第14話 石板(スマホ)
ナオキはファフママ一家と同居する事になった。
それも、
婚約のくだりから家の手配までは早かった。
領主夫妻が熱心に音頭を取って、あれよあれよという間に、現在に至っている。
「もう、結婚するんですし、名前も変えましょう!」
「は…。」
「…。」
領主婦人の一言で、呆気にとられるナオキとファフママ…。
でも、ファフママ少しうれしそう。
「では、結婚の前祝いとして、ファフュートブルーマ。
貴女の名前を書き換える。残りの人生が幸多からん事を祈る。」
領主が改名のお
その文字が赤く光って消え、碧いレーザーのような光で、空間に文字が刻まれていく。
「ルーメグレックス。
これが、貴女の新しい名前だ。」
「ありがとうございます。」
ファフママ、改め、ルーメグレックスは領主に
「ナオキよ、妻を大切にするがよいぞ。」
「はい!」
ナオキも
後ろに控える姉妹も満面の笑みで二人を見ていた。
◇ ◇ ◇
謁見も無事終わり、屋敷を後にする四つの影。
「良かったね、おかあさん。
これで、自由に外へも出られるね。」
「やったぁ~!
メグママと美味しいものを食べにいけるぅ!!」
ルーメグレックスこと、メグママは以前の名前に呪いがかけられており、どのような災いが降りかかるか解らなかった為に、彼女は昔の住まいに移ってからは一度も外出したことがない。
唯一の外出こそが、今回の旅行であり、運良く災いが降りかからなかったのである。
「ナオキ、ごめんなさいね。」
「え、何がですか?
僕は何も迷惑を
メグママが申し訳なさそうにナオキを見る。
まだまだ若い男の子を自分たちのわがままで、婿に迎えてしまった事。
娘たちはともかく、キズモノの自分とも結婚させてしまった事実が申し訳なくてしょうがないらしい。
「とりあえず、帰るぞ。」
「はい!
旦那さま。」
「ダ~リン、りょ~か~い!」
アルとエルがナオキの腕に抱きつく。
メグママは後ろから抱きついてくる。
「あ、あのぉ、メグママ、歩き辛い…。」
「酷いわ!
私が年増だからって…。
しかも、ママって。」
「いやぁ、背中に当たってるんです。
豊かなものが…。」
メグママの胸の感触に赤面しているナオキ。
「あら。
…でも、夫婦の営みもしていいんだから…。」
更に胸を押し付けて、おどけるメグママ。
「ナオキ!!」
「ダ~リンのえっちぃ!」
二人の姉妹も腕にしがみつく。
「あのぉ…、君達、そろそろいいかな?」
門兵に注意を受けて我に返る四人。
それぞれナオキから離れて一列に並ぶ。
「…よし、行っていいぞ。」
ナオキを先頭に、一家は帰宅する。
◇ ◇ ◇
その晩、ナオキとメグママは一つのベッドに入っていた。
別段夫婦の営みをするわけでもなく、ただ仲良く寝るだけの日々だったのだが…。
「ふん♪ふ~ん♪ふん♪ふふ~ん♪」
ナオキが変なくぐもった声を出している。
耳に糸のようなものを着けており、糸の先には光る石板につながっていた。
「ナオキ。」
「ん?
なにメグママ?」
振り返るナオキの目がキラキラと輝いている。
「それはナニ?」
「あ、これね。」
ナオキは耳の糸を外しメグママの耳にあてがう。
「!!!」
耳から聞こえてくる異世界の音。
虫や鳥の鳴き声とも違う、木陰を吹き抜ける風の音とも違う、不思議な響きの音。
「こ、これは何かしら??」
音が鳴りやんだところで、メグママが真剣に聞く。
「ドビュッシーの月の光というピアノ曲です。」
「???」
意味の分からない言葉の羅列にメグママも混乱している。
ナオキは月の光を改めて演奏すべくスマホを操作する。
今度は、自分も曲を聞くためにイヤホンを片方ずつ耳に着ける。
再びピアノ曲が流れ出す。
「今、聞こえている音が、ピアノという楽器を使って音を奏でています。」
「…。」
メグママは黙り込んでいる。
ふと窓を見ると月がかかっている事に気づいたナオキは、そっとメグママを抱きかかえ一緒に月を見る。
ピアノ曲が中盤にかかったところで、メグママがポツリとつぶやく。
「月が…きれい。」
そっと、ナオキの胸にメグママがよりかかる、
ピアノ曲が終わるころ、メグママは幸せそうに寝息を立てていた。
あ…、ナオキ君硬直してる。
ダメだぁ、童貞お子様に淑女の色香は刺激が強すぎる!
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