第132話 サイクロプス
オルトロスを倒した後に色々と聞かれたりするのが面倒だったから、皆が混乱している内にやって来た第一ダンジョンは、迷宮になっていた。
石造りで足元もしっかりとしているが、問題は魔物の気配を感じられないと、曲がり角でいきなり鉢合わせすることになる。
それを防ぐため、ユウ姉ちゃん達に気配の感じ方を教えながら、迷宮は俺も始めてだから一緒に迷宮での気配の感じ方を練習して進めている。
もう一つ、入った時に心配だった槍の扱いも、天井や壁があっても当てたりすることもなく問題ないようにあつかっているからすげえよな。
何度か突然の鉢合わせにバタバタしたが、一階層、二階層と進む内に、流石渡り人と思える上達ぶりで、不意打ちはほぼなくなった。
そして三階層を超え、四階層に入ったところでそろそろ引き返さないと、このダンジョンで夜営になるんだが、小さな部屋を見つけ、戻るのも面倒だとそこを拠点にしばらくもぐり続けることにした。
「ケントったらどうせ戻って色々聞かれるのが嫌なんでしょ~」
「おう、まあな、面倒だろ? おっし、土魔法で壁を作ったんだが、こんなもんか?」
小部屋の入口を土でしっかり蓋をするように壁を作り、コンコンと叩いてみるが、石と変わりないほどの固さがありそうだ。
「ん~、良さそうだけど、小さな隙間を開けておいた方が良いかも。気配は分かるだろうけど、音も聞こえた方がいいでしょ?」
「それに酸素が心配だから、上と下に隙間があると良いかも。火を使うなら煙を抜く穴もだし、二酸化炭素も抜けてほしいしね」
アンラの言う音も、ユウ姉ちゃんの煙抜きも分かるんだが、にさんかなんとかはよく分からん。
まあ穴を上と下にも開けておくか。
その日から階層を進みながら、その階層にある小部屋を夜営場所にして、何だかんだで十日ほどダンジョンにもぐっているんだが、なんで三十四階層までしか行けて無いんだ?
今俺達がいるのは四十階層のボス部屋前だ。
ここに来るまでも、そう苦戦はしてないし、長年突破できてなかった三十階層のミノタウロスも、デカいだけで動きは鈍く、苦労するほどでもなかった。
俺とアンラだけでも、ユウ姉ちゃん達だけでも余裕で倒せたくらいだからな。
その後も、兄ちゃん達は食料不足と言ってたが、三十階層以降も食べられる魔物が結構いたから俺達はそんなこともなく、ここまで進んでこれた。
まあ、そろそろ塩や調味料の類いが減ってきたから、この階層で引き上げるつもりだ。
「んじゃ、準備は良いか? 扉の彫り物じゃ何か分かんねえな、眼が一つ彫られてるだけだしよ」
両開きの大きな扉の真ん中に一つだけ眼が彫られていて、俺達を睨んでいるようにも見える。
「ん~、そだね~サイクロプスくらいしか思い付かないけど、とりあえず入っちゃおうよ」
「おお! サイクロプスですか! 確か単眼の巨人ですよね! みんな、頑張ろうー!」
「「
アンラの予想したサイクロプスとか言う単眼の巨人か、どんな強さか楽しみだな。
扉にてを添えて、グッと力を込めると、重かったんは最初だけで後は勝手に開いていった。
そして開いた先に見えたのは――。
『予想通りサイクロプスです! ミノタウロスと同様に動きは遅いですが、防御力と攻撃力は桁違いです! まずは足を止めましょう!』
「おっしゃっ! 俺とアンラは右足だ! ユウ姉ちゃん達は左を頼む!」
「「
俺達は二十メートルくらいある高い天井で、相当広い百メートル四方はありそうな部屋に走り込み、二手に分かれ、部屋の真ん中にデカいこん棒って言うより大木を持った、十五メートルは背の高さがあるサイクロプスに向かう。
俺とアンラはクロセルとダーインスレイブに魔力をこめて、俺が足首を、アンラは膝へ向けて横薙に振り抜く。
ユウ姉ちゃん達はこのダンジョンの途中から持ち変えたハルバードをぐるぐると回転させ、一番速度が乗ったところで前後左右から五人同時に足首へ打ち込んだ。
「グボガアァァー!」
ズバッ、ズシャと断ち切る事はできなかったが、そこそこ効いたようだ。
ズズンと立っていられないサイクロプスは、たまらず膝をつくが、アンラが膝に一撃してあるため、そこでも踏ん張りきれない。
斜めに倒れかけた体を支えるために、大木を手放し四つん這いになった。
「畳み掛けっぞ! しゃっ!」
俺はサイクロプスの足からクロセルと解体用ナイフでサイクロプスに突き刺しながら背中に登る。
四つん這いになったが高さは五メートル近くある背中を走り、心臓めがけて高く飛び、全開まで魔力をこめたクロセルで心臓めがけて背中に――。
アンラは腹の下に入り込み、右から左に向けてダーインスレイブをサイクロプスの腹に――。
ユウ姉ちゃん達は頭に回り込み、戦斧に持ち変えて低くなっていた単眼に――。
突き刺し、切り裂き、叩き込んだ。
「倒れやがれ! くぬっ!」
アンラは腹を切り裂いてサイクロプスの下からはすでに出て、少し離れたところでこっちを振り向いた。
ユウ姉ちゃん達のハルバードは五本ともデカい単眼に刺さったまま、後ろに飛び退いたようで、こちらも離れたところで俺を見ている。
俺はクロセルをさらに無理矢理押し込んでやった。
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