第41話 新しい一日

 時報の音と共に軽快な音楽がラジオから流れ出す。

「みなさん、こんにちは。

 今日の電リクアワーは、ミクロニアというオアシスからお送りします。」

 アルが切り出せば


「マッケンジー王とクリス王妃の結婚式と披露宴の生中継で~~~す!!」

 エルが続き。


「みんなで一緒にお祝いしようぜぇ~!」

 ナオキも続く。


「それでは、本日も出張電リクアワー…」

「開幕しま~す!!」

「開幕よぉ~!!」

「開幕だぁ~!!」

 三人の声がハモり番組がスタートする。


 ◇ ◇ ◇


「早速ではありますが、新郎新婦の入場で~~す。」

 グノーのアヴェ・マリアが流れ出し、会場もそわそわしだす。

 白いモーニングコート姿のマッケンジーと、マーメイドタイプのウェディングドレスに白いベール姿のクリスが入場してくる。


 中央広場に特設された結婚式場。

 二人はゆっくりと式場の中央に向かう。


 曲が終わると、司式の祭祀が結婚式を執り行う旨の宣誓を行う。


 式が終わり、お色直しに入る新郎新婦。

 会場では、二人の婚礼を祝い、様々な曲のリクエストが飛び込んでくる。


 アルとエルが楽しそうにリクエストに応えながら、自分たちの結婚式エピソードまで披露してしまう一幕もあり、会場は大いに沸き、披露宴を迎えることになった。


「今日は私達の門出に、お集まり頂きありがとうございます。」

 マッケンジーとクリスが高砂で一礼する。


「どうか、一緒に楽しいひと時を、共に楽しみましょう!」

 力強いマッケンジーの宣言を受け、観衆も盛大な拍手で答える。


 ロメオ三世伯爵の祝辞

 スフラン王国国王の祝辞

 西シプロア法国国王の祝辞

 …隣国の錚々たる王侯、諸侯からの祝辞が続き、そのたびに拍手が沸く。


 最後に神聖マロウ帝国のニコライ六世が祝辞を述べる。

「マッケンジー殿、クリス殿。

 ご結婚おめでとうございます。

 今回は、私が直々に引導…もとい、司式をしたかったのだが、諸般の事情で名代を立てることになってしまい、申し訳なく思っている。

 近々ご息女がお生まれになると伺っている。

 彼女の祝別には是非伺いたいので、その際には遠慮なく申し出てもらいたい。」


「ニコライ六世陛下から、お言葉を頂き感謝いたします。

 娘が生まれた暁には、使者を立てますので、娘の祝別を是非お願いいたします。」


 娘の誕生と聞いたところで、参列者からは、お世継ぎの誕生を祝う声があちらこちらから上がり、聴衆もこぞってお祝いのメッセージを寄せた。


 穏やかな曲が続き、和やかな午後は過ぎて行く。


 ◇ ◇ ◇


「…はぁ、もうクタクタ。」

「そうね…エルも、ご苦労様。」

 椅子に腰かけたエルをねぎらうアル。


「もぉ~~~、結婚式のプロデュースは勘弁してぇ~~~!!」

 地べたに大の字になって寝っ転がり、大声で愚痴るナオキ。


「それはダメぇ~~!」

 アルとエルが口をそろえて、ナオキの愚痴を抑え込む。


 しかし、ナオキの意向に反して『出張結婚式プロデュース』のオーダーは、その後も定量的に入ってきている。


 おまけに、結婚式を国交樹立のきっかけ作りにする、「結婚外交」なる言葉が広がったこともあり、各国の王侯、諸侯が積極的に式辞を述べることが増え、その対応にナオキ達は苦慮することになる。


 ただ、この王侯、諸侯の祝辞の発信に伴う対応を通して、ナオキは過去にないほど、王侯、諸侯に顔の利く勇者となった。


 また、出張などで地方行脚していた結果、地域住民にも親しみをもって接してもらう機会も増え、本当の意味で「世界一の勇者」になってしまう。


 地べたに寝転がる旦那を、姉妹つま達が二人がかりで抑え込んでいる。


「はぁ~~。音楽だけでのし上がる勇者が誕生するとは…。」

 あきれ顔のバレンタイン。

「まぁ、殺伐とした世界が、多少なりとも音楽によって様変わりするのであれば、それもまた一興ですね。」

 誰に語り掛けるわけでもなく、一声呟く、三人のジャレ合いを満足そうに眺めたティーノは次元門ゲートを使って姿を消す。

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