第2話 百合百合するための部活が作りたいっ!
キーンコーンカーンコーン。
チャイムが
「マナちゃん、色々とごめんね」
「こちらこそ、ごめんね」
これだけだった。私の
首を振った天使さんは、ようやく笑顔を見せてくれた。彼女の笑顔は、まさに天使のようだった。
「あたし、ミミフェン・スアサンっていうの! ミミって呼んでほしいな」
「ミミ……さんですね」
「えー、
「堅苦しいですかね……? 私にとっては割と
部活って、友達とかと一緒に
……というか、私はその部活しか知らない。それ以外にブカツを意味する単語を知らないし、多分、おそらく、メイビー、ううん確実に、私がイメージしている部活のことを言っているんだろうけれど……。
どうしよう。私には
ジトーッとした目で、私を見つめてくるミミさん。
「……もしかして、部活知らないの……?」
「部活は知ってますよ! 知っているけれど、私やったことないし、そもそも何の部活をするの……ですか?」
「タメ口でいいのに……。あたし、女の子が大好きなんだ! だけどさ、ああやって批判してくるのも事実じゃん。ただ百合百合するよりも、あたしたちのやっていることも、一つの生き方だって、色んな人に知ってもらいたいんだよね!」
「知ってもらってどうするんですか……?」
「知ってもらった後は、なーんにも考えてないよ?」
「
「そっ! ザ・無計画! 否定されなければ、特に考えを
「そっか……うん……」
正直ハチャメチャすぎて行き当たりばったり感がハンパないけれど……。私一人で何か新しいことができそうもないし、何よりミミさんと一緒の方が楽しそう。
くるっくるっ。
ミミさんは、雪のように白く美しい髪を、ツインテを、可愛く
「それで。部活、やるっ?」
私の返事はもう、決まっていた。
「うん……!」
これから始まる部活に夢を
××××××××××
私は、当然その申し出を
聞くところによると、この学校で部活を新たに立ち上げるには、まず
その女の子は、私やミミさんとは違って、出るところが
青黒い髪を一本に束ねている、いわゆるツインテール。長さはミミさんと同じくらいだろうか。
どこをとっても可愛いけれど、一番は、
「生徒指導の先生がお仕事で多忙なので、代わりに
「その前にっ!」
昨日と変わらない快活さで、待ったをかけるミミさん。ツンと尖った耳がプリティだ。
そんなミミさんを、カミーアさんは注意した。
「ここでは静かに」
「おーっと、悪い悪い!」
「悪いと思ってない声量ですね……」
「二つ、質問があるっ!」
「二つも、ですか」
うむ、と
「カミーアちゃんは、あたしたちのことを知っていたような口振りだったけれど、何で知ったのかな?」
「その呼び方をされるとむず
「なるほどね、意図せず有名人になっちゃったわけかー。おけ。もう一つ訊きたいのは、カミーアちゃん、
「どちらも空席だったらしくて、困った先生方から、入学前から推薦されて。断る理由もなかったので、受けさせてもらいましたね」
カミーアさんって相当優秀な人なんだ。
ふわふわな球体の前で腕を組んだカミーアさんは、ケモ耳を
「嬉しい推薦でしたが、実際は私よりも勉強ができる生徒がいたみたいで。ただ、リーダーシップという点を見ると、その子よりも私に任せた方が上手くいくだろう、ということらしく」
その子って……女の子かな?
カミーアさんがどこか納得がいっていないような苦い顔をするなか、彼女をビシッと指差して「わかった!」と得意げになるミミさん。
「その子って、マナちゃんじゃない?」
「えっ……。わ、わ、わ、私っ?! ミミさん、流石にそんなわけ……」
「ミミさんの言う通り、マナさん、あなたのことです」
「本当ですか……?」
「本当です。マナさんだって、勉強ができる自覚はありますよね?」
「まあ、多少は……」
「……その謙遜が、私の胸には突き刺さりますね。っと、すみません、
私の口から活動内容は言い出しづらい。その心の内が伝わったのか、ミミさんが代わりに言ってくれた。
「
……。
カミーアさんはもちろん、私ですら固まってしまった。
端的にすぎて……というか、端的にも言えてなさすぎて、よくわからないどころか、何もわからないよ……?
瞼を閉じて、こめかみを押さえるカミーアさん。わかりますよ、その気持ち……!
「端的すぎて……というか、端的にも言えてなさすぎて、よくわからないどころか、何もわかりませんでした」
カミーアさんは、私の心の内をそのまま言葉にしてくれた。
口先を尖らせ、「ドウシテツタワラナイカナ」と片言でぼやくミミさん。
仕方がないと言わんばかりに首を振って、
「百合の良さを発信したいのっ! 百合百合したいのっ!」
と
仮称百合部の
批判も否定も一切ないけれど、楽しいばかりの活動内容だけれど、それって部活なのかな……?
カミーアさんは、
そして、何かを決心したのか、ミミさんの方に向き直った。
「却下、ですね」
「ええっ?!」
驚きの声を上げて、ミミさんは食い下がった。
「どうして?! まさか、あたしに恨みでもあるの?! あたしに詐欺でもされた?!」
「恨みもないし、詐欺もされてません。単純な話ですよ、部員は最低四人必要なのです」
「部員なら集めれば――」
「それに、いまの話を聞く限りでは、
「でもっ!」
「私も
現実的な答えに、私もミミさんも返す刀がなかった。
その日は、あのミミさんでさえ
私は、胸に引っかかりを覚えながら
――
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