第32話 広がり始める世界

「お~~い!メグぅ~~~。」

 朝も早くから、玄関で元気な声が聞こえる。

 名前を呼ばれて玄関に向かうメグ。

 玄関にはクリスがやってきていた。


「まぁ、クリス様。」

「すまないねぇ…。

 ちょっと問題が発生しちまって…。

 レッシーも居るかい?」

 メグの顔を見るなり、ずかずかと家に上がり込むクリスと、慌てて玄関を閉めて後に続くメグ。


 食堂まで来ると、赤ちゃんをあやしているレッシーが居る。

「おはようございます、クリス様。

 それで、今日は…」

「ラジオが繋がらないとクレームが来よった!!」

 レッシーの話を遮り、本題を展開するクリス。


「ラジオが繋がらない??

 …あっ!」

 レッシーが思い当たる節に行き当たり、クリスがニヤリとする。

「魔法でも減衰があるという事でしょうか?」

「まぁ、今回の話はニコライ六世直々に回ってきた話なんだがね…。」

「確かに、魔法が広範囲に拡散されるようなことはありませんからね。

 しかも、広範囲に魔法をかけるとなると魔力も必要になりますし…。」

「じゃが、今回の仕掛けは、そんな膨大な魔法を駆使するようなものではなかろう?」

「ええ。」

 クリスとレッシーは現状を見据え、何がしかの解決策を模索している。


「魔法って、増幅みたいな事出来ないですか?」

 ナオキが寝室から出てきて会話に割り込んでくる。

「ゾウフクとは何だい?」

「減衰って、単語が出てきてたので、増幅も出来るのかと思ったもので…。」

 増幅について説明を始めるナオキ。

 その話の途中で、ハッとするレッシー。

「あるわよ、方法…

 うん、あるある。」

 レッシーは、どうやら解決策に行きついたようだ。

「レッシー

 どうすればいけそうなんだい?」

「ええ、クリス様…

 これをですね…」


 開発作業に取り掛かるクリスとレッシー、その様子を赤ちゃんをあやしながら楽しそうに見つめるメグママとナオキ。


 ちょうどその頃、寝室から起き出してくるアルとエル。

「何~~、騒々しい…。」

「あ、クリス様。

 おはようございます!」

「おはよう、アル、エル」

 二人の顔を見てニヤッと笑い、作業に戻るクリス。


「これは…外で朝ごはんかしら。」

「そうだねぇ、お姉ちゃん。」

「よぉ~しぃ、着替えたら、俺と一緒に朝飯を食べに出るか?」

「あ、…ええ、そうする。」

「わ~~い、ダ~リンとお外でモーニング!」

 アルとエルはいそいそと部屋に戻って行った。


 それを見送るナオキの横で、面白くない感全開のメグがジト目をしている。

「メグは…今度な、今度…。」

「解ってますよ、あ・な・た!」


 三人はリクエスト結果の精査も兼ね、外食に出かける。

 あ…レッシーさんとクリスさんまでジト目で見送ってますね。


 食事から三人が戻ってくる。

 どうやら、リクエストの絞込みも終わり、音楽の編成もまとまったようだ。

「以外よねぇ…

 あんな曲が一番人気とか…。」

「え~~、私はとっても好きだよぉ。」

 アルとエルが講釈をしている中、一人考えながら歩いているナオキ。

(これは、電リクやってもいいのかも…。)


 食事中に電話ケータイが鳴り、近隣の店舗と屋台で頼まれていた買い物も済ませ、自宅に帰るナオキ達。

 自宅に戻ると、食台は片付き、食事の準備が整っていた…。

 一部のお皿は空席のまま。

(ああ、これが、屋台の肉料理を注文してきた理由なんだ。)

 ナオキはため息をついて荷物をメグママに渡す。

 ちゃっかりとクリスはご相伴に預かるつもりのようである。


「ナオキよ!

 ラジオの不通は改善できそうじゃぞ。」

「そうですか…。

 良かったです。」

「メグに中継器を作ってもらう事にした。

 …んだが、部材がまたちょっと足らんでのぉ…。」

「解りました。

 頑張って魔石を集めてきます。」

「うむ、期待しておるぞ、若旦那!!」

「はぁ…。」

 ナオキ君ってば、不幸!

 って、アルとエルもゲンナリしてますよ。

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