4の怪・詳細 調査報告書 by L&R



 調査報告。記録者・左介さすけ、ゆうたろー!


 被害者・結城ゆうき令助れいすけ 氏、調査場所・アパート晴間荘。


 六月XX日、水曜日。結城令助氏からの相談を受け、夕善ゆうぜんよし透山とおやまさきがけ氏の二名がアパート晴間荘へ調査に赴く。




 ○結城令助氏が受けた被害についての詳細


 ・部屋の一室に座っている夢←夢(=自身の領域)に連れ込む怪異。

 ・部屋の内装は実際の部屋と差異有(窓の型、家具など?)

 ・ガラス窓を叩く手←骨格、肉づき等は不明。

 ・「お邪魔します」という声←声色、年齢、性別等不明点が多い。

 ・二週間前から発生、現状被害は寝不足のみ。




 同日十五時頃、二名が結城令助氏の自宅を訪れたところ、夢と現実における内装差が発覚。ただの夢ではなく怪異案件だと判明。夕善喜氏、結城令助氏を自宅へ呼び保護。


 ○結城令助氏が夕善喜氏らの家へ持ち込んだ物

 (右太郎が勝手に項目を作りましたが不要なので削除)


 同日十七時頃、結城令助氏が到着した段階で我々に連絡。調査開始。

 十八時頃、のりと暁星あけぼし氏帰宅。

 十九時頃、我々が夕善喜氏らの家へ到着。一通りの話を聞き、調査の方針をまとめる。透山魁氏を連れアパート晴間荘に向かうことが決定。



 同日二十一時頃、アパート晴間荘に到着。以降調査報告を各項目に分類。




 ○建物、周囲の情報について


 ・築二十一年、大家は五十八歳の女性。

 ・各階四部屋の二階建て、結城令助氏は二階の手前から二番目の部屋に在住。

 ・六畳間に風呂トイレ別、駅から離れていることを除けば好物件。

 ・近辺にあるめぼしい施設は、スーパーマーケット、郵便局、コンビニ、ガソリンスタンド等。

 ・徒歩五分の位置にある山の中に霊園を確認←ここが怪異の発生源?

 (周辺に関する衛生地図を添付)




 ○怪異発生の原因と思われる事件について


 ・二十二年前、アパート設立前この土地に建っていた民家にて殺人事件が発生←被害者の状況と夢の中の状況がほとんど一致、関係は密と見て間違いない。

 ・当時実家暮らしだった女大生を狙ったストーカー殺人。被害者は美山みやま朱音あかね、当時二十歳。深夜、窓から侵入してきた犯人前野まえの智則とものりにより殺害される。

 (当時の事件記事は添付)


 ・前野智則は仕事帰りに寄ったコンビニにて美山朱音氏と出会い、一方的な好意を抱いたとされている。その後行き過ぎたストーカー行為により警察から厳重注意、そして美山朱音氏が当時恋人と交際していたことを知り激高、犯行に及んだとされる。

 ・事件後前野氏は妻子から離婚を突きつけられ、懲役六年の刑罰に。現在釈放はされているだろうが、その後の行方は不明。

 ・美山朱音氏死亡後、美山夫妻は実家のあった土地を手放す。一年後アパート設立。




 ○怪異詳細


 ・居住者を夢(=自身の領域)に引き込む点、流れる噂の内容がほぼ同一である点から推測するに、かなり強力な怪異。実像じつぞう型の怪異で間違いない。

 ・怪異の話がネット上に流れたのは十二年前が初←アパート設立は二十一年前、この空白の期間は?

 ・以後も居住者が変わるたびに様々な媒体で相談がされている。内容はどれも共通して「奇妙な夢を見る」というもの。

 ・だが一年前頃から噂は途絶える←結城令助氏が住み始めたタイミング?

 ・身体に支障をきたすような被害は現状無し。高い霊感を持つ人物ならどうなっていたかは不明。

 ・霊感が高ければ夢の中でも動くことが可能。透山魁氏により霊感が下げられていた自分でも動けたため、夕善喜氏や祝暁星氏ならば更に動けると推測される。その分危険は高まるが。



 元々の霊感を自分が八、右太郎が六とし、透山魁氏が近いことにより五下げられたとする。その場合自分は三、右太郎は一となる。

 ←以上を仮定し以下夢の詳細。

 (肉眼で怪異が見れるのは三、触れられるのは七からだとする)



 ○その状況で見た夢の詳細


 ・就寝は同日十一半、夢の始まりは結城令助氏と酷似した状況。同室内で寝たためか、室内には自分と右太郎、透山魁氏の姿を確認。(右太郎は首を動かすのが限度、自分は手を伸ばし声を出せる程度。透山魁氏は完全に意識無し)

 ・室内は確かに結城令助氏の自宅とは異なる内装。室内の本やポスターの記載から推測するに二〇〇〇年初期、美山朱音氏殺害事件が発生した二十二年と一致。

 ・怪異の声と手が出現。手は骨ばった男性の手、犯人とも一致。


 〜以上結城令助氏の証言とは異なる内容〜


 ・「お邪魔します」の言葉(中年男性と思われる声色)で我々の目が覚めることはなく、以後も窓を開けるよう要求が続く。

 ・身動きせずに待機していると、三角割りで強行突破を開始。窓が開けられた段階で身の危険を感じ、透山氏の体に触れる。同時に自分と右太郎は覚醒、透山氏のみ眠ったまま(翌朝六時半に何事もなかったように起床。夢のことも記憶に無し)


 ・霊感を一まで落とした右太郎ひとりだった場合どうなるのかは不明←霊感が三まで下げられた自分がいただけで霊が侵入?

 ・今までの住民の被害より明らかに過激化していると推測される。原因は不明。




 ○以上を踏まえたアパートの怪にまつわる疑問と推測


 ・事件発生は二十二年前、何故十二年前まで噂が投稿されなかったのか?

 →それまで全員が零感だった? 可能性は低いと思われる。


 ・事件現場に張り付いた怪異という点から予想して、怪異の正体は美山朱音氏?

 →被害者が怪異化したとするには、あまりにも夢がおどろおどろしい。ストーカー殺人の被害者に、実像型となる怨念は無いと思われる。故に犯人、前野智則氏の関連が疑われる。前野智則の現状を調査する予定。


 ・結城令助氏が晴間荘に住み始めたのは一年前、何故二週間前まで夢を見なかった?

 →なんらかにより怪異が抑えられていた? だとすれば二週間前に何が? この二週間で怪異も激化?


 ・結城令助氏は霊感があるはずなのに、この二週間前何故被害を受けなかった?

 →透山魁氏により霊感を三まで下げられていた(仮定)自分でも、室内に侵入され危害を加えられる寸前まで到達された。推定霊感が五の結城令助氏が何故無害だった?(なんらかの防御策が?)




 ひとまず今後の方針と解決策。


 一、怪異の正体、美山朱音氏殺害事件の詳細について調査を進める。

 二、裏山にある霊園の調査、結城令助氏への聞き込み。

 三、美山朱音氏殺害事件の犯人、前野智則氏の行方について調査。

 四、週末の怪異祓いに向けた夕善喜氏、祝暁星氏の準備、対策を万全に。



 今後も我々は調査を続けるが、この家に泊まることはもう遠慮したい。




 ──六月XX日、木曜日。午前六時五十八分。


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