3の怪・追記 匿名Hのブログとその後の話



 【匿名Hの毎日ブログ】




 十一月七日 「はじめまして」

 はじめまして〜! 匿名のHです!

 今日からこのブログはじめていこうと思いまーす。特に面白いことはかけないんですけど(笑)

 話の内容はほとんどグチかな? 大学入って二年過ぎたけど、嫌なこと多いんだよねー! 友達に見られたら消すかも(笑)じゃあまたねー!



 十一月十日 「コンビニ傘」

 雨寒すぎ!! (´;ω;`)もう死ぬかと思った! 死なないけどね!

 コンビニでビニール傘買ったけど邪魔すぎ〜! 電車乗るときチョー迷惑だった! 隣の人ごめんね?



 十一月十六日 「髪型」

 早速グチ(笑)

 今日友達から「Hって髪巻いたほうが似合うんじゃない?」って言われたんだけど! 私は今の髪がいいからそうしてるのに、ケチつけてくるのめっちゃ腹立つくない!? 朝からサイアク〜!



 十一月二十八日 「進路後悔中……」

 実習だるすぎる〜! 服飾関係進みたいから今の大学選んだけど、やっぱりフツーのとこ行けばよかったかもな〜なんて後悔中(笑)

 でも今更辞めるなんていえないしね。嫌だけどちゃんと通いま〜す(´・ω・`)



 十二月五日 「嫌味」

 友達のYが(前髪巻いたら? って言ってきたヤツね。ホントは友達と思ってないけど)「ちょっと太ったかも」とか言ってたんだけどさ、わざわざ私の方ちらっと見るんだよ? 自分そんなに見た目変わってないのにさ。

 確かに私この冬食べ過ぎでちょっと丸くなったけど……なんで遠回しに言うのかな?? イライラ止まんない! またヤケ食いしそう!!



 十二月九日 「ムカつく!」

 Yとユミ(先にYってつけちゃったけどもうひとりもイニシャルYだった! ユミはいい子、私も好き♡)の三人で遊びに行ったんだけど、その時めっちゃカワイイイヤリング見つけたんだよね。

 私がひと目見てカワイイな〜って言ったら「凄いカワイイね、買っちゃおっかな〜」ってYが。

 意味分かんなくない!? 私がカワイイって思ってたのに横からかっさらって持ってかれちゃったんだけど!?

 そりゃそのときすぐレジ持ってかなかったけどさ……店の中一周してから買おうと思ってたのに!

 わざわざ一周する間手に持ってさ、なんで!?

 嫌がらせだよね? 私が嫌ってるから向こうも嫌ってるのかな??

 なんで一緒にいるんだろホント嫌!! (イライラしすぎて長くなっちゃった! ゴメンね?)



 十二月十八日 「もうすぐクリスマス」

 クリスマス近いけど今年もひとり(泣)彼氏ほし〜〜!

 今年も友達とパーティーすることにはなったけど、Yがいるの嫌なんだよね〜。ユミやSとはいいんだけど、Yは無理!

 大学入って最初に話しかけたときは地味な子だな〜って思ってたのに、二年に上がってから急にチャラチャラしだしてさ、ちょっと男子からちやほやされてるからって調子乗ってんだよね。

 あ〜腹立ってきた! なんでも私の真似するし、ムカつくムカつくムカつくー!!



 十二月二十四日 「真似」

 今日大学でYと話してたらさ、前まで私が読んでた雑誌をYも読んでたんだけど! なんなの!?

 そんなに真似したいの? 真似するのになんで私より偉そうなの? ホントマジわかんない死ねばいいのに!! (←言い過ぎ)



 十二月三十日 「彼氏募集中!」

 今年も終わりー! 実家帰ってきたけど父さんと母さん相変わらず喧嘩ばっかりで嫌になるんだけど!!

 親との縁、切りた〜い!! 結婚した〜い!! その前に彼氏(笑)



 一月一日 「キモ」

 なんかYが日記付け始めたとか言ってたんだけど。は? そこでまで私の真似すんの? 私ブログのこと言ってないのに? マジで意味不明意味分かんない。

 どーせすぐやめるんだから付けなきゃいいのに。



 一月二十七日 「雪」

 御霊市では雪積もったらしいけど、このへんではちらちら見たい。雪ってテンション上がるよね、何歳になってもさ。



 二月四日 「復讐」

 Yやユミと買い物行った〜。Yがお金無くて買えないっめ言ってた服、今お金に余裕あるし今度買っちゃおうかな。この間イヤリング取られたし(笑)



 二月二十二日 「サイコーの日!!」

 今日はサイコ〜の日! また買い物に出掛けたら、Yがこないだ狙ってた服なくなってたって凹む姿見れた、サイコー!! すっきりした〜ざまあみろ!! それは私のクローゼットの中で〜す!!

 おまけに新しくできたカフェに寄ったらどタイプなイケメン店員さんいたしも〜〜サイコーサイコーサイコー!! さらにYが、自慢げにつけてたブレスレットを落としたとか言ってたし、気分爽快〜!!



 三月四日 「健やかな成長(笑)」

 昨日ってひな祭りだったんだねー。もうほぼほぼ縁ないけど(笑)。実家では雛人形出したりしたのかな? まー関係ないけど!



 三月十九日 「ドキドキ」

 こないだから、例のイケメン店員さんの連絡先を手に入れようと頑張ってるけど難し〜! (笑)

 どう聞けばいいのかわかんないしヤバい、緊張凄い手汗止まんない! でも絶対近づきたい〜!!



 三月二十三日 「常連作戦!」

 ひとりでカフェ行ってきた! 連絡先はやっぱりまだ緊張しちゃうけど、ひとりで通っていっぱい話しよ! 常連さんになってからでも遅くないもんね。



 三月三十日 「怖い話」

 リサーチのおかげで色々イケメン店員さんの情報ゲット! 私と同じ大学じゃあないんだけど、県内の大学に通ってるらしい。転校させて〜(笑)

 オカルト研究会ってホントにあるんだね!? びっくり〜。でもそんなおちゃめなのもいいな〜。



 四月十日 「近況報告」

 三年生になったけど変わりはナシ!

 そろそろ進路考えなきゃな〜。いい彼氏できてそのまま結婚して専業主婦になりた〜い!! 無理か(笑)

 イケメン店員さんとは順調かも? いろんな怖い話聞いたんだよね〜。

 元処刑場のキャンプ場の話とか、店員さんの大学にある呪いのロッカーと幽霊の話とか、隣町にある霊園に出るおばけの話とか!

 怖い話って好きなんだよね〜。趣味あうじゃん!!



 四月二十四日 「念願かなって!」

 ついに! イケメン店員さんの連絡先ゲット!!

 一緒に行ってたYやユミにも渡してたけど……嬉しい! でもみんなも連れ回してたせいでみんな揃って常連さんみたいになってるんだよね〜。私が一番通ってたのに!!



 五月四日 「バイト増やす!」

 連休だけど特に何もなし! カフェに行こうかな〜と思うけど今月金欠……(´・ω・`)

 イケメン店員さんにちょこちょこメール送ってるけど、気持ち悪がられてないかな!? 怖〜!!



 五月十六日 「意味不明」

 待って待って待って、無理、え? なんで?

 なんか、Yとイケメン店員さんが一緒にいたんだけど、は? え? なんで?? ウソ、え、アイツ待って。

 落ち着け落ち着け……スー(深呼吸)

 ……は?? ふざけんなまじでふざけんな。

 偶然?? だとしても、え、無理なんだけど。



 六月二十日 (無題)

 許さない。なんでずっと真似するの? 意味分かんない。

 最初は向こうが可哀相な子だから声かけてあげたのに。なんで恩を仇で返すの? 最低。

 私が先に目をつけてたのに! 私が先に声をかけたのに! 私が先に動いたのに!!

 最悪、最低、気持ち悪い。死ねばいい、死んでほしい。

 家族にも恵まれて、私の欲しい物全部横からかっさらって、なにがしたいの? じゃあ私が全部盗ってもいいよね? 月城さんを返して。


 白木優里奈、絶対許さない。






 ──────



「ただい────まァ?」


 ようやく家に戻り、リビングへ入ったオレを出迎えたのはぎゅうぎゅうになってソファに座る夕善ゆうぜんのバカと透山とおやま、それから左吉さきち右太郎ゆうたろうの四人だった。 


「おかえりー」

「ん」

「おかえりですのりと暁星あけぼしさん」

「おかえりでーす!」


 こちらに首を向けて笑う夕善、こっちも向かずに挨拶もしない透山。そして、膝の上に置いたノートパソコンを叩く左吉とにやけて笑う右太郎。オレは矢筒を壁にかけると、ソファの裏に立った。


「帰れクソバカ共!!」


 そのままふたりの頭をひっつかみ引っ張り上げる。


「痛い痛い痛いっすよ!! やめて!! 頭持ってかれる!!」

「仕事、仕事中ですよ!!」

「うるせェ出ていけ!! ドラマ見せろ!!」


 文句を言うふたりをソファから引きずり下ろして、確保した席に座る。リモコンに手を伸ばした矢先、透山にその手を叩かれた。


「……あァ?」

「……今は変えさせねえぞ」


 いつになく真剣な顔。目線はじっとテレビを見ている。かかっているのは、モデルや芸能人が出ているバラエティか? 今はVTR中らしい。珍しい、コイツが真剣にテレビを見るのは。

 夕善のバカが透山の背中を音が出るほど叩く。それでも透山は集中していた。


「ぜってー変えてくれねーよ! だってほら!」


 ヤツはほら、と画面を指差す。いや、テレビ画面というより──上の角、ワイプ画面。そこに一瞬映った顔、あァ、なるほど。


「ツバにいがテレビ出てる……っ!!」

「あ────、おう」


 VTRを見て笑う顔には覚えがある。透山の家に行ったときに何度も見た顔だ。ヤツの保護者代理、甘やかしてこんなバカを作った原因の人。


「テレビ出るくらいになってたのか」

「今や海外を飛び回るトップ俳優だからなっ」

「ンでテメェが得意げなんだよ……」


 ドヤ顔でテレビに齧りつく透山、いつになくテンションの上がった顔をしている。喜がその様子を見て笑いながらおにぎりを食っていた。ひとつ分けてもらう。


「……ってことはよォ、あの人」

「帰ってくるらしーぞー! 来月になるらしいけどな!」


 ……喜の返答は予想はしていたが、マジかよ。戻ってくるとなるとまた面倒だ。透山のバカがはしゃぐぞ。

 しかしこうなりゃドラマを見るのは難しい。結局左吉達の家で見る羽目になりそうだ。オレのリアタイ記録が途絶えた。


「ところで祝暁星さん」

「ンだよ帰れ帰れ!!」


 後ろから首を伸ばしてきた左吉を追い返す。ヤツは長い前髪の下からじろり、とこちらを睨んできた。右太郎はその後ろでブーブー文句を言っている。


「公園の怪異、生前の詳細見つかったんですけどいりますか」

「……いる」


 ……左吉はなんだかんだ仕事は・・・するヤツだ。察しもいいし、頼む前に動く。ヤツはすぐにパソコンを叩いた。ついでだ、これも頼んでおこう。


「ここ最近の怪異関連の噂について調べとけ」

「……タダですか」

「今度ウチ泊まっていい」

「はい喜んでー」

「喜んでぇー!!」


 安いふたりだ。ソファ裏、パソコンに向き合う左右コンビ。テレビに齧りつく喜と透山を横目に、オレは肩をすくめる。


 御霊みたま市近辺で起こっている怪異の事例。これは何やら裏がありそうだ。オレは指先についた米を舐め取りテレビを見る。画面の向こうでは透山の慕う「ツバ兄」、俳優の「ツバサ」が苦笑いを浮かべていた。


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