第21話 未知の世界

「あれ?…おかしいわね。」

 主神ボスと通話が出来なくなっているレッシー。


「ん?

 …先輩も捕まらない?

 なんで??」

 食台によりかかりながら、いよいよ当惑の色を深めるレッシー。


 ようやくナオキの欲しいモノも解り、これで天界地元に帰れると思ったところで、対応するスキルが存在しない!

 いろいろ検討したものの、さっぱり解らない。


 というわけで、上司にお伺いしようとしたところ、連絡がつかない…。

「もぉ~~、どうなってるのぉ??」

 食台に突っ伏し、途方に暮れてしまうレッシー。


(まぁ、考えてもしょうがないか…。)

 スマホをしまい、ゆっくりと食台を立つレッシー。

 と、丁度そこに思案顔のメグが食堂に入ってきた。


「どうしたのメグ?」

「あら、レッシー!

 …実はね…。」

 そろそろお腹がふっくらしてきたメグを気遣い、食台の椅子に座らせるレッシー。

 メグは腰かけると、レッシーに席を勧める。


 メグの話によると、スマホから音楽を取り出し、保存、再生させる所までは実現できたが、ラジオと電話が皆目見当がつかない。

 電話は手紙の代用品と聞かされているが、そもそも手紙が相手に届く事のほとんどないこの世界では、手紙のありようがわからない。


「結局、直接会うか、会うことが期待できる方に託す書簡しか、人の繫がりを保てないのよね…。」

「郵便というシステムがありませんものね、この世界には…。」

「ユウビン?

 システム?」

 未知の事物に戸惑うメグ…

 レッシーは、郵便や電話、ラジオについてゆっくり説明する。


「手紙が確実に届くって凄いですね…。

 王族の手紙さえ届くかどうか怪しいこの世界では信じられない!」

「郵便ギルドみたいなものが出来れば良いんでしょうけど…。

 まだ、この世界で実現するには、手紙の価値が浸透しないと難しいですね。」

 手紙の使い辛さに残念な気持ちになる二人。


「ラジオは一か所の出来事を広く世界に伝える道具です。」

「どういう事?」

「そうね…

 例えば、音楽をみんなに聞かせる…とか。」

「…素敵。」

 音楽をみんなに聞かせるくだりで、いたく感嘆するメグ。


「ということは…あぁ、あの人の夢が叶うのかしら。」

「そうよ、メグ。

 貴女のご主人がこちらに来る前にしていた仕事でもあるの。」

 そして、おもむろにスマホを取り出すレッシー。


「どう?

 今の感動を彼と共有したいと思わない?」

「で、でも…

 あの人は外出してて…。」

「だから、電話で伝えるのよ!」

 レッシーはナオキの呼び出しを始める。

「…」


 程なくして、ナオキと繋がる。

「もしもし??」

「あ、あなた?

 メグです。」

「えぇ!

 メグ??

 本当にメグなのか?」

「そうよ、あなたのメグよ!」


 最初こそ怪訝けげんそうな声が嘘のように、涙声にかわるナオキ。

「ちょっと、ナオキ。

 私も居るんだけど。」

「え!女神?

 いきなり”着信”とか来てびっくりして…。」

 レッシーが若干ご機嫌斜め。


「なに?

 おかあさんの声が聞こえるけど?」

 電話の向こうでアルの声が聞こえる。

「あぁ、アル…エルもちょっとこっちへ…。」

「なに?

 どうしたのダーリン?」


 どうやら、アルとエルがスマホに近づいて来たようだ。

「メグ…おかあさんから電話が…。」

 スマホの向こうでむせぶナオキ。

「あ、あなた!

 どうしたの??」

「え?

 おかあさん!」

「そうよ、お母さんよアル。」

「わ~~い!

 おかあさんの声が聞こえる…。

 って、ダーリン、何泣いてるの?」


 メグとレッシーがはじめこそびっくりするが、ふっと笑顔を交わす。

「…あんまり遅くならないように帰ってくるのよ。」

「は~~い!

 って、ナオキ、泣きすぎ…。

 もぉ、本当に…」

 メグの返事に答え終わるアルの声を最後に電話は途切れる。


「電話ってすごい!!!」

「まぁ、一足飛びに便利道具を知ってしまうとね…。」


 目がウルウルのメグとしくじり感に若干、さいなまれるレッシーだった。


「あ、肝心なこと言い忘れた。」

 メグのつぶやきに、メグとレッシーは笑い合う。

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