第108話 消火活動
「おいおい火事かよ、あの煙やべえな、何軒か燃えてるんじゃねえか?」
「もくもくだね、街の真ん中あたりかな? 泊まる宿に預けてきた馬が無事なら良いけど心配よね、早く入れてもらって、見に行こうよ」
ツンツンと俺の服を引っ張りながらそう言うアンラ。
確かに俺も心配だな、方向が泊まる宿と同じなのも気がかりだ。
「そうだな、おい門番、入って良いか? それと衛兵の詰所を教えてくれねえか? コイツら盗賊なんだよ」
喋りかけてやっと街の中を向いてた門番がこっちを向いた。
「あ、ああ、身分証をってソイツら……最近Bランクパーティーになるらしいと街で偉そうにしてる奴らじゃないか? それが盗賊?」
「そうなんか? 俺達は来たばっかだから知らねえが、俺達の金を奪おうとしてきたから捕まえた。後は宿にも仲間が行ったらしいが、衛兵がコイツらから聞き出して捕まえてくれっだろ」
そう言いギルドカードを門番へ見せた。
二人分を見て、通してもらえることになり、衛兵の詰所も教えてもらった、というより『詰所はここだ』と指差した先は門に併設されている建物がそうらしい。
門番も、管理監の管轄じゃなくて、珍しく衛兵がその役割をしているそうだ。
寝ている三人を引きずって牢屋に放り込み、魔法で起こした後はもちろん、アンラの
盗賊を捕まえた報酬と、情報を聞き出した報酬をもらい、衛兵の詰所を後にして宿に向かう。
その前に同行している衛兵のおっさんと一緒に、門前の冒険者ギルド出張所へBランク冒険者の盗賊行為を報告していく。
冒険者ギルドの出張所は衛兵の詰所から、十メートルほどしか離れていない目の前だ、あっという間に到着してすぐに所長室に通された。
そこで出張所の所長に衛兵のおっさんが説明して、俺達がその説明を正しいと認める。
聞いていた所長は『ついにやらかしたな』と呟くと職員の一人、お茶の準備をしてくれてた姉ちゃんを呼び、話した内容を書いた紙を渡して街の真ん中にある冒険者ギルドに走らせた。
「奴ら六人が来た当初から喧嘩などの騒ぎが増えてな、素行も良いとは言えない奴らで怪しんではいたんだが、盗難か……これは余罪があるだろうな」
「今なら自白の魔法がかかってるぞ、聞いたら良いんじゃねえか? そうだろアンラ」
「そだね~、数日は素直に白状してくれるよ~、あっ、お酒はないけどこの本読んだこと無いやつね、借りて良い?」
よし、ちゃんと借りて良いか聞けたじゃねえか。
壁際にあった本棚を勝手に物色していたアンラは、一冊の本を手に取り戻ってきた。
それを所長に向けて突きだしニコニコと笑ってる。
「ん? 何をゴソゴソとしているのかと思えば『悪魔に魅いられた花嫁Ⅵ』か、前の巻はないが良いのか? この街を出るまでに返してもらえれば構わないが」
「間が飛んでるんだけど、誰か持ってないかな? 今夜中に読んじゃうから貸してもらいたいんだけど」
こころよく貸してくれる事にはなったが、間が抜けてたんじゃ面白くねえだろと思う。
それを聞いた所長は、ポンと手を打ち何かを思い出したようだ。
「その本は先ほど走らせた者が置いていった本だからな、あの者が帰ってきたら聞いてみるか。君達はどこに泊まっているんだ? そこに連絡を入れるように言っておくぞ」
「ひゃっほーい♪ 泊まってる場所はね、真ん中の冒険者ギルドから――」
アンラが宿を教えていると、所長と衛兵のおっさんの表情が険しくなった。
どうしたんだ?
「その場所は今燃えているところだ、冒険者ギルドからも水魔法が使える者に緊急依頼はかけているんだがな」
「「
俺はソファーから勢い良く立ち上がり、アンラを見る。
アンラは頷き、手に持ってた本を所長に押し付け出口に俺と同じように歩きだした。
「お、おい、どこへって、水魔法が使えるなら頼む!」
その声を聞いた時はもうバンと勢い良く扉を開け、俺達は走り出していた。
「「
同時に返事をし、俺は通路を走りながら覚醒した。
出張所を出たところでアンラと手を繋ぎ、人の行き来が多く、全力で走れない大通りを避けるため、大通り沿いに建ち並ぶ二階建ての屋根へ跳び上がった。
「あそこだ! 急げアンラ!」
「本気で走っちゃうわよ! 私達の馬が待ってるんだから! ぴょーん!」
屋根から屋根へ、飛び移りながら煙がモクモクと立ち上る場所に向け突き進む。
普通に馬車でも十分以上かかる距離を十数秒で走りきり、俺達が泊まる予定だった宿の向かいの屋根に到着した。
「ケント!
人の顔ほどもある
ドパンとぶつかった
「分かった! デカい
俺は同時にデカいやつは投げられねえ、仕方ないから一抱えほどある
ドッパーンと後から投げたものが始めに投げたものに見事に当たり、水瓶をひっくり返したかのように燃える宿へバシャンと落ちた。
「ケントその調子よ! どんどん行くわ!」
「おう! おりゃ!」
俺達の他にも宿に水桶で水をかけている。
それは水魔法で水桶の水をそそいで、後は人力でやってる。
燃える宿のまわりには冒険者や衛兵、街の人達が手に水桶を持って走り回っていた。
「アンラ、俺達の馬はあそこだ! 逃がしてもらえてんなら全力で水をかけっぞ! アンラは俺が作ったのに当てて崩してくれ! いくぞぉぉぉぉ!」
デカいものを作るため、投げられねえなら宿の上に作れば良いだけだ。
そう思い、早速だが離れた場所に
「ケントそれ! まーたとんでもないことをやってるわね! でもあの大きさなら――私も大きいの出しちゃうわよ! ほいっと!」
宿屋の上空五十メートルほどの高さのところでどんどん水の玉が大きくなり、宿の大きさと同じくらいになった瞬間、まわりで消化するため集まっていた者達の声に負けず、アンラは呪文を唱え、これもまた俺の十数メートルはある水の玉と同じような大きさの
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