脱走兵として追っていた事実すら、セリーナたちゼダの隠密機動隊を攪乱した上で極秘作戦計画を独自判断で実施したとみなす」

 ビルビット・ミラーは慄然となりながら《砦の男》の知謀に息を呑んだ。

「ヴァスイムの一見不可解な行動を一番ありそうな可能性に押し込めて何が何処まで事実であるかをエルミタージュブレインズに誤認させるというのですか?」

 「あるいは」と前置きしてライゼルは畳みかけた。

「ヴァスイム・セベップのエウロペアホーリーオーダーのオーダーとは自身の生死情報と実際には存在しない作戦計画を巧みに利用し、光の王子と《電光石火》の剣聖の行動を援護するというものになる。ハイブリッドとして名前と顔と素性を我々に売った。我々の方では覚醒騎士ヴァスイムとはレイスの係累であり、天技である《陽炎》を使う超一流の騎士だと把握している。それこそがヤツがヤツだというなによりの証明になる。エウロペア聖騎士ヴァスイム・セベップとは敵を攪乱し、セリーナを援護するエウロペアの生きた亡霊騎士。やがては伝説となるエウロペア聖騎士だということだ」


 結局、エルミタージュの別働隊がマルガに現地入りし、事実確認調査を行ったがヴァスイム・セベップはエドナ杯の決勝トーナメント開始時、対ケイロニウス戦、フィン・フォーマルとエレーニャ・スライムの対戦観戦時までは目撃者が掃いて捨てるほど居て確実に生存していたが、二回戦のフィン・フォーマルハウト戦は「選手本人の不在により欠場した」と確認出来ただけとなった。

 あるいは魔女セリーナはエルミタージュセルをギリギリまで引きつけた上で、囮役に利用したヴァスイム・セベッブを用済みとして消して姿を眩ませた。

 つまり、確認行動が空振りに終わり、連絡の途絶えた本国セルの状況確認をさせてその間の作戦行動を一切させない「時間と手間の浪費」こそが魔女の狙いだとも考えられた。

 東征作戦でも散々発生した未帰還セルとしてヴァスイムの所属セルは扱われた。

 それだけで終わる話なのだと彼らは考えた。


女皇歴1191年6月9日

フェリオ連邦候都ウェルリ近郊

ルーマー騎士団エルミタージュ隊宿営地


 ぼろぼろの服を着てやつれた印象の一人の騎士が宿営地に突然やってきた。

 帯剣はしていたが容姿はフェリオの戦争難民とほぼ見分けがつかない。

 おそらくは戦争難民に紛れて移動を続けてきたのであろう。

「俺の名はヴァスイム・セベッブ。エルミタージュ所属の傭兵騎士だ。隊の責任者に面会を願いたい」

 すぐにゼダ、フェリオの密偵を警戒して思念信号波に切り替える。

(本物なのか?)

(ああ、間違いなく---だ)

 ---にはネームレス同様にヴァスイムを意味する個体識別思念信号波が入る。

(死んだと聞いていたが?)

(魔女に追跡されたが逃げ出して振り切った。そして光の王子を追っている。だが、この通りで活動資金が枯渇し、数日は食ってない。相棒のリンツ・タイアロットもぼろぼろで酷い有様だよ)

(ご苦労なことだ。隊長に伝えて指示を仰ぐ)

(その前になんでも構わんから何か食わせてくれ)

 すると歩哨たちの責任者であるハイブリッドの指揮官は苦笑した。

(フェリオのメシはマズいぞ。駐留軍の俺たちはすっかり慣れているがな) 

(空腹にまずいものなしだ。腹が膨れさえすりゃいい)

(確かに。食堂に案内しよう)

 一瞬だけ背を向けた指揮官は最後の確認の為にヴァスイムを奇襲した。

 振り返り様に抜刀してヴァスイムを凪ぐ。

 だが、長剣で受け、逆手に握った短剣を眼前に突きつけられた指揮官は呆気なく両手を挙げた。

(気持ちはわかるが腹が減って力が出ない。無茶させないでくれよ) 

(間違いなく同志だ。あの動きは俺たちエルミタージュ本国セルにしか真似られん)  

 そうでもないんだがなと“ケイロニウス・ハーライト”は内心苦笑した。

 仮想戦闘時に生身のヴァスイムとも散々やりあい動きのクセは完璧に掴んでいる。

 今もヴァスイムはあたかも隣に居るように感じさせる。

 だが、今はフェリオに居ない。

 《剣鬼》たちの迎えに出るためゼダ中部のレーヌにセリーナと向かった。

 セリーナの従者として同行するヴァスイムはケイロニウスの姿をしていた。

 あの夏以来、ケイロニウスとヴァスイムは必要に応じ、容姿を取り替えて行動してきた。

 リシャールがヴァスイムを演じることもある。

 魔女と隠密行動中のヴァスイムは「相棒」をハノーバーのリンツ工房に預けた。

 ケイロニウスが先日受領し、オラトリエス新設の《閃光騎士団》リシャール隊宿営地で主を待つ、生まれ変わったヴァスイムの新たな相棒をヤツはどう見るのだろうか?

 機体改修によりヴァスイムのリンツ・タイアロットは剣皇騎士団正式配備機タイアロット・アルビオレとなっていた。

 あの夏、エレナ・スレイマンが見せてくれた幻を完全再現出来る天翔る真戦兵。

 新たな相棒と共にこの3年で磨かれた覚醒騎士ヴァスイムの見せる実力は桁外れになるだろう。

 遂にウェルリで決着をつける時が迫っていた。

 《閃光騎士団》によるリシャール・ルジェンテの一点突破によるウェルリ奪取作戦。

 後詰めで《フェルレイン》を駆る剣皇カールとフェリオのオランド公国の《ポルスカ騎士団》の部隊、そしてハルファを進発したマイオドール・ウルベイン中佐率いる黒騎士隊のアパラシア・ダーイン部隊、ベルベット・ラルシュ少佐率いる女皇騎士団漆黒陸戦隊とが広範囲に展開中のルーマー騎士団の大部隊を空と陸から奇襲して陽動する。

 凪の季節による油断と休息中とで蜂の巣をつついたようになるルーマー騎士団を“サイモン”がかき乱す。

 そうして生じた隙と穴とを《閃光騎士団》が抉る。 

 作戦成功の成否は《剣鬼》と破天の巫女セリーナ・ラシール、エウロペア聖騎士ヴァスイム・セベップ、《電光石火》の剣聖ケイロニウス・ハーライト。

 そしてあの夏のエドナ杯を制した光の王子リシャール・ルジェンテが握っていた。

 最後の詰めのため、ルーマー騎士団エルミタージュ隊の動向を確認し、偽情報を掴ませるためケイロニウスは危険を冒していた。

 いよいよ、フェリオ解放作戦は発動しようとしていた。


女皇歴1188年7月某日

マルガ競技場


「なんだか拍子抜けしちゃった。楽しみだったんだけどなぁ、ヴァスイムとコナン少佐の戦い」

「それは言うなよ、アニー。僕だって残念なんだからさ」

 アルセニアとビルビットは選手不在によるヴァスイム・セベップの失格敗退のアナウンスを聞いて残念そうな顔を見合わせた。

「残ってるのは殿下と少佐だけか」

 ビルビット・ミラーは寂しそうに俯いた。

「殿下が勝つさ。それもエレナちゃんが残したヒントの通りにすれば容易く勝てる。積極的に攻め、天技を使わず勝敗を判定に持ち込む。少佐は強敵相手には完全防御戦法なのだから、判定になると途端に不利になる」

「そういうことかぁ」

「それにシールドオブイージスは見せる機会も相手も居ない。エルミタージュに踏み込まれているのに見せるわけにも行かなくなった。ヴァスイムの件での偽証協力に行ったついでで、エドナ杯での披露は禁止してきた。逆に伯爵からは《真・鏡像残影》で《砦の男》としての記憶を忘れているという措置を依頼されたよ。解除キーワードは“龍虫”。つまり、大会終了を見計らってパルムに戻るけれど、西に赴くまでに万一敵に捕捉拉致されても《砦の男》としての伯爵はそもそも居ない。捕らえられても知らない事はなにも言えない。それが良いと思うので早速やってきた。僕らもだけど、伯爵も機密と現状とをいろいろと知りすぎてしまっている」

 つまり第三幕序盤でのライゼルの不可解な言動は嘘ばかりではない。

 エドナ杯の始まる前の7月初頭のトゥドゥールとの極秘会見時は狸親父だっただけで、その続きと内容を語る際はまさに《砦の男》だった。

 そして、大会終了後の家族との団らんや西への移動時については《砦の男》としての自分を記憶操作で消されていた。

 それがメリエル、ナファドとの対面時に自分自身の口から出た「龍虫」というキーワードで解けた。

 《砦の男》としてでなく「十字軍戦争」という故事についての理解で、それが龍虫の仕業だというのは国家要職者の常識の範疇で知っていた。

 情報統制下でパルム以東では普段の話の中で龍虫のことは絶対に語られないし、万一緊急時に聞けば自動的に解除される形にしたのだ。

 だから、その機会以前のライゼルと以後のライゼルとが別人のようになったのだ。

 頭が冴えないとか情勢が繋がらないとボヤいていたのは自分の中の認知が操作されて、決定的な記憶が制御されていたからだった。

「エドナの面目躍如だね。ビリー」

 アルセニアは少し嬉しそうに笑って続けた。

「騎士教育者としての私の面目躍如もしたわよ。エレナちゃんは伯爵の言いたかったことは全部分かっていたし、アタシの腕の中で泣くだけ泣いたら少しだけスッキリしたって言ってた。一瞬の凌駕を生んだ自分の才能を信じて精進するって。思い通りに戦えたとき、本当のご両親と会場で見守ってくれている仮のご両親に産んでくれたことと、育ててくれたことに心から感謝したってさ」

 ビルビット・ミラーはアルセニアに笑顔で笑いかけるべきところなのに、目を閉じ思わず天を仰いで大きなため息をついた。

「強いなぁエウロペアの騎士たちはみんな。僕を理解しようとしてくれる騎士たちは僕が本当は何を伝えたいかを理解してその為に頑張ってる。嘲笑う者たちが気にならなくなるぐらいに、彼ら一人一人の思いがまぶしいよ」

 憂鬱そうなビルビットにアルセニアは目一杯の笑顔を贈った。

「だから光の剣聖なんでしょ。私の中のエドナも嬉し泣きしてるよ。遂に報われたって、裏切り者の汚名を背負っても全身全霊で頑張って伝えようとしてきて本当に良かったって」

 その言葉にビルビットは顔を伏せて思索を巡らせた。

 《砦の男》、《黒髪の冥王》と比べまだまだ自分は未熟者だ。

 騎士の技と能力とを全て捨てた《砦の男》と、技に頼らない《黒髪の冥王》。

 だがアウグスト・ブランの娘たちからエドナの理想を聞いていてもその心を蘇らせるまでには至れていない。

「エドナの名前の重さに苦しんでるんだよね?それにエドナと呼ばれながらエドナの偉大さが分からないことにも」

 アルセニア・アウグスト・ブランはベルベット・ラルシュをまっすぐに見据え直した。

「アニー・・・」

「それこそがエドナの望みなのよ。貴方は一人じゃない。もう一人で苦しみ傷つき孤独の中で絶望と焦りを感じなくていい。龍皇としても龍皇子としても貴方という存在は誇り高く高潔で常に種の未来を見据えて戦い、間違いを犯してなお歩むことをやめなかった」

「・・・・・・」

「貴方は貴方らしく戦うべきだということ。名無しの存在という逃げ道が許されないところであえて私たちは“名の呪い”に翻弄されることを選んだ。そしてエドナは私と貴方の二人揃ったときにその真実が浮かび上がる。だから、誰かが貴方をエドナと呼んでもそれは貴方のことなんじゃない。私かティリンスと貴方の対の名よ」

 エドナの能力持つベルベットと、苦悩と後悔に満ちたエドナの記憶を持つアウグスト・ブランの娘たちの対。

「そうか・・・僕は一番肝心なことを忘れていた」

 ベルベット一人にエドナの名が重すぎたのはアウグスト・ブランの娘たちと二人揃ってエドナだからだった。

 一人には重すぎて当たり前だった。

「貴方はベルベット。エドナの技を受け継ぎ未来を切り開く人。私はその支えとなるため、赤の他人の異性としてエドナ・ラルシュがどれほど魅力的で豊かな心を持っていたかを貴方と他の誰かに説く役。でもね、一人の女としてはエドナ・ラルシュにそれほど魅力は感じないわ」

「?」

 アルセニアがなにを言いたいか全く分からなくなりベルベットは一瞬呆然となった。

「完全無欠じゃなくてエキュイムと対騎士戦闘の解析にばっかり夢中で、優柔不断で、平べったく自分を蔑む“人間薄焼きせんべい”の貴方が好きよ。ティリンスは陛下が好きで陛下の為に戦って死にたいと思う子。だけど、騎士教育者としての私の本質はティリンスのように技や生き残り方を教えることじゃない。騎士としての心のありようを教え諭す役なの。傷つき泣く子たち、宿命に苦しみ押し潰されそうになる子たち、頑張っても報われない子たち、そういう子たちの支え」

 確かにそうだとベルベットは思った。

 そっくりに見え、周囲には双子姉妹、破壊王シスターズで押し通すアルセニアとティリンスはベルベットに言わせると別人だった。

 ティリンスの持つ野生動物のような強靱な強さと繰り出す技にある美しさ、そしてユーモアと勘働き。

 対してアルセニアは繊細で他人のためによく泣くし、実はティリンスほど俊敏ではない。

 決定的な違いはティリンスは心の底から戦いを愛している。

 たとえ相手がかつての同胞たちであろうと臆したり悩んだりはしない。

 騎士として戦いの舞台で舞ってこそ自分自身が光り輝けると思っている。

 対してアルセニアは人が傷つくことが嫌いだが、戦いの現実から目を背けることはもっと嫌いなのだ。

 だから率先して勇敢に戦う。

 そんなアルセニアに対するベルベットの抱え持つ「愛しさ」をいつまで隠し通せるかと思ってきた。

 あるいは《銀髪の悪鬼》としての自分には破天荒なまでのティリンスの強さが必要なのかもしれないのだと。

 ディーンと同じ選択をするべきか、本当に身の丈に合う女性を選ぶべきなのか?

「ナダルのようにレイスそのものになれてもあの子には本当の愛と優しさが必要だった。孤独な紫苑のために一晩中ついていてあげられる子。もともとジェラールは龍皇子の愛妾で切れ者だった。なのに敢えて男の姿で生まれてきた。それにも意味があると思う。きっと私は皆が死んでいくのを見送る役なんだって前から少し思ってた。先に逝くよりその方が辛いのだと“狂犬”が言ってた。ティリンスより鈍臭い私は、あの子のように思っていることをスラスラ喋れる方じゃない。言葉に詰まり、胸が詰まり、思うように伝えることが出来ない。そんな私だからエドナの本質である貴方が決して器用な人でも完璧な人でもないと知り、そして強くない迷える貴方を愛してる」

 女性から男性への勇気のある告白。

 だが、場所も雰囲気も適切でないにも程がある。

 人の大勢居るスタジアムでする話じゃない。

 いや、アルセニアはベルベットが自身にとり都合の悪い部分を聞こえなかったと言えるよう敢えてこんな場所を告白の場にしたのだ。

「アニー、ありがとう。だけどどうして今まで黙っていたんだ?」

 アルセニアは半泣きになりながらニッコリ微笑んだ。

「私も迷ってたの。ティリンスに貴方をとられたくない。だけど選ばれなかったティリンスをひとりぼっちにするのも嫌だった。ティリンスのことも大好き。本当の妹みたいに思ってきた」

 今は遠くバスランで戦うティリンスを思いアルセニアの視線は遠く西を見た。

 そして、目を細めて試合の再開しそうな競技場に視線を向け直した。

「でもマルガ競技場はエドナ杯は奇跡を作り出す舞台みたい。ヴァスイム・セベップを見てこの子がティリンスが感じていた貴方に対する物足りなさを埋め合わせる戦士なんだって確信したの。だから、いずれは私でさえ感じていた縁の力が二人を運命的に出会わせる。なぜってそれはね。私よりティリンスの方がナダルの才能を魂を愛していた。女皇家の望まれない皇子の血脈である真のレオハートを持つナダルとヴァスイムはとても強いわ。かつての私たちにとってもとても強かったし、私は身震いしたけれど、ティリンスはいつでも果敢に挑んでいた。殺されてもいいと思えるほどに愛していた敵だったのよ」

 因果は巡り、その魂のルーツをボストークとエカテリーナに持つ子としてヴァスイムは両親の愛したエウロペアに帰ってきた。

 偽りの女皇家の騎士で隠密機動として過ちを犯し続けた真の女皇家の連枝としてナダルはナダルの仕事を完璧にやり遂げる。

「そういうことなのか・・・だから、君はなんとしてもヴァスイムを殺さないようにと願い僕やセリーナを動かしたのだね?」

 アルセニアは快活に笑ってみせた。

「ええ、そして貴方には私がついている。貴方の重荷やどんな間違いも罪も一緒に抱えて生きていくわ。だけど貴方の女になるのはまだずっと先。大好きなティリンスが大好きなアリョーネ陛下の為に力を尽くして戦争を終わらせるまでは、私は死ねない。貴方も死なせない。それが私が私に課したオーダー。大丈夫、思いの力は奇跡を起こし、なんの才能もなく技を技として完成させられなかったフィン・フォーマルハウトみたいな人を作り出したのだし、私はティリンスより弱いけど、運の強さと生き抜く力には自信があるわ。生き抜くということは、逝った人たちの想いを伝えていくことであって、私は嫌だと思うくらいにそれに恵まれているだもの」

 本当は抱きしめてキスしたかった。

 けれど、他人の恋愛事情に干渉したこともあるベルベットには出来なかった。

 最終剣皇と呼ばれるベルベット・ラルシュとそのパートナーとなるアルセニア・アウグスト・ブラン。

 その実、二人の絆は400年も昔から続いていた。


終章 マルガとエドナ 


 光の剣聖エドナ・ラルシュは死の床についていた。

 寿命が尽きかけていることは自分でもよく分かる。

 そして、その胸を埋め尽くすのは歩いてきた道程だった。 

 妻のクラリスは苦しげに呻く夫の手をそっと握っていた。

 龍皇子エドナに従い戦ったネームレスコマンダーの乙女。

 ライザー・ウェルリフォート選王侯爵はネームドへの帰化を決意した龍皇子に「エドナ・ラルシュ」という名を与えた際に、エドナに倣いネームドへの帰化を決意したネームレスコマンダーの乙女にも「クラリス・アウグスト・ブラン」と名付けてくれたのだ。

 クラリスやファーンと「ボルニア戦役」を共に戦い、ラムザール公が用意してくれた租借地セスタにファーンが隠棲するとエドナも仲間たちと移り住んだ。

 クラリスはネームドへの帰化を受け入れたが、クラリスの血族たちは「名の呪い」を嫌いネームレスのままエドナと行動してきた。

 彼等はクラリスの一族という意味でアウグスト・ブラン氏族と呼ばれるようになる。

 ネームレスコマンダーという戦士階級だというのに気性が穏やかでユーモアのある彼等はネームレスのままセスタに暮らすネームドの人々と打ち解けていった。

 彼等も龍虫大戦、十字軍戦争、ボルニア戦役では勇敢で冷酷な戦士たちだったが、ボルニアの地に法皇国を興したという誇りと、ファーバ教団の教えてくれた「祈る」という行為により心の安寧を得ていたのだ。

 ボルニア戦役の後、成立したミロア法皇国にゼダ女皇国からダイモス・エクセイル侯爵という青年が外交官一族として家族を連れて赴任し、ミロアとゼダの外交交渉窓口となり公都トリスタ改め法都ミロアに永住した。

 法都にやってきたダイモスは家祖から真史と儀典史を綴るよう命じられた《真実の鍵もつ一族》の長であり、ネームレスたちが見よう見まねで祈る様を見て仰天していた。

 最初はラムザール公の命令で危害を加えるなと命令されていたこともあり、緊張し警戒していたセスタに暮らすネームドの人々も、身振り手振りで積極的に交わろうというアウグスト・ブラン氏族たちを受け入れるようになっていった。

 そのうち漁や農業を一緒にやるようになった。

 それぞれの力を生かし、一緒に生きる仲間となりやがては・・・。

 いずれネームレスとネームドの交配種が生まれると思っていたエドナはまさか第一号がファーンになるとは思っていなかった。

 まだ若い半妹ソシアを長年来の部下ディーター・ルフトーに託し、ゼピュロスと共に国許フェリオに返したファーンは寂しそうにしていた。

 その少し前からファーンはクラリスの遠縁にあたるネームレスの少女から熱烈に慕われるようになっていた。

 覚醒騎士であるファーンには目元が少しだけソシアに似ているその子の考えている事は分かるらしい。

 その一方で少女の方はファーンの思念が近づかないと分からないらしく、ファーンのおでこに自分のおでこをくっつけたり、背中あわせになったりしていたが、乙女といって良い年になっても相変わらずそんな調子で纏わり付いていたせいで、遂にデキてしまったらしい。

 大きなお腹をした彼女と共に照れ臭そうにエドナとクラリスに詫びに来た中年男のファーンにエドナはほっとした。

 ファーンの子を産んだネームレスの乙女の名は「ナディア」としてエクセイル侯爵が真史に遺した。

 そしてファーンの子はネームドとネームレスの共生の象徴であるハイブリッドとなる。

 しかし、エドナは表情を曇らせる。

 息子ファーンが掴んだささやかな幸せを伝えてやりたいアルフレッドが消えてしまった。

 弟に対する弟の惨い仕打ちに対してもエドナは怒れなかった。

 「ハルファの戦い」でリュカインのシュナイゼルを庇ったサウダージ・ネオンの搭乗席からエリンの遺体が消失したとき、大きなお腹をしたリュカインは人目も憚らずに泣いていた。

 龍皇子としての力を行使したことを後悔したのはエドナにとってそれが初めてのことだった。

 アルフレッドの真意がエドナと分かり合いたいという事と、エドナの望む龍皇家再興の願いは叶わない。

 何故ならば・・・とアルフレッドが続けた内容にエドナは絶句した。

 確かにそれだけは出来ないことだったし、自分がなんのために犠牲を払ってきたかを思ってエドナはがっくりと膝をついた。

 あまりにも申し訳がなくてネームレスのリーダーとしての不甲斐なさにエドナは自ら率先してネームドへと帰化した。

 エドナが再興しようとしていた龍皇家からまた一人減ってしまった。

 その後、リュカインはエドナを少しも責めることはなかったが、エドナの前ではいつも少しだけ表情を曇らせていた。

 大戦でエウロペアに定住した龍虫たちを駆逐する十字軍の戦いに際し、リンツ工房から使徒真戦獣ベーセ・ルガーを受け取ったときにエドナはリュカインが迷っていると感じ、何故迷うか聞いてしまった。

「これに乗れば私はエリン様や夫と同じことになる。使徒は人の心の檻。ふたたび祈り子として天ノ御柱で願い続けることも出来る。けれど、私はまた祈り子として苦難する人々を見ているだけしか出来なくなる。ソシアを産んでみてわかった。私の思いは私の子らに受け継がれていく。この魂は人の中に受け継がれていく。あるいはそれが正しい選択なのかも知れない。ベーセ・ルガーは私が乗り込まなくても私の心を理解して私を助けてくれる」

 そしてエドナの目をまっすぐに見て言った。

「エドナ、貴方も使徒と関わってはダメよ。アルフレッドやエリン様のように乗り手や祈り子として選ばれることは光栄なこと。けれども強力な力を持つ人をシの国の者たちは封じたいと考えている。使徒とは始徒であり、シの国のシ者。夫アルフレッドは“使徒使い”だった。ゼピュロスもフォートレスもアルフレッドを認めた。けれど罠だった。貴方の二人の弟たちが、かたやフォートレスに取り込まれ、かたやそれに手を貸してしまった。そのことにも使徒である御柱が関係している。クラリスからネームレスコマンダーの“個体融合”は聞いた。それも罠なのよ。貴方も乗れば使徒に取り込まれてしまうかも知れない。貴方は人としてあるべき人。紅の剣聖として少し先を行くミトラの背を追って、光の剣聖として理想を求めて足掻いてみせて。それが御柱を壊した貴方の贖罪。ゼピュロスはファーンとはずっと共に戦いたいと考えている。あの子は特別なのでしょうね」

 その言葉にもエドナは衝撃を受けた。

 そしてネームレスたちに使徒を使わせてはいけないと考え、自分にどうにかなるグレイテルと二体のヒュージノーズをネームドに預けようと考えた。

 ライザー候はグレイテルには《轟天》と、二体のヒュージノーズには《銀翼のロードス》、《ブリュンヒルデ》と名付け、ヒュージノーズたちはリンツ工房で飛空戦艦に改修させた。

「使徒は寂しがり屋で孤独を嫌うのかも知れない。だとすると大勢が乗り込む形であれば、契約者を作ろうとか祈り子を求めようとは思わなくなるのかも知れない。飛空戦艦もまた使徒たちだが、人を呑み込んだという話は聞いたことがなく、真史にも記録がない。轟天はその心が求める姿になれるまではある人物に預かって貰う。私の古き友人だよ」

 そう言ってライザー候が引き会わせてくれた人はエドナの良く知る人物だった。

 エドナは名付け親であるライザー候が《砦の男》と呼ばれることと、おそらくはと称するその男と同様に時を超えて繋がり続ける絆があるのだと察した。 

 その後、使徒真戦獣ベーセ・ルガーは引き続きシュナイゼルで戦うリュカインと共にあり、幼いソシアを守るためなら狂ったように戦った。

 「狂戦鬼」というベーセ・ルガーの不名誉な二つ名はそのときついた。

 “黒豹を従えし者”というのが風の剣聖リュカインの真実だ。

 使徒使いは使徒に乗る必要はない。

 長い年月が《黒豹》という印象の強い部分だけを残してしまった。

 しかし、エドナはペーセ・ルガーのまごころを知っていた。

 女神とその血脈を守ることこそが使命であり、誇り高き者。

 ソシアも立派に成長し、十字軍戦争の終結によりリュカインがルジェンテに再嫁すると決まるとライザー候はポンと手を打った。

「轟天とフェンリル、ベーセ・ルガーは折角だから一緒にしておいてやろう」

 そうして三体は一つところに置かれた。

 それがマルガ離宮にある地下施設だった。

 そうか母がついているなら安心だなとエドナは胸を撫で下ろした。

 後の時代の技術により生まれ変わった轟天はフェンリルやベーセ・ルガーを搭載出来る形となった。

 そして轟天はエウロペアネームドに力を貸して、彼等にとってかけがえのないものを作るのに協力した。 

 龍虫大戦と呼ばれた戦いのはじめに、龍皇子エドナはマルゴー侵攻に際してアテナイにある天ノ御柱を壊してしまった。

 それで風の剣聖リュカイン・アラバスタは女神の剣聖、復讐の乙女としてエドナを許さないつもりで戦いを挑んできた。

 しかし、先に御柱の戒めを解かれていたエリンに師事し、色々と思うことが多かった様子だ。

 マルゴーとマルガの真実やメロウとアリアドネの所在と正体を知り、アルフレッドは自分もゼダの皇子として深く苦悩した。

 少しでも心を軽くしたいからとリュカインはアルフレッドをそっと抱いた。

 そしてソシアを身籠もった。

 しかし、ウェルリに成長した息子ファーンが居ると知ったアルフレッドは更に苦悩するようになってしまった。

 そうしてアルフレッドは少しだけ狂ってしまったのかも知れない。

 「ハルファの戦い」を前に重責と罪深さにアルフレッドの精神は変調してしまった。

 《真・鏡像残影》を受けて敵味方の識別を狂わされたアルフレッドのフォートレスはエリンのサウダージ・ネオンに斬りかかったとされた。

 続いてリュカインのシュナイゼルに・・・。

 エドナだけが知っていたのはアルフレッドは恩師エリンを恨み、自身を誘惑したリュカインを恨み、わかっていて二人を襲った。

 龍皇子エドナの放った《真・鏡像残影》はアルフレッドの敵味方識別を変えたのでなく、抱えていた不安と苦悩と罪悪感を増幅させたのだ。

 だからこそエリンの末路に哀れなアルフレッドが呆然となる様や泣くリュカインに本当の事は言えず、《真・鏡像残影》で狂ってしまったアルフレッドのこころを元に戻し、真相の持つ罪の意識が少しでも軽くなるようにした。

 それが正しい使い方なのだとも悟った。

 正気を取り戻したアルフレッドはエドナに真実を伝えた後、落胆するエドナにとっての初めての親友となった。

 十字軍戦争は苦渋には満ちていたが、エドナに生きることの難しさと、だからこその喜びや、人と共に歩むことの愉しさを教えてくれた。

 だからこそ、パルム平原で手を取り合おうとしたアルフレッドと弟を喪失したときに耐えられなかった。

 意地になってボルニアに籠もったエドナと同胞たちを救ってくれたのは、親友の息子であるファーンだった。

 夏の風が窓から吹き抜けていく。

「罪深き人生だった。ネームレスとしてもネームドになってからも。しかし、アルフレッドやファーンが救ってくれた。一人で思い悩むよりも誰かと共にあることが大切なことなのだと気づかせてくれた。そしてお前だよクラリス」

 エドナは自身と共に老いたクラリスの皺深い手を握り返した。

「私に悔やまれるのは女神マーガレット・アテナイに詫びることが出来なかったことだ。御柱を壊したことも、女神エリンシア・バルサを助けられなかったことも、真実を伝えられなかったことも、アルフレッドがあんなことになってしまったことも、過酷な運命に翻弄されて私よりも先に逝ってしまったこともだ」

 ずっと黙って聞いていたクラリスは真夏の強い日差しの中をそっと吹き抜ける風の中に、風の剣聖として生きて死んだリュカイン・アラバスタあるいは女神マーガレット・アテナイの思いやりを感じていた。

「貴方の罪と後悔とはこれからも共に背負っていきましょう。ネームレスたちの種の記憶と貴方の後悔は私が引き受ける。何度生まれ変わっても私は貴方の隣で支えます」

 クラリスの言葉にエドナは一筋の涙をこぼしていた。

「ありがとうクラリス・・・」 

 そうしてエドナ・ラルシュは波乱の生涯を閉じた。

 8月13日のことだった。

 クラリス・ラルシュは夫エドナの死を伝えるため、法都ミロアにファーン・スタームと共に赴いた。

 ミロア法皇ラウダ・エンリケはエドナの功績に感謝して十字を切り、その死を悼んだ。

 ダイモス・エクセイル侯爵はラウダに倣い十字を切った。

「夫の遺言は今は亡き風の剣聖リュカイン・アラバスタ卿と女神マーガレット・アテナイへの贖罪でした。生前詫びることが出来なかったと悔いておりました」 

 その言葉に法皇ラウダは驚愕した。

「リュカイン様にエドナ様が詫びることなどあったのですか?」

 クラリスは詳しいことまでは皆まで言ずにコクンと頷いた。

 ダイモスはエドナの贖罪について察しをつけた上で提案した。

「エドナ様がマーガレット様に詫びたいというなら、女神の都マルガにてエドナ様の名前を冠した若手騎士たちの登竜門として手合い大会を実施するというのは如何でしょう?幸い我が旧都マルガには広い練兵場跡地が残っておりますのでコロッセオとして改修し、5年に一度の夏に開催する。決勝戦はエドナ様のご命日である8月13日とし、賭け事として認め、観客を集めて開催する。そうして集まった資金を難民救済のためのエウロペア復興財源とする。マライア陛下(サーシャの次代女皇)から大戦と十字軍戦争、ボルニア戦役で疲弊したエウロペア各国を盛り立てる何か妙案はないだろうかと相談を受けておりましたが、原初の都で開催されるエウロペアの騎士たちを集めた大会。剣皇ファーン陛下にはフェリオ連邦を含めた各国にその呼びかけをして頂く。戦乱の時代の終焉とこれから予想される次なる戦いへの準備としても、定期開催される催しは人々の楽しみとなり、人々と収益が集まることは我がゼダにとっても各国にとっても励みになろうかと思われます。マルガで行われるエドナ杯」

 ファーン、クラリス、ラウダはダイモスの聡明さと提案内容に舌を巻いた。

 まるで先年没したライザー・ウェルリフォート侯爵の遺志を継ぐかのような見事なアイデアだ。

「確かにその通りだ。今こそ戦乱に荒んだエウロペアの人々を勇気づける催しが必要だ。ライザー様の奇策であるミロア法皇国の成立こそがファーバ教団再生への道となり、ボルニアを復興させつつある。マルガとて大戦と十字軍戦争で荒れ果てた。実に面白い。流石は始祖シンクレア様の後裔たるエクセイル候だ。既に帰国している剣聖たちに打診し、各国騎士団に呼びかける役は私が引き受けよう」

 ファーンに続き、法皇ラウダもこの提案に賛成した。

「遺恨の生じぬよう各国騎士たちは国籍を伏せて偽名で参加し、刃引きしない武器による手合いとして人々の眼前で技を競う。大会で結果を残した優秀な人材は各騎士団が引き受ける。正に光の剣聖の名に恥じぬものとなりましょうぞ」

 クラリスはそれこそが亡き夫の真意に叶うものだと涙を流した。

「メロウ様、アリアドネ様、マーガレット様の御前で若き騎士たちが腕を競い合う。光の剣聖として天技を纏めていた亡き夫もさぞやさぞや・・・」 

 その後を言葉に出来ずに泣き崩れたクラリスをダイモスが優しく支える。

「戦乱に散った者たちの無念を晴らし、これから生まれ出る若き騎士たちの目標。その道標となるのはアルフレッド陛下の朋友でファーン陛下の片腕であったエドナ様しか考えられません」

 エドナ杯開催を提案したダイモス侯爵の後裔が後の時代に剣皇エセルの夫となるギルバート・エクセイル1世公爵であり、ディーンの名は偉大な先達ダイモスに由来しており、ディーンの描いた「黒き森の鎮魂歌」に冥王“ダイモス”・グレイヒルが登場するのも偶然ではない。

 ラウダ法皇の後裔がサマリア・エンリケ法皇となる。

 そしてファーン、リュカイン、ライアック、ソシア、ファルケンといった剣皇剣聖の後裔たちがエドナ杯の舞台で活躍していった。

 無論、エドナの後裔ベルベット・ラルシュも・・・。

 天寿を迎えたクラリスの魂は400年を経てアルセニア・アウグスト・ブランに受け継がれた。

 若き騎士たちがしのぎを削り、技を競い、絆を結び、大きく成長する場。

 それが亡きエドナが知らなかったエドナ杯の秘密であり、その実さいごの夏を見守ったのは、《砦の男》ライゼル・ヴァンフォート伯爵、聖騎士フィンの誕生を見届けるためリリアンから離れていた女神マーガレット・アテナイ、ミュイエ妃としてリシャールやエレナを見守った女神ウェルリッヒ・ミューゼ、遠くモスカからヴァスイムの勇姿を見守った女神エカテリーナ・エルミタージュたちであり、残念ながらその目で見届けられなかった女神オリンピア・パルマスこと女皇アリョーネもアルゴ、オリビア、ビルビット、アルセニアの視察報告に満足した。

 結果ではなく過程、ひたむきさ、騎士道精神、絆が大事なのだというエドナの想いは確かに光の剣聖の導きに従った者たちのこころに刻まれたのだった。

              (さいごの夏の少年少女たち・・・とオッサン 完) 




 


      

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