夜来化石 ~遊郭に残された謎の四字に秘められた意味は?齢九歳にして天下一の盗賊と噂される俺は、盗みと女装なら誰にも負けねえっ!(「ウチの親方が一番かわいい」手下A・談)~
十九之巻、夏祭り、花火に喧嘩に焼き鳥でぃっ!(前篇)
十九之巻、夏祭り、花火に喧嘩に焼き鳥でぃっ!(前篇)
濃紺の夜空に光の雫が花開く。
どーん、どどーん、と花火が上がるたび、川べりからも浮かべた船の中からも、太鼓橋の上からも歓声が上がる。
川の両岸に広がる
「お
小走りに近付いて小声で呼びかけるのは、何の特徴もない普通の男。
「おお、ぎんなんか」
と、こちらも小声で応じる。端の席に座った
「で、調べはついたか」
「へぃ、もう万全で。お頭の読んだとおり、修理屋ふぁしるは女――」
「おい、もっと小せえ声で
「へい」
ぎんなんことしろがねみなみは、
「お前は戦下手だが、こそこそ嗅ぎ回らせると天下一品の腕前だな」
「へい、勿体ねえお言葉で」
「喜ぶな。で、そのガキってのはどこにいる」
「あそこに」
と、銀南が指差した先は、大きな太鼓橋の上、十二、三の少女が、
「道でも訊くふりして、人のいねえところに連れ出すんだな」
と
「でもお頭、あのガキ村のもんすよ、都の地名なんか知らねえんじゃ――」
「やっぱり馬鹿だな、お前は。それならガキの村に案内させりゃあいいだろ。そうすりゃあ、途中で淋しい場所を通るんだから、そこで……」
「成程、ふふふ――」
含み笑いを漏らす横顔を、一瞬、夜空を
「くっくっ―― うまくやれよ。俺は例の土蔵のところで待ってるから、手筈どおり事を運べよ」
「へい、任せてくんなせえ」
暗がりを小走りに、その背中は橋の方へ消えていった。
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