五之巻、町奉行所に潜入でぃっ!(前篇)
「楽勝楽勝♪」
「マルニンは、捕り方なんざ怖くねえ」(←一応五・七・五になっているらしい)
「はんっ、天下一の
無事隠れ家に戻ってきた途端、
「
「ざっまぁみぃ~」
来夜はご機嫌だ。「これで敵は二人になった!」
原警部と修理屋ふぁしるだ。だが来夜は眉根を寄せる。
「ふぁしるは俺を助けようとしてたのかな? それで堀に落ちちまったんなら、見捨てて逃げたのは、ちとまずかったよなあ」
「気に病みますな、来夜殿。きっとふぁしるは天下一の修理屋として、好敵手であるあなたを失いたくはなかったのでしょう。それにふぁしるとて、金巴宇に勝って欲しいとは思わぬでしょう。じきに訪れる決戦の時、正々堂々と勝負に応じてやればよいのですよ」
「でも助けられたことに変わりはないんだ。良かったよ、
「全くです」
頷いた
「旦那の姉上かもしれねえ金の瞳の
吉藁細見とは各妓楼の遊女とその揚げ代(遊女を座敷に呼ぶ値段)ほか、茶屋や吉藁所属の芸者についての情報が掲載された遊女名鑑――いわば吉藁の
「だめですなあ、通りいっぺんのことしか載ってませんわ。
吉藁細見なぞあまり手に取ったことのない
「いつも行っている店なのですから、ほかの遊女や遣り手に聞いた方が早いんじゃないですか?」
遣り手婆は遊女たちを統括する人だ。
金兵衛は顔をしかめて、
「やだなあ、
「そうですか――」
「じゃあ
「いやぁお頭、ほかにも手はありやすぜ」
口を挟んだのは
お役所とかお番所などと呼ばれるのは町奉行所のことだ。本籍地のある奉行所の土地戸籍部屋へ行けば、出生地から現住所までの住所が全て明記された附票を請求できる。
「あっ、成程。ねえちゃんの現住所が吉藁ならば――」
「
「へ、へ。あたしゃあ、かつては役人目指してましたんでね。そーいうこたぁ、なんでも聞いてくんなせえ」
照れくさそうに頭の後ろを掻いている
「
「即刻お縄頂戴しちまうなあ」
縁起の悪いこと言って大笑いするのは、不謹慎な金兵衛だ。神経のこまやかな粛さんがにらむのも気付かずに。
「やっぱ粛は頭いいね!」
かわいい来夜に誉められて、粛さん照れ笑い。「細かいところに気付くだけですよ」
「男ってなぁ、気が大きいのに越したこたぁねえのよ」
「注意力散漫ではないということです」
「散漫かよ。俺は」
しっかり落ち込む
「ねえみんな、俺が役人の一人に変装して、お役所の土地戸籍部屋に入って、戸籍台帳見てくるってのはどう?」
「こんなちいせえ役人いねえよ」
来夜の頭をぽんぽんとたたいて、金兵衛はまた大口開けて笑う。
「無礼者め。今日の夕食、そちの分はないと思え」
「そりゃあねえっすよ、旦那ぁ」
粛さん顎を撫でつつ、
「来夜殿の素晴らしい変装は、つけかえる
「お化粧だけじゃないもん。演技力となりきり度も大事だもん」
不満そうな来夜を押しのけるように、
「粛さん、それでぃ、その案でぃ! そうと決まればお役所の閉まらぬうちに、早いとこ出発しやしょう!」
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