カースト上位の女子から「女の子が女の子を好きとかおかしいっ!」と言われてハブられたので、高校デビューをして百合を満喫できる部活を作ります!

水本しおん

prologue(プロローグ)

 マナ・リリックは、肩口かたぐちまでびた百合ゆりの花のようなあざやかなピンクのかみ特徴的とくちょうてきな女の子だった。


 マナ・リリックは、運動が苦手だったが、同学年の誰よりも勉強ができる女の子だった。


 彼女は、学校中の男の子から、いわゆる高嶺たかねの花として注目ちゅうもくあつめていた。


 それと同時どうじに、マナのことを良く思わない者もいた。それも学年関係がくねんかんけいなく、あらゆる女子生徒がマナに嫉妬心しっとしんいだいていた。


 中学三年生に進級しんきゅうするタイミングで、とあるうわさが流れた。


『マナは、男の子に言いられても、自分とはり合わないと、告白こくはくをすべてっているらしい――』


 噂は、あくまで噂。それが真実しんじついなかは当事者とうじしゃにしかわからない。


 だが、その不確定ふかくてい情報じょうほうは、マナを糾弾きゅうだんしたい女生徒にとって、これ以上ない批判材料ひはんざいりょうだった。


 正解だろうが不正解だろうが、マナをたたけるなら、マナを引きずり下ろせるなら、そんなことはどうだって良い。そういった不純ふじゅん動機どうき団結だんけつした対抗勢力たいこうせいりょくは、水をさかなのように活気かっきを取り戻し、大義名分たいぎめいぶんたてにマナをハブり始めた。


 マナは、マナ・リリックは、自身じしんおとしめる彼女らにあらがうことはしなかった。メンタルが強い女の子ではなかったのだ。


 そして彼女は、いま自分がかれている状況じょうきょう的確てきかく理解りかいしていた。


 学校とは、小さな社会。社会とは、学校を拡大かくだいしたもの。


 右にならわなければ、集団しゅうだんから排除はいじょされてしまう。たとえ歯向はむかっても、多勢たぜい無勢ぶぜい。抵抗すればするほど、むなしさときずつのるばかり。


 マナは、ひたすら心ない言葉をびせられた。

 マナは、ひたすらえに耐えた。

 マナは、また罵倒ばとうされた。そしてまた、耐えしのんだ。


 彼女が我慢がまんすることで、彼女を排除する動きは次第しだいうすれていくものだと、第三者だいさんしゃはみていた。しかし、それは違った。


 それまで曖昧あいまいだった対抗勢力のおさ決定けっていしたことにより、一同いちどう結束けっそくを強め、マナへの仕打しうちが激化げきかしたのだ。


 リーダーの名は、アラナ・チャーショ。うでにはつばさ下半身かはんしんは鳥のあし金色きんいろ短髪たんぱつ美麗びれいで、女子のなかでは彼女にあこがれる者も少なくなかった。


 アラナは、とある言葉でマナをコケにした。


「あいつが男子と付き合わないのは、女子が好きだからよ。アイツみたいなのを世間せけんでは『百合ゆり』って言う。結婚けっこんして、家庭かていを持つことが正義せいぎとさせる世のなかで、アイツの思想しそうっておろかじゃないかしら?」


 それは、あってはならない発言はつげんだった。


 マナはひどく落ち込んだ。自分の生き方を否定ひていされた気がして、酷く落ち込んだ。


 肩を落とす彼女に追い打ちをかけるように、アラナの取り巻きもまた、マナの思想を蔑如べつじょした。


 マナ・リリックは、ふさぎ込んでしまった――。

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