第107話 ダンジョンを見つける

 突っ込んできたが武器は抜いてない。


「なんの用だ!」


 後十メートル、声はかけてみたが返事はなく、勢いを殺さず一直線に姿勢を低くして捕まえ動きを阻害するつもりなのか、腰辺りを狙って手を横に広げて来た――残り五メートル――。


「――石壁アースウォール!」


 向かってくる男達の足元に高さ十センチほどの石壁、出っ張りを作り出し、躓かせた。


「どわっ!」「なっ!」「おわっ!」


 ズザザと突っ込んできた三人は、地面を勢いよく滑り俺達の足元で止まった。


「動くんじゃねえぞ、お前らなに者だ? 盗賊か?」


 アンラはどこで拾ってきたのか知らねえが、三ツ又の枝の三つの枝先を、上手い感じにうつ伏せに倒れている三人の頭に突き付けている。


 たぶん剣の先を突き付けられているように感じているだろうな。


「ま、待て! いや、待って下さい! け、剣をおさめて話を!」


「まず答えろよ、いきなり襲いかかって来てんだ、冒険者ギルドからずっとついてきやがって、何が目的なんだよ」


「面倒だしやっちゃおうよ、どうせ魔物調査の依頼報酬を狙ってきたんだし盗賊だって」


 俺もそれしかねえと思ってる。

 なんたって、最初の調査の報酬に加算して、討伐報酬の金貨をギルドのみんなが見ているところで受け取ったからな。


 あれはギルドの職員の不手際だ、高額報酬なら別部屋で渡さねえと、こんな奴らが出てくるのは想像できるからよ


「た、確かにあなた方の報酬を狙っておりました、まだ洗礼を受けたばかりの二人なら簡単に奪えるだろうと、馬車と宿も今ごろ踏み入って荷物は奪われているはずです! も、申し訳ございません!」


 やはりな、まあ部屋には何も置いてねえし、馬車もクロセルに収納してもらってある。

 心配なのは馬だが、馬に何かあれば宿に文句は言えるけどな。


「分かった、なら未遂だが盗賊なんだ、捕まえてやっからよ、アンラ、良いぞ」


「ほ~い、眠りヒュプノス~」


 アンラが眠りヒュプノスを唱える前に、少し力を入れて枝を押し付けた時『ひいっ!』と悲鳴をあげて、ビクンと体を震わせた後、くたりと力が抜けて寝息が聞こえてきた。


「私が起こすまで起きないはずだよ~、とりあえずさぁ~こっちの方が大事だよね~」


 その通りだ、コイツらは見えてなかったと思うが、石柱が立つ真ん中に小さな石が浮いてるんだもんな……。


「ケント、これが何か分かってる?」


 三ツ又の枝を収納に戻したアンラ……気に入ってるんだろうな。


 っとそれより見ても分かんねえけど、黒い中に赤、青、緑、黄色が混ざり合って、石のまわりだけまばゆく光っている。


 結構な価値があるように思えるんだけどよ、すげえ魔力が内封されてんのは分かる。


「魔力が集まって固まった宝石か、魔石なんかよく分かんねえな」


「ぬふふふ♪ これはねぇ~なんと! ダンジョンコアなんだよ~、えっとね、ダンジョンの種みたいなもので、これを好きなところに蒔けばダンジョンができちゃうんだよ」


「は? ダンジョン?」


 腰に手を当て、胸をはって俺にドヤ顔してるアンラの言葉がすぐには理解できないが、この握れば隠れてしまいそうな石があればダンジョンが作れるってことか?


「ならよ、これをうちの村に蒔けばダンジョンが出きるってことなんか?」


「そだよ~、まああの村くらいの魔力ならそんなに大きなダンジョンはできないだろうけどね」


『そうですね、アンラが封印されていた部屋なら魔力が貯まっていますので、百階層近くの中堅ダンジョンはできるでしょう』


「マジか! ダンジョンできたら村の名物にもなるし、人が集まるはずだから街になるんもすぐだぞ!」


 すぐは言いすぎだが、移住してくる人はめちゃくちゃ増えるだろう。

 人が増えれば今あるアシアん家も大繁盛で忙しくなるだろうな。


「良いの見つけたね~、ほら、さっさとクロセルに収納してもらって、屋台で買ったの景色でも見ながら食べようよ」


「おう、手紙を届ける依頼が終われば王都に行く前によって蒔けば良いよな、ほいっと」


 石柱の間を通り、内側に入ると、なんか魔力が体にまとわりついて、その後に中に染み込んでくる感じがした。


 捕まえるために使った魔力が回復しちまった感じがする。


 ちょうど真ん中で、目の高さに浮いている光る石を掴んで、親指と人差し指につまみ直して陽の光にかざして見ると、透き通っているのが分かった。


「くふふっ、ケントの顔に赤とか青とかの光が映ってるよ」


「へ? あっ、そうみたいだな」


 掲げている腕にも言う通り赤や青色の光が当たっているのが見て取れる。


 アンラの顔にも光を当てたり、ソラーレ、クローセ、フルフルにも当てて遊んだ後、飯の前に三人を縛ってしまう。


 縛り終えた後、山頂からの景色を見ながらオーク肉の串焼きをパンに挟んで食べ、俺はお茶、アンラはもちろんお酒を飲んだが、久しぶりにゆっくりした時間を過ごせた気がする。


 帰りはどうやってこの三人を連れていくかちと悩んだんだが、階段があるから手押しの台車も使えねえしと思ってたら、アンラが繋げて縛ってあるロープを持って、俺の腰に腕を回したかと思った瞬間!


「ぴょ~ん」


 とか良いながら階段の一番上から飛び下りやがった。


「どわぁぁ! ってか夕焼けが滅茶苦茶綺麗だぞ! あはははははは!」


「でしょ~♪ このまま街まで飛び下りちゃうよ~、ぴょ~ん♪」


 何度か背の高い木や、むき出しになってる岩を足場に山を飛び下りて、一時間ほどかけて登った山をあっという間に門前へ戻ってこれた。


 だが、何か門番があわただしくしている。

 俺達がいきなり飛んできたら驚くだろうと思っていたのにそれどころではないようだ。

 何が起きたのか門番に聞こうとする前に、街の中央から煙があがっているのが見えた。

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