第15話 スライムと
「おっさん魔物はどこだ! どこに出た!」
叫んだおっさんの方を見たんだが、なぜか俺の方を指差してやがる。
「ツインテールキャットだろそれ! 黒色は珍しいけど間違いねえ! そいつは可愛い顔して
ツインテールキャット? 良く見たら俺じゃなくてクローセを指差してるようだな。
コイツが獰猛? 俺はクローセの顎を撫で、寝転がったから腹を撫でて、ゴロゴロ言ってるただの猫にしか見えねえが、まあ、エンペラーキャットってアンラが言ってたし、種類が違うんだから性格も違うんだろうな。
「ん~、クローセはこんなだぞ? 獰猛とは違うんじゃねえか?」
「そ、そうね、大人しいし、普通の猫と変わらないみたいだし······ね、ねえ。触っても良いかな? えと、クローセちゃん、どう?」
ウサギの姉ちゃんがクローセを見てそう言ってくる。
だよな、こんだけ気持ちいいし可愛い奴だしそう思うのはしかたねえか。
「んなぁ」
「おっ、良いみたいだぞ。でも毛は逆から撫でるなよ、流れに沿って撫でれば良いぜ」
俺はお腹をもしゃもしゃしているが、ウサギの姉ちゃんは恐る恐る指を伸ばし――チョンと触って手を引っ込める。
「あのなぁ。触るんならこうやって、こうだ。ほれ、滅茶苦茶気持ちいいだろ?」
ウサギの姉ちゃんの手を取ってクローセのお腹を触らせてやった。
「ほえっ! ほへ? はへぇ~、気持ちいい~♡ クローセちゃ~ん♡ うふふふふふ♡」
「にひひ。最高なんだぜ、でもそれくらいにしてくれよな。やっぱり慣れねえ相手だからクローセが困ってるからよ」
モゾモゾして、ウサギの姉ちゃんの手から逃れようとしてるんだが、俺の手が気持ちいいのか逃げるのをためらってる感じがする。
ジーっと俺の事を見てくっからしゃーねーから姉ちゃんに離すように言ってみる。
「ううっ。クローセちゃんごめんなさい。でも気持ち良かったぁ~。ありがとうクローセちゃんにケント君。あっ、登録だよね。すぐにやっちゃうわ」
ウサギの姉ちゃんが魔道具に何かカチャカチャと触って登録してくれている。
んで、声をかけてきたおっさんも······。
「こりゃ驚いた。すげえ慣れてんだなその、クローセとかいうツインテールキャットはよ」
そ~っと人差し指をクローセの鼻先に伸ばすと、クローセは匂いを嗅ぐようにヒクヒクと鼻を動かした。
「おお……すまねえな、これだけ慣れてんなら心配なさそうだ」
「おう。構わねえぞ、やっぱり魔物は魔物だもんな。知らなきゃ怖いのは当たり前だからよ」
おっさんが叫んだ後、静まり返っていたギルドだが、ざわつきが入ってきた時のように戻ってきた。
そして登録も
「うん。登録漏れは無いわね。はいケント君。君は今からEランク冒険者よ。失くさないようにね」
「おおー! くぅーこれで俺も冒険者だ、ありがとうよ。んじゃスライム捕まえてくるか!」
ギルドカードをかかげ、俺の名が刻まれているのを見て実感がわいてくる。
おっと、こうしちゃいられねえな。
「頑張ってね。十匹で依頼達成だから、捕まえてきたらあっちの買い取りへ持っていってね」
「おう。分かった、行ってくるぜ」
冒険者ギルドのギルドカード、Eランクで灰色のカードを受け取った俺は、もうちょっと眺めてたい気持ちを押さえつけ、懐にしまいながらさっさとギルドを出る。
入ってきたばかりだが初依頼だ、早速もと来た道を戻り門をくぐってリチウムの街を出た。
門番の兄ちゃんにスライムがいるところを聞いて到着したんだが······。
「あらあら。滅茶苦茶沢山いるわね」
「だな。十匹で銅貨一枚だから、沢山持って帰りたいんだけどよ、これなら捕まえ放題だな。よし、袋は持ってきたはずだから······あれ? 無いな······しゃーねーマントでやるか。······あったあった。これなら百匹は入るだろ」
リュックから、雨が降った時と、寝る時に掛けていたマントを取り出して地面に広げ、そこに足元でポヨポヨしてるクリーンスライムを乗っけて行く。
「一二の三の四の五の六ってコイツはクリーンスライムじゃねえな? なんだコイツ?」
一匹だけだ、色の違うスライムがいたんで、ひょいと掬い上げてアンラに見せてみた。
「あら、グラトニースライムの子供ね。ケント、その子連れていって躾れば魔物を狩った後の血抜きとか、いらないところとか食べてくれるわよ」
「コイツがそうか、アシアん家と、猟師ん家にいるそうだけどよ、見たこと無かったからな。よし、空みたいな色だし······ソラーレだ、なんかそんな感じだからよ。お前はリュックでクローセと仲良く待っててくれよな」
手の平に乗せてたソラーレを背中のリュックに乗せて······乗せて······手から離れねえな······。
「ソラーレ、今は依頼の途中だからよ、手にくっついていられっとやりにくいんだ。そうだな、リュックが嫌なら肩でも頭でも良いから移動しといてくれねえか?」
そう言うともにょもにょ動いて肩へ。
落ち着くかと思ったら、頭の上に移動してプルプルポヨポヨしてる。
「頭が気に入ったか。んじゃそこで大人しく待ってろよ。俺は依頼をやっちまうからな」
足元のスライムは拾ってしまい少しずつ移動してはひょいひょいと拾っていく。
見るとそこそこの冒険者が、俺と同じ依頼を請けてるようだ。
「背負い籠か、次にこれを請けるんなら籠がある方が良さそうだな」
「だね~。それよりまだ~? それとあいつにレイスがくっついてるわよ」
アンラがそう言って指差してる方を見ると、顔色の悪い俺よりは歳上っぽい姉ちゃんが満載のスライム 入った籠を背負って街に帰ろうとしているところだった。
「しゃあねえな。俺も百は捕獲したしよ、帰るついでにやっつけとくか」
「そうね、早くしないとそろそろ倒れるくらい弱ってるしね~」
見るとアンラの言う通り、籠を背負って前屈みで歩いてんだが、ふらふらとして、ちょっとでもつまずけば、転けそうだ。
「マジかよ! そんなの早く言え! よし行くぞ!」
マントの端を持ち上げ袋状にして左肩に背負い、ふらふら歩いてる姉ちゃんに走りよる。
(ケント~、剣を握ってるけど剣で浄化するのはやめた方がいいよ~。絶対驚いちゃうし、私が教えた
俺の後ろからのんびり歩いてくるアンラから念話が来た。
それもそうだ、いきなり剣で切りつけられたら俺でも驚きそうだしな。
俺は剣を握ってた手を離し、魔力を練り始める。
集まりやがれ魔力!
右手に魔力を集中するようにして姉ちゃんに走りより、足音で気が付いたのかこっちを見た所に俺は、言われた通りに
「
光の玉が向かってきたらそりゃ驚くだろうが、咄嗟に動けねえほど弱ってたんか、なんとか声はあげたがそのままモヤモヤに光の玉は吸い込まれた。
「え? な、なに!?」
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