二人の幼馴染とノリで愛人になった

でずな

第1話



 王様ゲーム。それは数あるくじの中から王様を引き当てた人が、数あるくじに書かれた数字の人に王様としてどんな命令でも下すことができるゲーム。


 もう最近ではあまり名前が聞かなくなったゲームだが、俺こと三野律斗みのりつとと幼馴染である矢島結愛やじまゆめはなぜか二人ですることになった。

 必ずどちらかが王様になり、命令される立場になる者がいるというのに、王様ゲームをすることになったのは放課後することがなくなったからだ。


「じゃあじゃあ! 律斗が最近ハマってることってなに?」


「う〜んと、次は律斗の好きな動物っ!」


 結愛は本人自慢のショーットカットの髪の毛を左右に揺らしながら、それはもう何度も何度も何度も……。まるで意図的に王様のくじを取っているんじゃないかと疑うほど、連続して王様になった。


 王様ゲームは進むに連れ、際どい命令になっていくのが定跡だが結愛はピュアな質問ばかりしてきた。


「おっ来た!」


 と、俺はようやく何度も続いた命令される立場から開放された。


「あぁ〜王様じゃなかった……」


「なに命令しよっかなー? なんでもいいんだよね?」


「もちろん。それがこのゲームのルールだからね。……まぁ律斗のことだし、そんな大それたこと命令できないよね」


 そんな煽るように言われたらカッチーンきちゃったよ。


「じゃあ結愛……結愛は俺の愛人になれっ!」


「うん。わかったよ!」


 勢いで言ったのですぐ訂正するつもりだった。だが、命令から逆らうつもりのない、あまりにも純粋な結愛の言葉を聞いて訂正できない空気になってしまった。


 まさか結愛、愛人の意味をわかつてないんじゃないか……?


「結愛。愛人っていうのは……」


「わかってる。わかってるからそんなこと言わなくていいよ。まだ不慣れなことがあるかもしれないけど、これから律斗の愛人としてちゃんとするからっ!」


 ぐっとガッツポーズされ、愛人の意味を履き違えていると確信し反応に困った。


「と、とりあえず落ち着こうよ」


「ふっふっふっ。律斗。愛人は静かにしてろってことだね?」

 

「そういう意味で言ったんじゃないんだけど……」


 どうやらこの純粋な結愛にはどんなことを言っても、王様からの命令を破るようなことはしないらしい。


「じゃあ、もういいや。俺の愛人、でしょ? ……これからよろしくね」


「うん。よろしく!」


 無理やり命令で愛人にされたというのに、結愛の顔は普段と比べて数段天使のような笑顔だった。


「じゃあ早速愛人になったから秘密の連絡先交換しよっ?」


「いつも通りのラインでよくない?」


「のんのん。律斗は私のことを愛人にしたというのに甘いね。……私たちの関係が、もし第三者に勘づかれたらどうするうもりなのさ」

 

「バレたらなんかある?」


「ふっふっふっ。ちょっと気まずくなる」


 その程度のことを決め顔で言われたところでなんとも思わないが……。


 ――俺は結愛のことが好きだ。


 幼馴染で、いつか告白しようと考えているうちに高校一年生という年まで来てしまった。絶対に今年中には告白して、愛人から恋人になってやる。



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