第33話 リクエスト開始

 中継器も無事完成し、神聖マロウ帝国でも快適なラジオ生活が送れるようになった頃、スフラン王国でも少しずつラジオ生活の普及が始まっていた。


 そして、いよいよ記念すべき第一回目のリクエスト番組が放送される日がやって来た。

 奇しくも日時はナオキがDJバイトでやっていた番組の時間に重なる事となった。


(緊張するなぁ…。)

 ナオキはマイク片手に時間が来るのを待っていた。


 ◇ ◇ ◇


「何処の国でもそうだが、この世界には明確な時間区分が無い。」

「そ、そうなんですか?」

「ええ、ここの世界では、一日を六等分するくらいですからね、それも日の出から日の入りまでの範囲で…。」

 ナオキの時間間隔とこの世界の時間間隔が大幅に異なる事を、クリスとレッシーに聞かされ、不安になったナオキ…だが。


「こっちの都合で、勝手に時報を鳴らしてしまえばいいのよ!」

 レッシーの一言で踏ん切りがついた。


 ◇ ◇ ◇


 時報の音と共に軽快な音楽がラジオから流れ出す。

「皆さま、こんにちは。

 週末の金曜日、いかがお過ごしでしょうか?

 本日は、皆さまから頂いたリクエストにお答えして、楽曲をご紹介しながら曲を掛けていきたいと思います。

 これからのひと時をゆっくりお楽しみ下さい。」


 緊張のうちにナレーションも済ませ、そつなく番組をこなしていくナオキ。


 一時間後、ドッと疲れた顔の中にも充実感に満たされたナオキがそこにあった。

「ダ~リン

 お疲れ様!」

「ほ、ほ、…惚れ直しました

 ナオキさん。」

 陽気なエルと、赤面気味のアルがナオキをねぎらい、飲み物を渡す。


「ありがとう…。

 でも、なんかシックリこないんだよなぁ…。」

 考え込むナオキ。

「じゃ、じゃぁ、来週は私がやってみてもいい?」

 エルがノリノリでナオキに聞いてくる。

「ああ、やってみな。

 …これも試行錯誤の一環だ!」

「ありがとう、ダ~リン!」

「わ、わ、私も参加していいのよ!」

 アルがモジモジしながら言うと、ナオキがアルを抱きしめ

「うんうん、じゃ、再来週お願いするよ。」

 と言う。

「あ~~~~~、お姉ちゃんズル~~~い!!」

 ナオキとアルの間に割り込むエルだった。


 ◇ ◇ ◇


 さて、翌日からリクエストが続々とナオキ君家に届けられる事となった。

 …よくよく見れば、領主夫人からもお便りが届いている。


 最終的には、先週の倍ほどの紙が届いたのである。

 そして、いつもの時間がやって来る。


 ◇ ◇ ◇


 時報の音と共に軽快な音楽がラジオから流れ出す。

「みんなぁ~、こんにちはぁ~。

 エレノアールこと、エルだよぉ~。

 週末の金曜日になったけど、みんな元気だったかなぁ~~?

 今日は、みんなのリクエストをもとに、楽曲を選んでみたの。 

 みんな楽しく聞いて行ってねぇ

 じゃぁ、はっじめ~る~よぉ~~~!!」


 明るいハキハキ声で、滑り出す番組。

 選曲はめちゃくちゃ明るいものばかり…

 偏り過ぎのきらいもあるが、番組としては立派にまとまっていた。

「もぉ~~~、最高ぉ~~~~~!!」

 エルちゃん絶好調。

 あまりの絶好調ぶりに、アルとナオキはため息をつく。


 ◇ ◇ ◇


 んで、翌日。

 リクエストが半端なく増えだした。

 スフラン王国の他の街や神聖マロウ帝国からまで届きだす。


 週の中盤を待たず、前回を上回るリクエストの量。

 ここまで来ると、集計に難儀しそうな勢いである。


 ◇ ◇ ◇


 時報の音と共に軽快な音楽がラジオから流れ出す。

「皆さま、こんにちは。

 週末の金曜日、皆さまいかがお過ごしでしょうか?

 本日も、皆さまから頂いたリクエストにお答えして、楽曲を掛けて参ります。

 私はアレグリッサと申します。

 これからのひと時を皆さまと共に過ごしてまいります。

 どうぞ、よろしくお願いいたします。」


 穏やかにナレーションを済ませ、曲の合間に説明をさりげなく入れるところに淑女然とした好感が持てる。

「あ~、楽しかった!」

 ニコニコしているアル。

 選曲も手堅く、全体に上品な番組になった。

「さすが、お姉ちゃん!!」

 エルも嬉しそうにしている。

(この二人、アシスタントに最適かも…。)

 ナオキがワルイ顔になってニヤニヤしている。

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