五之巻、町奉行所に潜入でぃっ!(後篇)
支えあい密集する家々の隙間から、西日が一筋のびて、裏通りにあいた戸口から差し込んでいる。
隠れ家に戻り冷茶の一杯でも飲んで、ようやく涼しくなった頃、
「削除済み、か」
「どういうこと……?」
不安そうな来夜に、
「何者かが台帳の文字を書き換えたか、塗りつぶしたか、もしくはその
「粛さん、お頭を心配させるようなこと並べるなよ」
後ろから、来夜の長い髪を撫でてくれたのは、
原亮は事件解決と、知能犯との知恵比べに男の浪漫を感じる、ちょっと困った警部だ。
「確かにあの人なら、きちんと頼めば盗み屋の依頼でも聞いてくれそうですが」
公私混同はしない、という信条に添って、仕事中以外は盗み屋を見かけても捕縛しない、ということらしいが。
「ちっと待ちねえ、粛さん。今気付いたんだが――」
さえぎったのは
だが、金兵衛の言葉に粛と来夜、二人が同時に溜め息ついた。
「
「和尚、怒ってるもんねえ」
実は―― 子供のいなかった
「その住職の
来夜の幼い頃を語りだした粛に、金兵衛が尋ねる。
「そう、ご察しの通り、マルニン初代頭目・
「なにぃぃ?
「その
「和尚、弟のこと全然話さないもん。だからねえ、跡継ぎにしようと思ってた俺までが盗み屋になっちゃって、怒ってんの。ちょっと
五才になった来夜には、幼さのせいか、はたまた天賦の才あってか、
ちなみに
「へ~~、粛さんが剃髪してるとこなんて想像出来ねえなあ」
「じじいになりゃあ見られるよ」
と、
「あなたの方が先でしょうけどね」
粛さんもしっかりやり返す。
来夜と
来夜は成長と共に盗みの腕を上げ巴宇を凌ぐようになる。頭目の座に危機を感じた巴宇は来夜を消そうとたくらむが、既に時遅し、銀南を除く手下たちの情はすっかり来夜に移っていた。
「ねーちゃんのことだもん。腹すえて和尚に会いに行くよ」
決意を固めて来夜が宣言した。「ね、粛」
相槌求められて、粛さん震え上がりつつ、
「そ、そうですね……」
首をすくめて呟いたのだった。
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