第2話
結愛が王様ゲームでノリノリで愛人になったのが未だに信じられない。
俺は下校中、腕を組むように隣で歩く、普段より距離感が近い結愛のことを見てそんなことを思っていた。そんな中――
「あっ、律斗と結愛じゃん」
今一番話しかけられたくない人に背後から話しかけられた。
「御坂っ! 部活は終わったの?」
「うん。二人ともまだ帰ってなかったんだ」
そんな御坂は距離感が近い俺たちに怪しむ目を向けてきた。
「二人とも……なにかあったの?」
「実は私たち愛人っていう関係になったの!」
えっへんと、誇らしげに言い放った。
絶対に愛人だということは言うんじゃない、と事前に言っておけばよかった。
「は?」
御坂は俺に『信じられない』とでも言いたげな目を向けてきた。
「どういうこと。律斗、まさか結愛のこと脅したりでもしてるの?」
「いやそんなことしてないよ。ついさっき王様ゲームのノリでちょっと変なことを言っちゃっただけで……」
「御坂、安心して。私これからちゃ〜んと愛人として恥じないことをするからっ!」
ドンと胸を張っている結愛を前に、御坂はどういうことなのか大体理解したらしい。
俺に同情するような顔を向けてきた。
「なんというか素直に愛人になるのは結愛らいしっちゃらいしけどさ……」
みさは「はぁ」と、よくわからない関係になった俺たちにため息を吐いてきた。俺も同じ気持ちだ。
「じゃあわかったわかった。結愛だけ愛人になるのは少し心配だから私も愛人になってあげる」
なぜそうなる!?
「やったぁ〜! 御坂が愛人になってくれれば百人力だねっ!」
何が百人力になるのかわからないが、結愛は御坂のことを歓迎している様子。
仕方ない雰囲気で愛人になると言ってきたが、御坂赤くなっていて満更でもない顔になっている。
「ま、まぁ結愛のことを助けるつもりで愛人になってくれるっていうのなら嬉しい? から大歓迎だよ」
御坂の表情を見て動揺してしまい、自分でも何を言ってるのかよくわからない。
「律斗が断らないことくらいわかってたよ。私たち、何年ずっと一緒にいると思ってるの?」
顔を近づけ、上目遣いをしてきた。前までなんとも思っていない幼馴染だったのに、ドキドキしてしまう。
顔が少しづつ近づいていた俺たちだったが、その間にムスッとした顔の結愛が入ってきた。
「二人ともずるいっ! 私も入れてよぉ〜」
「い、入れるってなんのことだよ。俺たち別に何もしてないけど?」
「うんうん。私もなんにもしてないよ?」
「もぅ……二人して知らんぷりするのなら私、もう知らないっ!」
ぷんぷんと、怒った結愛は俺の腕から離れて先に歩き始めてしまった。のだが、歩くスピードが異常に遅い。
俺と御坂は結愛のもとに走る。
「ごめん結愛」
「私もごめんね? ……でも結愛。私たち、本当に何もしてないんだよ?」
「え? そうなの?」
暗く沈んだ顔からパァっ……と光を取り戻した。
「なにを勘違いしたのかわからないんだけど、結愛がいなくなるのなら私だけが律斗の愛人になるけどそれでいいの?」
「だめ! 私も愛人になるっ!」
先程までぷんぷん怒っていたのが嘘のように、再び俺の腕に抱きついてきた。
愛人に逆戻りしちゃったけど、まぁいっか。
俺が何も言わないことをいいことに、結愛はむにむにした主張が激しい胸をすりすり擦り付けてきた。
「律斗。今日から結愛と私のこと、よろしくね?」
「お、おう。任せろ」
俺は結愛のことが好きだ。それは御坂に相談したことがあるので知っているはずなのだが……。
まさか、御坂は結愛とは違い本当に愛人になるつもりなのだろうか?
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