第62.5話 家族旅行

 ここは、元クローネのお店。

 江田島が居る部屋は、かつて三人が始めて一緒に一夜を過ごした所。

 今、扉の前に立っているのは、ネグリジェ姿のクローネとメアリ。

 意を決して扉に手をかけると、部屋の中から歩いて来る音が聞こえる。

 しばらく待っていると、扉が開き、バスローブ姿の江田島が立っていた。


「どうぞ…」

 江田島に促され、恥ずかしそうに部屋にはいる二人。

「いつもは部屋で待たされる立場だったのに。」

 クローネがつぶやけば、はにかみ顔で頷くメアリ。


 二人をベッドの淵に座らせ、向かい合わせに設えられた椅子に座る江田島。

「さ、何の話から始めましょうか。」

 急にしゃべり始めるクローネ。

「そ、そうねぇ…

 あ、そういえば…」

 慌てて話題を合わせようとするメアリ。

 そして、世間話を始めた二人だが、話に加わろうとしない江田島をチラチラ見ながら、落ち着きのない二人妻クローネとメアリ


 途切れがちな会話が停滞する間もなく、江田島が二人の前に立つ。

「そんな事のために集まったんじゃない!」

 静かな声を発すると、バスローブを脱ぎだす江田島。

クローネとメアリへ乗りかかるようにベッドへ押し倒し、二人の唇を奪う。


 始めにキスをされたクローネ。

 驚きのあまり、目を見開いていたのもつかの間、ゆっくり瞳を閉じ、江田島に唇を任せる。

 続けざまにキスされるメアリ。

 隣で起こった情事に心臓がバクバクしている。

 こちらも、そのまま唇を持っていかれるが、自ずと瞳を閉じ、江田島に唇を任せてしまう。

 あまりの出来事に、緊張する二人と、そんな事お構いなしに激しく妻を求めはじめる江田島。

 三人の長い夜は、こうして幕を開けた。


 ◇ ◇ ◇


 朝日が部屋に差し込み、クローネとメアリの目元を照らす。

「う、う~ん。」

 クローネが目を覚まし、腕を伸ばして伸びをする。

 すると、反対側でもメアリが起きたのか、ゴソゴソしている。

 しかし、今日はいつもと違う。

 隣には、およそメアリらしからぬが横たわっている。

「ご、ご、ゴンゾーさんっ!!」

 メアリが大きな声を出して飛び起きる。

 おそらく、クローネの方に顔を向けたところに、江田島の鍛え上げた身体が横たわっていたので、驚いたのだろう。

 メアリの大声に合わせ、クローネも起きあがる。

「う、ん~ん。」

 江田島がゆっくり覚醒する。

「お、おはよう。

 お母さん。」

 およそ、その容貌からは想像できない、屈託のない少年のような笑顔で挨拶してくる江田島。

 そんな夫の頭を撫でようと二人が手を伸ばすと…

 胸元がまる見え状態。


 慌てて身嗜みを整え始める二人。

 その頭に手を置く江田島。

「ハァー、すっかり堪能した。

 ありがとね、お母さん達♪」

「ふんぬっ!!」

 夫の心ない発言に妻達だった。


 ◇ ◇ ◇


 ちなみに、昨夜の秘め事の一部始終を見ていた奥様が三名ほどいらっしゃいまして、こちらは、少々欲求不満が溜まってしまいました。


「今夜は、私らが襲撃するわよ!」

 金髪が言えば。

「異議なぁ~~しぃ!」

 猫耳が同調する。

「そ、そんな。

 さ、三人同時だなんて…」

 躊躇する黒髪。

「じゃぁ、貴女は子供いらないのね。」

 念を押す金髪。

「いえ…欲しい…です。」

 俯きながら返事をする黒髪。

「じゃぁ、今晩結構っ!!」

 猫耳の掛け声に、三人が小さく『オーッ!』と答える。


 今は恵みの季節。

 子宝に恵まれるという、不思議な言い伝えのある時期。

 そういうことも手伝ってか、この時期はのである。

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