第124話 アンラの宝探し

 王様の執務室ね、難しそうな書類が机いっぱいだし、こっちの棚には……へぇ。中々良さそうなお酒を飲んでるわね~、これももらっちゃいましょう。


 執務室、その向かいの部屋は本がいっぱい詰まった本棚が立ち並ぶ部屋で、もちろん本棚ごともらうわよ?


 それよりなんでこんなに金ピカなお城なのよ。

 どこ見てもって廊下まで金に銀に宝石でしょ~、こんなにお金持ちなのに態々わざわざ戦争するなんて何考えているのかしら。


『アンラよ、その辺りも持っていけば良かろう。戦争には相当な資金が必要となる。元手が無くなれば戦争どころではあるまい』


『ん~、そだね~。面倒だしお城ごと収納しちゃう? 結構魔力も戻ってきてるしできると思うんだ~、せ~の――』


『待て待て待て待て! ってああー!』


 ダーインスレイブなにか言ってるけど待たないもーん。


『収納!』


『だぁぁぁー! 人は落ちてすぐ死ぬぞ!』


『浮遊~。きゃははははは♪ ほらほら見て見て、みんな半裸で空を泳いでるみたいだよ~』


 お城を収納した後、床が無くなるわけだから、来ている服は残して……魔道具はもらうけどね。

 すると人は浮いてられないから落ちるんだけど、ちゃんと浮遊をかけてゆっくり下ろしてあげた。


『ぬっ、アンラよ中々分かっているではないか、だが城内は何も無くなったように見えるが、何ヵ所か地下があるようだぞ。地下にも宝物庫や武器庫、それに酒蔵があるだろう』


『酒蔵! その通りよ! 行くわよダーインスレイブ、そりゃ!』


 言われるまでもなく、収納した後すぐに見えたから、もちろんそのつもり。

 いきなりお城がなくなり、ちょっと空中遊泳して、茶色になった地面に下ろしてあげた人達は混乱しているみたいで、わーわーきゃーきゃーとうるさいけれど、まずは一番大きな階段に向かって下りていく。


 その階段からはバラバラと、十人足らずの兵士が出て来ては、お城が無くなっている事に驚き、固まってくれている。


 その横に着地して、武器や防具を収納していっちゃうの。

 次々と収納しながら階段に向かい、光の魔道具で照らされた階段を魔道具を回収しながら下りていく事にした。


 階段の先には四人の兵士がいて、次々と消えていく灯りに驚いているみたいで、腰の剣を抜きキョロキョロと階段にくまなく視線を巡らせている。


『アンラ、一番左の奴が鍵を腰に吊るしているぞ』


『おお! どうやってぶち壊そうかと思ってたけど、手間が省けたね~、収納と~眠りヒュプノス♪』


 四人分の装備と、鍵束を収納して眠らせる。


『じゃあ~、御開帳~、ほいっと! ……ほいっと! ……もう!』


 収納から鍵だけ取り出して、大きな金属製の扉の鍵を、ガチャガチャ……鍵を、ガチャガチャ……鍵、ガチャン。


 三個目の鍵で開いたみたい。

 鍵を抜いて扉を押し開けると部屋の中が、灯りの魔道具が作動したみたいでパッと明るくなり、壁際だけじゃなく、部屋のいたるところに棚が置かれているのが見えた。

 本や武器防具、見たこともない魔道具、金や銀の貴金属に宝石なんかも沢山置かれている。


『宝物庫だな。当たりだぞ、これだけの物を溜め込んでいるとはな。アンラよ、全て持ち出すぞ』


『ほ~い。あっ、魔剣なんかもあるじゃん、こっちは聖剣だよ! ケントにお土産だね~。あっ、この念話の腕輪だけど、ソラーレの王冠にすれば喋れるんじゃない? クローセは喋れるけど無口だし』


『いや、ソラーレはグラトニースライムで上位種ではあるが……喋れるのか?』


 ダーインスレイブがなにか言ってるけど次の棚に行っちゃお~っと。


 次の棚は宝石類がところ狭しと並べられている。


 中にはダーインスレイブみたいに、嵌めちゃうと血を吸わないとおさまらない指輪や、色んな効果、身体強化、毒耐性、魔法防御なんかの装飾品がゴロゴロとある……これって。


『ねえ、これってダンジョンがあるってことじゃない? それも魔道具が拾える』


『ふむ。確かに、その細工だけならドワーフであれば造れるだろうが、そこまでの効果の付いた物で、これだけの数を揃えようと思えば、ダンジョンの可能性は高いな――っ! おいアレだ!』


 ダーインスレイブがなにか見付けたみたいで、魔道具の装飾品を収納してたけど、顔をあげると正面の壁に、絵画でも飾っているような額縁に入れられた地図があった。


 楽しみながら収納してたんだけど、あっちの方がケントも喜びそうだし、その他の物を一気に収納して、その地図がかかった壁に向かう。


 その途中の棚には瓶に入ったポーションなんかもあったんだけど、とりあえず収納だよね~。


 そして地図の前に来たんだけど……。


『アンラよ。この場所は馬を隠した場所の近くじゃないか?』


『う~ん、ここがお城の湖でしょ? で~、方向的に……おお! あの岩山だよね♪ くふふふ♪ ケントが喜びそう! それに、あの渡り人達も修行して、あの五人で行動できるようにした方がいいし~』


『その通りだな。よし、これも収納してこの部屋を空にするぞ。それに棚も持っていくが良い。金や銀、それに宝石で装飾されているのだ、もらっておこう』


 じっくり楽しみながら探検したかったけど、ダーインスレイブの言う通り、この部屋と他の地下室も全部まわって、お酒もあったし、ケントの所に急いで戻ることにした。


 くふふふ♪ またぎゅっとしたり頭を撫でてくれるかなぁ~♪

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