33新しい事務員

 最近、あまり婚活についてのことを話せていないが、今回もまた脱線した話をしていきたい。


 仕事を辞めるという話は前々からしているが、一人新人が辞めてもう一人の事務員を募集していた。求人はハローワークで募集していて、求人を見て応募したい人がいると、ハローワークから電話がかかってくる。年齢などの簡単な情報を聞いてよかったら履歴書を会社に送ってもらう仕組みとなっている。



 ある日のこと、ハローワークから電話があった。求人を見たという女性の名前を聞いたとき、どこか聞き覚えのある名前だなと思った。年も私と同い年でこれはきっと同級生だと確信した。


 さっそく卒業アルバムで調べると、同じ名前の同級生の姿があった。なんと、高校の同級生が応募しようとしていた。まさか、高校の同級生が仕事を探して私の会社を受けようとしているとは驚きだった。


 世間は狭いなと感じたが、もしかしたら婚活もこんな運命的な出会いがあるかもしれないと勝手に妄想してしまう。今回は事務員の募集で残念ながら、同級生は女性であり結婚相手にはなりえない。とはいえ、本当にマンガみたいなことが現実に起こる可能性もゼロではないのかもしれない。


 後日、履歴書が届いて答え合わせとなったが、私の予想は大正解だった。私と同じ高校を卒業していて、なおかつ住所も高校の時と同じだった。なぜ、住所まで把握しているかというと、同窓会名簿というものから調べさせてもらった。


 学校が何周年記念という節目に刊行するらしいこの書物は、実に便利な代物である。結構な値段がするが、私は購入していたのでそこから同級生の住所を調べることが出来た。



 ということで、同級生だとわかったところで上司(奥さん)に相談した。


「私の同級生であり、事務仕事もできると思います」


私と同じ高校ということで奥さんも信用してくれたようだ。さっそくその子に電話して面接の日が決まった。


 それが明日というわけで少し楽しみな私がいた。私は何度も言っているが、学校を卒業してから連絡を取り合っている友達が存在しない。履歴書を送ってきたその子とも高校を卒業してから一度も会っていないし、なんなら連絡先すら知らない。そもそも、同じクラスになったこともない気がする。


 なぜ、そんな接点のない人間を私は覚えていたのか。それは私と同じ市外から電車で通っていたからだ。中学校から一緒の高校に入学した女子と一緒にいたことが多かったので自然と覚えてしまった。電車が同じ方向でよく登下校時に見かけていた。


 そんな感じで話したことは数回あるかもわからない相手と、明日10年越しに会話することになるだろう。もし、採用されたとなれば、一か月ほど一緒に仕事をすることになる。


 縁とは不思議なものだ。まさか高校の同級生と一緒に働く未来が来るかもしれないとは考えもしなかった。



 こんなことがあると、婚活でも不思議な縁があるのかもしれないと少し期待してしまう。とりあえず、明日が楽しみだ。寒くて会社に行くのが億劫だが、頑張って仕事に行くとしよう。

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