第31話 リピート

 すっかり、ツィベネでは語り草となってしまった、結婚戴冠式ゆうしゃまつりから一ヶ月が経った。


 音楽への関心も一気に高まり、店舗にラジオを置くところがまたぞろ増えだし、店舗にとどまらず、領主の邸宅をはじめ、騎士たちのお宅、騎士団官舎、各種ギルド事務所に至るまで、ラジオの普及が加速した。


 当然、どこでも音楽を聞ける事となり、くだん結婚戴冠式ゆうしゃまつりを聞いて、やってくる人達もこぞってラジオを購入して帰って行った。


 神聖マロウ帝国に至っては、皇帝の依頼もあり、正式な輸出品としてラジオが出荷されていった。

 当然、ナオキ君のお店が潤えば、領主の税収も上がって来るので、もう、領主様も絶賛ウハウハ状態である。


 ◇ ◇ ◇


 そんなナオキ君家の夕食時

「そういえば、最近増えてきたのよねぇ…。」

「どうしたのお姉ちゃん?」

 アルとエルがご飯を食べながら話している。

「今日、買い物に行ったお店で、『二日前にかかっていた音楽をもう一度流して欲しい…』って。」

「そうなの?」

「ええ。」


 アルたちの話に割り込むメグママ。

「今のところ、流す音楽って、同じものってほとんどないんでしょ?」

「ああ、少しでも音楽を知ってほしいので、日替わりでジャンルを決めて流してる。」

 ラジオで流す番組内容についてレッシーが質問すれば、ナオキが答える。

「実は、私も同じ相談を受けたのよね…、領主夫人に。」

 メグママが物憂げに告げる。

「クリス様も、お気に入りの曲を又聞きたいって言われてましたね。」

 レッシーがメグママの援護射撃をする。


「ねぇ、あなた…。」

「なんだい、メグ?」

「そろそろ、やってみてはどうかしら?

 リスナーのリクエストに答える番組…。」

 メグがウィンクをすると、突然ワルイ顔になるナオキ。

「そうだなぁ…

 でも、リクエストをどうやって募集しようか…。」

「そんな事だったら、私とエルで、店舗から聞いて回ってもいいわよ!」

「うん、楽しそう!

 ダ~リン、私も頑張るよ!」

「そ、そうか…じゃお願いしようかなぁ!」

 すっかり元の顔に戻ったナオキの返答に、顔を見合わせ頷くアルとエル姉妹。


 夕食後の余韻を楽しむ一同

「やっぱり、結婚戴冠式ゆうしゃまつりの影響が大きかったのかしら?」

「多分そうね。

 行く先々でご婦人たちが異口同音に『羨ましい結婚式だった』って言われるし…。」

 メグママとレッシーは、買い物に行った先の店員さんや奥様方との会話を思い返している。

「音楽が流れただけで、式の雰囲気がグ~~っと華やかになったもんねぇ。」

「ねぇ~~!」

 アルとエルも話題に乗っかてくる。


「まぁ、音楽がかかると違うよなぁ。」

 ナオキも答える。


「ところで、どんな音楽が人気なんだろうね。」

「う~~ん、何だろうね。」

「えへへ、楽しみ!」

 ナオキの質問に、アルとエルも楽しそうに答える。


 ◇ ◇ ◇


 一週間後…。

「ダ~リン、見て見て。」

「ナオキ、面白いように集まって来たよ。」

 アルとエルが楽しそうに紙の束を持ってくる。

 …というか、これ、街中の店回ったわりには、明らかに数が水増しされてるんですけど。

 ナオキは苦笑いを浮かべながら髪の束を一枚一枚確認し始め、アルとエルも一緒になって確認を始める。


「あらあら…。」

「忙しくなりそうですね。」

 食台に積まれた紙の束と格闘するナオキ達を、台所から幸せそうに眺める、メグママとレッシー。


 あ、メグママは授乳中ですか。

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