第1話 天使と出会い、悪魔と別れた。
春が来た。高校生になった。
新しい
私は、生まれ変わる。心の
……入学前まではそう思っていた。だけど私は、教室に入った
もちろんその人は、アラナ・チャーショさんだ。
全身の力が抜けた私は、教室の
いまだかつて、これほどの
「かわい子ちゃん。そんなとこで何してんのー?」
「え……?」
声がした
私は、胸を打たれた
彼女の美しさは、たとえるなら
……天使だとすると、美しいという
「何さ、人の顔見るなりボケーっとしちゃって。……ん? もしかして……」
彼女は、何かに気が付いたのか、口もとをさっと手で
「……はーっ! よかったー! セーフ! やけに見つめてくるから、ご
そう言って、彼女は
く、くすぐったい……。
私は、
ガシッ!
ガッチリと、それはもうガッチリと、
「待たれいっ!」
「えぇ……?」
「名を何と
「名……? ……ああ、名前。えっと、マナ。マナ・リリックです……」
「ひえー! マナちゃん? こんなに可愛くて、そんなに可愛い名前なの?! はあ……天は
「あははは……」
「ちょ、待って待って!」
「はあ……」
「マナちゃんは、勉強とかスポーツも
「……どちらも万能と呼べるほど
「むー。なーんか
万能とか、天才とか、よく自分で言えるなあ……。
私だって勉強は
目立っちゃダメ。アラナさんがいる
勇気を振り
視線を
「私と友達になってください」
だけど、目を見開いた彼女を見て、私が言ったのだとすぐに理解した。
「ご、ご、ご、ご、ごめんなさいっ! 私なんかが急にそんな
「いや、えっと……」
「……じゃあ、私はこれで!」
「ちょっと待ってよ!」
私は、彼女の
ホームルームに入っても、
あーあ。こんなにも空は青いのに、こんなにも雲は白いのに、こんなにも世界は
「次は……アラナ・チャーショさん、自己紹介を」
クラスの担任の
教室の中心で、アラナさんが「はい」と言って立ち上がる。座席すらも真ん中。きっと、アラナさんはクラスの
「アラナ・チャーショ。私のことで取り立てて話すことはないわね。だけど、紹介したい人はいるから」
話しながら、突然、私の方を向くアラナさん。そのまま、私をびしっと指差した。
「彼女は、マナ・リリックさん。可愛いでしょう? ね、可愛いのよ、彼女は。……性格の良い私から一つ、クラスの男子に
私は、
これから三年間、下しか見れないことが
また始まっちゃうんだ。あの日々が。
静まり返る教室。誰が
廊下側の後ろの席から、ばんっと机を叩く音がした。黙り込んでいた者たちが
彼女は、
「黙って聞いてたら。あたしの友達を
気の強いアラナさんは、天使さんを
「貶めるだなんてとんでもない。私、優しいから。私は忠告してあげただけよ。私、優しいから。言葉の意味を
「へえ? 言ってくれるね。じゃあ、あたしだって言わせてもらう! あなたの言っていることが真実か否かは
文字通り
「わかった。わかったわ。この
「おかしいって、あなたがそう思うだけじゃん!」
「私じゃなくて、他の人もそう思ってる! 少なくとも中学のときはそうだった!」
「それはあなたの周りにイエスマンしかいなかったからでしょ! 自分が嫌われたくないから、本心を
「
止まらない。止まらない。言い
私は、何もできなかった。彼女は、天使の彼女は、私のために
「古いっ! 考え方が実に古いっ! まさに
「くっ……」
引けを取らないどころか、あのアラナさんが
誰がどう見ても
「どんな言葉を並べようと……あんたは間違ってる! みんなもそう思うわよね?」
ここでようやく、先生が「アラナ・チャーショ、ちょっと来い」と言って、先生とアラナさんは廊下へと消えていった。
張り詰めた空気から解放され、教室は天使さんを
天使さんは「あはは」と照れるばかりで、
ホームルームが潰れた空間は、もはや無法地帯だった。クラスメイトが思い思いの時間を過ごし、なかには私に話しかけてくる子もいた。
こんなこと中学ではなかった。だけど私も、
アラナさんが
「彼女は
先生の言葉に、私は全身を
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます