第34話 番組を一新します。

 リクエスト番組を始めて半年。

 その番組が思わぬ進化を果たし始める。


 元々ラジオには、双方向の通信ができるようにマイクもつけていたのだが、それに気づいた人々が、リアルタイムで楽曲応募リクエストを始めたのだ。


 もっとも、店舗の雰囲気や目的に合わせた、音楽のリクエストが中心となっているだけなのだが、番組の一つのサービスとして定着してきた。

 放送時間も、午後六時頃から午後三時に変更。

 時間も一時間から三時間に拡大。

 そして、DJも、ナオキ、アル、エルの三人で分担するようになった。


「よぉ~し、じゃ行くぜ。五…四…三」

 指が二本

 一本とカウントダウン

 そしてキューの合図を送るナオキ。


 時報の音と共に軽快な音楽がラジオから流れ出す。

「さぁ、週末金曜日がやって来ました。」

 アルが切り出せば

「みんなぁ~げんきだったかなぁ~??」

 エルが続き。

「待たせたぜぇ!!

 ナオキの電リクアワー!始まりだぁ!!」

 ナオキも続く。


「みんなからの電波とお便り…」

「待ってま~す!!」

「待ってるわぁ~!!」

「待ってるぜぇ~!!」

 三人の声がハモり、番組がスタートする。


 ◇ ◇ ◇


 これが、大ヒットしてしまい、彼らの知名度はうなぎ登り、ラジオのオーダーにも拍車がかかる。

 もっとも、ラジオの生産は家内手工業ではすでに需要に間に合うはずもなく、神聖マロウ帝国への輸出を開始した直後から城門の近所に用地を取得し工場を立て、そこで生産を始めた。

 ラジオは飛ぶように売れていく。

 工場労働者も採用を重ね、気がつけば、五十人からの人が生産に従事している。

 領主も新たな産業の誕生で税収もがっつりでホクホク顔である。


 いわゆる通信障害が有れば、を設置しながら、ラジオの視聴範囲を拡大させていくナオキ達。

 また、放送機材のに伴い、自宅スタジオで放送していた番組が、全国どこからでも番組放送が可能となり、旅行用ワイバーン(おでかけセット)をスフラン王国国王から下賜かしされ、移動も容易になってきた。


 ◇ ◇ ◇


 ので…。


「よぉ~し、じゃ行くぜ。五…四…三」

 指が二本

 一本とカウントダウン

 そしてキューの合図を送るナオキ。


 時報の音と共に軽快な音楽がラジオから流れ出す。

「さぁ、週末金曜日がやって来ました。」

 アルが切り出せば

「今日は、スフラン王国、王都リーペからの放送よぉ~~!!」

 エルが続き。

「近くの人は、遊びに来てくれると、みんな張り切れるぜぇ~!!

 それじゃあ…」

 ナオキも続く。


「ナオキの電リクアワー!…」

「始まりまっす!!」

「始まるわぁ~!!」

「始まるぜぇ~!!」

 三人の声がハモり番組がスタート。


 すると、観衆の拍手と共に聞こえてくるあの声…。

「キャァーーーアル様ぁ~!!」

「エルちゃん、可愛いぃ~!!」

 姉妹のファンが行く先々で、を張り上げるのだ。


 ラジオの普及と、情報収集を兼ねて始めた地方行脚で、彼らの知名度は更に上昇、もはやうなぎどころか、状態である。


 おまけに、行く先々で受ける歓待も盛大になる。

「アルお嬢様、エルお嬢様。

 よくお出で下さいました。」

「お招きいただき、感謝しております。

 。」

「奥方様にも、ご健勝の事とお喜び申し上げます。」

「ところで、くだんのドラゴン退治の話を聞かせてくれまいか?」

「私どものつたない話でよければ…」

 すっかり、貴族相手も板についた姉妹。

 元々貴族の令嬢だけに素養は持っていたのかもしれない。


 んで、ナオキ君はと言えば、控室に通され。

「おい!

 は、ここで待機してろ!!」


「へ~~い!

 …って、なんだけどなぁ…」

 こういう時に、世の理不尽を感じるナオキ君だった。


 ◇ ◇ ◇


 場所は変わりナオキ君家。

 メグは息子の子育てに奮闘しているが、最近は楽しみが一つ増えた。

 レッシーが懐妊したのである。


 ボチボチ安定期に入り、幾分落ち着いたレッシーと、育児話にも花が咲く。

「社長!」

 玄関から声が聞こえる。

「は~~い!」

 玄関に向かうメグ。彼女もお腹周りが少しふっくらしている。

 工場に隣接して建てられた屋敷。

 ここがナオキの家だ。


 イメージとしては、家主付きの社宅が高級マンションの形態になっており、従業員用の、各部屋のユニットバスとは別に、も設置され、三々五々食堂や浴場を利用する従業員と彼らの家族ずれがよく見られる。


「どうしましたか?」

「実は…。」

 工場の製品作りは、今でもメグが取り仕切っている。

 一頻ひとしきり話しも終わり、従業員は工場へ戻り、メグも部屋に戻ってくる。


「何のお話しでしたか?」

「また、ラジオの追加が入ったそうよ。」

「ナオキさんたち頑張ってるみたいですね。」

 お腹をさするレッシー。


「でも…、私達も《・》可愛がってもらわないと!!!」

「そうですわ!!」

 二人そろって、ふくれっ面になり、顔を見合わせ、コロコロ笑うメグとレッシーだった。

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