第7話 移住
ここは、クローネのお店。
二階の食堂。
「もともと、私達は
メアリが席を立ち話し出す。
江田島とクローネ達はメアリ達と向かい合わせに座っている。
「亜人たちの村を作り、生活していました。
ですが、ある日ディノシス達を従えたシプロア人達に襲われ…
周囲の村の亜人ともども奴隷として連れ去られます。
ところが、事情が変わったらしく、私達は、ディノシス達のエサとして、あの森に連行されて…。」
「で、わしがそこに現れた…
と言うわけか。」
「はい、その通りです。」
「そうだったのか…。」
「はい、貴方は私達の命の恩人です。」
「…」
メアリ達が江田島に頭を下げると、顔を真っ赤にして照れる江田島。
「であれば、湖の傍にはメアリさん達の村の痕跡が残っているの?」
クローネが聞いてくる。
「分からない…。
でも、連行される時には、家々は放置されていたし、焼き討ちを受けたわけでもないし…。」
メアリが答える。
「でだ、明日はわしとミルは飛ぶとして、メアリ達は湖に向かってもらえるのか?」
「大丈夫。
村長さんにも了承を取ります。」
「頼む!」
話は終わり解散となる中、メアリは江田島の
「どしたい?」
「あ、あのね…。
私…実は…。」
次の言葉を紡ぎだせないメアリの頭をそっと撫でる江田島。
「人には、言えない事と、言いづらい事がある。
…どちらか知らんが、言いたくなった時に言ってくれればいい。」
「…ごめんなさい、ゴンゾー。」
「構わないよ。」
メアリの頭から手を離し寝室に戻る江田島。
「明日も飛ぶからな、今日はこれで失礼するよ。」
その夜、メアリ達は自分たちの身の振り方について話し込むことになる。
◇ ◇ ◇
翌朝、茜色の空に零戦が舞い上がった。
「よし、ミル。
街に向かうぞ。
例のトカゲ擬きを見かけたら、片っ端から機銃掃射するぞ!」
「了解、ゴンゾー!」
だったが…。
「なんだぁ?
このトカゲ擬きの数!」
「いけない!
ノイスを襲撃しようとしてる。」
ノイス街道伝いに飛んでいると、ごく近くの森からディノシスが大量に発生し、ノイスに向かって走っている。
「こりゃ、こっちを叩くのが先だな!」
言うが早いか、ディノシスの先頭集団の鼻先に爆弾を落とすべく、急旋回から水平爆撃の態勢に入る零戦。
「ヨーソロー、投下!」
爆弾は零戦を離れ、ディノシスの先頭集団へ…。
激しい爆音とともに、土雲が舞い上がり、何匹ものディノシスが宙に舞う。
いきなりの爆撃で、行き場を失ったディノシス達はパニックを起こし、四散する。
その様子を見ていたミルが江田島に頼み込む。
「村に向かってる一団を始末できない?」
「まかっとけぇい!」
機を旋回し、ノイスに向かっているディノシスの前に零戦を割り込ませ、機銃掃射を開始する。
飛び散るディノシスの四肢。
二度三度と旋回しながら、機銃掃射を続ける零戦。
三度目の機銃掃射で、ノイスに向かっていた一団も森へ引き返し始め、躯を残して街道は静寂を取り戻す。
「一度村に戻って、この事態を伝えないと。」
「そうだな、ちょっと手荒な操縦になるが、我慢してくれミル!」
「了解。ゴンゾー!」
◇ ◇ ◇
零戦の早い帰還に驚く村人たちだったが、事情が分かると、村人それぞれが準備に取り掛かる。
なお、もとディノシスだった、骸の山には、冒険者が向かい、手頃なアイテムを剝いだうえで、焼却する運びとなった。
そして、零戦は再度爆装し、街に向かって飛び立った。
サイネスの上空に差し掛かると、ディノシスの皮を馬車に着けた一行が街の裏から湖に向かって動き出している最中だった。
「トカゲ擬きの皮を装甲に仕立て上げるとは、考えたな…。
だが。」
街の陰からディノシスの一団が現れる。
「臭いを消さないと、仲間を呼んでしまう…
ってな!」
零戦を宙返りさせ、ディノシスの一団を機銃掃射。
「ゴンゾー、すごぉ~~い!」
「へ、得意得意!」
そして、サイネスと森の境に零戦は向かう。
こちらでも、ディノシス団体が、サイネスの手前にある防御策の所で、騎士団ともみ合っている。
「よし、このまま機銃掃射する。」
零戦を低空侵入させ、ディノシス団体の側面から機銃掃射を開始する。
機銃によって飛び散るディノシスの四肢、機銃弾が飛んだあとに、零戦が通過する。
すると、風圧でディノシスの遺体と遺体に煽られ吹き飛ばされるディノシスもいる。
零戦通過後、この機を見逃さず、矢を射かける騎士団。
この一撃で総崩れとなったディノシスは森に引き上げ始める。
森に引き上げるディノシスに追撃をかける零戦。
群れの半分が森に入ったところで、急上昇をはじめる零戦。
宙返りと同時に急降下爆撃の体制へ。
森と平原の境界に爆弾を投下し、零戦は退避。
激しい爆音と土煙、森の木々とディノシスの肢体が宙を舞っている。
生き残ったディノシス達は悲鳴をあげ森の奥に消えて行った。
再度サイネスに戻る零戦。
ミルは矢文を街に落とし、零戦はノイスに戻る。
騎士団がいつまでも零戦へ手を振ってくれていた。
◇ ◇ ◇
「ねぇ、ゴンゾー…。」
「どうした、ミル?」
帰りの機上でミルが江田島に話しかけてくる。
「あ…あのね…。」
「お、おう?」
「もし、私達が貴方の前から居なくなったらどうする?」
「探す!!」
「へっ??」
「見つけて、フン捕まえて、
「
「それは、わからん!!」
江田島の回答にコロコロと笑いだすミル。
「何かおかしい事を言ったか?
ミル。」
「いえ…。
すいません。」
しばらく沈黙の後、ミルがポツリポツリと話し始める。
「私達は奴隷…
しかも、主人の慰み物…。
哀願道具以下…。
犯されて殺されても…。
文句さえ言えない…。」
「おい、止めろ!」
「そして、私達は捨てられた…。
でも、ゴンゾーが拾ってくれた…。
でも、ゴンゾーは、私達の相手をしてくれない…。」
「相手??」
「夜伽…」
零戦がガクンと揺れる。
「あ、危なぁ~~。」
「す、すまん。」
ミルが冷や汗を流し、江田島は心臓をバクバクさせている。
「この話は、別の機会にしてくれ…。」
「。。。」
江田島の返答にミルは黙り込んでしまう。
零戦はノイスに引き上げていく、静かな空気に包まれて。
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