特別話 出張ラジオ編

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 この話は、短編スピンアウトにて作成されたお話です。

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 時報の音と共に軽快な音楽がラジオから流れ出す。


「みぃ~なぁ~さぁ~~~んっ!金曜の午後三時ですよぉっ!」

 アルが軽快にトークを切り出し。


「お待たせしましたっ!楽しい時間の始まりですよぉ~~~!!」

 エルもノリノリで話を合わせていく。


「じゃぁ、今日も元気に」

 ナオキの合図を受けて


「ナオキの電リクアワー…」

「始まりまっす!!」

「始まるわぁ~!!」

「始まるぜぇ~!!」

 三人の声がハモり番組がスタートする。


「キャァーーーアル様ぁ~!!」

「エルちゃん、可愛いぃ~!!」

 いつもの、そして拍手喝さいが会場を埋め尽くす。


「え~っとぉ、今日は西シプロア法国首都アルザリアからお送りしてますぅ。」

 アルの解説


「アルザリアのみなさん、こぉ~ん~にぃ~ちぃ~わぁ~!」

 エルの挨拶に会場のボルテージもいきなり全開!


「それじゃぁ、早速リクエストに答えるぜっ!…では、まずこちら。」

 ナオキが紙を取り上げる。


「リクエストを頂いたのは、アルザリアの…トムさんとボブさん。

 って、トムさん、ボブさん来てますかぁ?」

 ナオキの問いかけに会場の片隅で手が挙がり、その周囲で拍手が巻き起こる。


「お二人は、親友ぅ?

 それとも、兄弟?」

 兄弟という返事が帰ってくる。


「そうですかぁ、兄弟ですかぁ…。

 ところで、告白するって本当ですかぁ?」

 どっと笑い声が湧き、兄弟の近くにいる二人の女性も俯いてしまう。


「あ・・・すいません、うちの旦那が迷惑かけました。」

 ナオキの頭を抑え、アルが頭を下げると、さらに笑い声がこだまする。


「では、リクエストにお答えしましょう。

 山中のりまさで『Wing Love』です。

 どうぞっ!!」

 エルの曲紹介が終わり、曲が流れ出すと会場は静まり返るが、そこかしこでソワソワし始めるカップルたち。

 そして曲の間奏に入ると会場の所々で告白タイムが始まっている。


 曲の後半でサビがリフレインされる頃には、所々のカップルでポーズを決める彼氏たちと、その姿を惚れ惚れ見ている彼女たち。


 演奏が終わると、そこかしこで拍手が起こっている。

 どうやら、トムさんとボブさんも無事にプロポーズできたようだ。


 ちなみに、結果が見えないラジオの前のリスナーは、さんざっぱら焦らされて、オカンムリのようだ。


「それじゃ、どんどんリクエストに答えていくわよぉ。」

 アルが紙を取り出す。


「こちらは、神聖マロウ帝国にお住まいのケビンさんから。

 まぁ、今日が誕生日ということで、お祝いして欲しいという事ですね。」


「おめでとうございま~~す。」

 三人と会場の聴衆が声を合わせて、お祝いの言葉を発する。


「それでは、リクエストにお答えします。

 会場のみんなも一緒に踊ろうぜ。

 アース・ウィンド・アンド・ファイアーで『Let's Groove』です。

 どうぞっ!!」

 ナオキの曲紹介の直後から流れはじめるマシンボイスに合わせて、会場も波打つように動き出す。

 すると、アルとエルが舞台に躍り出てダンスを始める。

 会場は歓声が湧き、ヒートアップする。

 会場はさながらダンスホールの様相を呈してくる。


 おそらく、ラジオの前のリスナーの何人かも、場所もわきまえず踊っていることだろう。


 さて、曲が終わり、息の上がっているアルとエルを見ながらニヤけるナオキ。

「んじゃぁ、身体も温まった所で、もう一曲踊ってもらいましょう。

 リクエストは、ア・ハの『Take on me』です。

 こちらは、スフラン王国お住まいのミーヤさんからです。

 何でも、今日は街のお祭りということで、友達とこの曲で踊りを披露するということです。

 ミーヤさん、聞いてるかなぁ?」


「聞いてまぁ~~すぅ!!」

 DJ以外の女性の声が会場にこだまする。


「準備はOK?」


「OKですぅ~!」

 ナオキとミーヤの掛け合いにヒートアップする会場。


「それじゃぁ~『Take on me』です。

 どうぞっ!!」

 音楽が流れ出すと、会場は歓声が巻き起こり、アルとエルも再び踊り始める。


 きっと、ミーヤたちも踊っていることだろう。

 それ以外のリスナーも何人かが踊っていそうだ。


 ダンスも一段落し、熱気冷めやらぬ会場を一望するナオキ。


「それじゃ、小休止と行きましょう。

 ここも、リクエストにお答えして行きます。

 曲は、溝口 肇で『図書館音楽』です。

 こちらは…おお、西シプロアお住まいのダイアナさんですっ!

 ダイアナさん居ますかぁ?」

 会場に響き渡るナオキの声に、会場最前列の女性がゆっくりと手を挙げる。

 すると、エルが現場に降り立ち、彼女を引き連れて戻ってくる。


「この曲は何処で知りました?」

「あの…学校の図書室…です。」

 ワクワクしながら質問するエルに恥ずかしそうに答えるダイアナさん。

「何かありそうですねぇ?」

 アルの質問に赤面してしまうダイアナさん。


「それでは、ダイアナさん、曲紹介をどうぞ。」

 ナオキが水を向けると、消え入りそうな声で答えるダイアナさん。

「みなさん、聞いて下さい!

『図書館音楽』です。

 どうぞ!!」

 曲紹介で絞り出した声に、会場から温かい拍手が起こり、曲が始まる。


 そして、曲の裏側、リスナーの聞こえない所で、ダイアナさんの恋バナに沸くアルとエルと会場の面々。


 ◇ ◇ ◇


「さて、お送りしてきましたナオキの電リクアワーも、お別れの時間となってきました。」

 ナオキの言葉に会場が残念がる。


「それでは、本日最後のリクエストです。

 リクエストを頂いたのは…スフランにお住まいのミルーシーさんからです。

 お掛けします曲は…

 皆さん、今日はいい夢を見て下さいね。

 シューマンで『トロイメライ』です。」

 アルが最後の曲紹介を行うと、流れ出すピアノの調べ。


 DJ三人は立ち上がり、舞台中央に集合する。

 演奏が終わりフィナーレを迎えると、会場から歓声が戻ってくる。

「それでは、本日の放送はここまで。」

 エルが手を降っている。


「皆さぁ~~ん、来週も聞いてねぇ~~~。」

 アルも手を降っている。


「んじゃぁ~。みんなぁ~、また来週ぅ~~~!!」

 大歓声の中、放送は終了した。


 会場の方では、そのままジャンケン大会が始まる。

 勝者は漏れなく司会者との握手会に参加できるということで、並々ならぬ高揚感が漂っている。


「それじゃ、始めよっかぁ~~。」

 ナオキの言葉に歓声が湧く。


「せぇ~のぉ~、じゃぁ~~ん~~けぇ~~ん~~…ポンっ!!」

 エルが出した結果に一喜一憂する会場。


 ◇ ◇ ◇


「今日は大いに盛り上がったようだね。」

「こちらこそ、このような機会を頂き、感謝申し上げます。」

 国王の言に礼をするアルとエル、一歩控えてナオキは頭を下げている。

「しかし、いつもあんなに賑やかなのかい?」

「ええ、まぁ。」

 領主の質問をはぐらかすアル。その様子にクスクス笑う領主。

「いや、失礼。」

 気を取り直す領主とアル。

「今夜の宿屋はどこも満室だろう。

 こちらに泊まり、くつろいでくれ。」

「陛下のご厚意、感謝いたします。」

 アルが答えると、メイドがエスコートして客間に通される三人。


 見れば、天蓋付きの巨大ベッドが目の前にある。

「こ…これってぇ…。」

 ナオキが立ちすくんでいると、アルとエルが二人がかりでナオキを担ぎ上げ、ベッドに放り込み、服を脱ぎだす姉妹。


「も…もしもぉ~し…。」

 ナオキが泣きそうな声になるが、気にする風もなくナオキを押し倒すアルとエル。

「頑張るわよっ!!」

 アルとエルはニコニコしている。


 夜は長いのだった。

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